野生動物を鎖でつなぎ、猟犬にかませる訓練サービスがロシアで横行 「虐待だ」動物愛護団体が反発

野生動物が鎖でつながれるなどして一方的に猟犬に噛まれる施設がロシアで横行し、問題になっている。狩猟前の訓練が目的だが、動物が死ぬケースもある。
Vita

野生動物たちを鎖でつなぐなどして、一方的に猟犬にかませる施設がロシアで横行し、問題になっている。

狩猟を控えた犬の訓練が目的だが、動物は大怪我をしたり、死んだりすることがある。動物愛護団体は「虐待だ」と規制を訴えている。

■死亡するまで何度もかませる「コース」も

問題となっているのは、「猟犬訓練センター」と呼ばれる施設。狩猟を経験したことがないダックスフントやジャーマン・ハンティング・テリアなどに対し、野生動物をあてがって擬似的に格闘させ、慣れさせるのが目的だ。

動物愛護団体「ビータ」(モスクワ)によると、少なくともロシア国内で200あり、たいていは町の中心部から離れている。経営者は主に猟犬のブリーダーという。

犬の訓練相手に使われるのは、捕獲した野生のウサギやキツネ、アライグマ、テン、アナグマ、オオカミ、クマなど。高齢のためサーカス団を「引退」して引き取られたり、ペットとして飼われていたがその後捨てられたりした動物もいるという。

過去には「レッドリスト」に記載されている希少種が紛れていることも確認された。

動物たちは、犬を傷つけないよう棒をかませられ、鎖につながれたり、センター職員に抑え込まれたりした状態で、ほぼ一方的に犬にかみつかれる。そのため、大怪我をしたり、亡くなったりすることも少なくない。

利用料の相場は1回500ルーブル(約960円)で、センターによっては、野生動物が死亡するまで継続するコースを設けているところもあるという。

動物の飼育状況も劣悪なケースが多いという。不衛生で小さな檻の中に閉じ込められ、怪我をしても治療されなかったり、抵抗力を弱めるためにえさを与えられなかったりすることがある。

こうした野生動物の扱いに対し、動物愛護団体側は反発。ビータのイリーナ・ノボジロワ代表はハフポスト日本版の取材に対し、「動物の虐待を禁じた刑法をはじめ、少なくとも8つの法律に違反している」と怒りをぶちまける。

だが、狩猟団体側はこうした見方を否定している。モスクワのローカルテレビ局「チャンネル360」に対し、モスクワの女性狩猟グループの代表、エレーナ・ゴルブノワさんは「訓練センターでは、動物たちは獣医学的にもいい環境で飼育されており、猟犬にとっては必要な存在だ」と答えた。

ゴルブノワさんはまた、「猟犬が森の中で準備もないまま野生動物に遭遇したらより深刻な結果を招く」とも話し、センター側を擁護する。

■規制法案の審議、7年たっても進まず

ビータは訓練センターを禁ずる法律をつくるよう国会に求めているが、実現の道のりは険しい。

ロシアではそもそも、動物愛護を目的とした法律が整備されていない。法案は2010年に国会に提出され、ビータも訓練センター禁止に関する規定を盛り込むよう議員らに働きかけたが、内容をめぐっていまだに議員間で合意ができず、審議が進んでないのが実態だ。

「規則がないのは衛生上の問題でもあるし、ひどいケースだと野生動物に残酷な事態を引き起こしかねない」。動物好きのプーチン大統領はしびれを切らし、国会の対応を批判した。

ノボジロワ氏によると、法案は何度も修正され、最新の案ではセンター禁止が盛り込まれているという。だが、禁止反対派による激しいロビー活動が予想されるといい、「さらなる修正によって禁止規定がゼロになってしまうかもしれない」とノボジロワ氏は気を揉む。

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