加計学園問題とは? これまでの経緯、浮上した疑惑を振り返る

安倍晋三首相がからむ「加計学園問題」は多くの疑問点を残したまま、6月18日の国会閉幕を迎えた。「総理のご意向」文書報道から始まったこの問題について整理した。
時事通信社

安倍晋三首相がからむ「加計学園問題」は多くの疑問点を残したまま、6月18日の国会閉幕を迎えた。「総理のご意向」文書報道から始まったこの問題について整理した。

【概要(忙しい人はこれだけ)】

岡山市の学校法人「加計学園」が獣医学部を愛媛県今治市に新設することを国が認めた。この手続きをめぐって、加計学園理事長の友人である安倍首相、あるいは首相側近による不適切な関与があったのではとする疑惑が浮上した。

【残された主な疑惑】

1 獣医学部設置をめぐる手続きで、安倍首相の便宜はあったのか

2 「総理のご意向」などとする文書の内容は正しいのか

3 和泉洋人首相補佐官、木曽功内閣官房参与は設置手続きをめぐって前川氏に「圧力」をかけたのか

4 獣医学部新設の応募資格が加計学園に有利になるよう、萩生田光一・官房副長官が条件修正に関与したのか

【経緯(詳しく知りたい人はこちらも)】

加計学園は、国の国家戦略特区に獣医学部の新設を申請し、2016年11月に認められた。開設は2018年4月の予定だ。

申請については、国家戦略特区を担当する内閣府と、実際に学部の新設を認可する文部科学省が協議した。

朝日新聞は5月17日、審査のスケジュールをめぐって難色を示した文科省に対し、内閣府が「官邸の最高レベルが言っている」「総理ご意向」などと開設を急がせたことをうかがわせる文書があったと報道。これらの文書は、文科省側が作成し、一部の同省幹部らが共有しているとも報じた。

報道を受け、菅義偉官房長官は「怪文書みたいな文書」と内容を否定した。文科省は文書の有無を調べたが、「文書は確認できなかった」と松野博一文部科学相が発表。これに対し、調査が限定的だとの批判が起きた。

■「あるものがないことにされてはならない」当時の文科省次官が証言

審査当時、文科省事務次官を務めていた前川喜平氏(文科省の天下り問題の責任を取り、2017年1月に辞任)が複数の報道機関の取材に対し、「あるものがないことにされてはならない」などと文書の存在を認めた。

記者会見する前川喜平氏=5月25日、東京都千代田区

前川氏は「現在の文科省が官邸、内閣官房、内閣府といった中枢からの意向、要請について逆らえない状況がある」などと明かしたほか、「極めて薄弱な根拠の下で規制緩和が行われた」と証言。認可をめぐる手続きは不適切だったとの考えを示した。

前川氏の証言後も、政権側は文書の存在や内容を否定し続けた。菅官房長官は、前川氏が「出会い系バー」に通っていたとする読売新聞の報道にからみ、「教育行政の最高責任者がそうした店に出入りし、小遣いを渡すようなことは到底考えられない」と批判した。

■次々と浮上する官邸側の疑惑人物

だが、その後も前川氏の証言は続いた。複数の報道機関に対し、首相補佐官の和泉洋人氏から2016年秋、「総理は自分の口からは言えないから、私が代って言う」と言われたことを明かし、獣医学部新設を早く認めるよう求められたと証言した。

安倍首相は5月29日、参院本会議で「圧力が働いたことは一切ない」などと自らの便宜を否定した。

一方で安倍首相は、翌30日の参院法務委員会で加計学園との関係を問われ、「(1993年に衆院議員に)当選した当初、数年間、監査のようなものを務め、1年間に14万円の報酬を受けたことがある」と明かした。

参院予算委員会の集中審議で、学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画について、厳しい表情で質問を聞く安倍晋三首相=6月16日、国会内

加計学園理事と内閣官房参与を同時に務めていた木曽功氏が2016年8月、当時文科省事務次官だった前川喜平氏を訪ねて獣医学部新設について話題にしていたことも発覚した。

「総理のご意向」などと書かれた文書について、政府は「出所不明」を理由に再調査を拒否し続けたが、文書の存在を認める現役文科省職員の証言が相次いで各報道機関に報じられる。

■再調査で文書確認

文科省は一転、文書の再調査を決定。6月15日、「総理のご意向」などと記された一連の文書14通の存在が確認されたと発表した。

「総理のご意向」「官邸の最高レベル」といった発言について、松野文科相は「内閣府の職員からその種の発言があったと我が省の職員が考えている」と認めた。

一方で、松野氏は獣医学部新設の手続きをめぐり、何らかの圧力があったことは否定した。

存在が確認された14通には、加計学園が運営する千葉科学大の名誉教授も務める萩生田光一・官房副長官の関与を示す文書もあった。

国家戦略特区諮問会議で公表する文書をめぐり、萩生田氏が獣医学部新設の条件を修正させたことをうかがわせる内容だった。

2016年秋の時点では、加計学園のほか、京都産業大も獣医学部新設を目指していたが、条件の修正によって京都産業大は応募資格から外れた。萩生田氏は文書の内容を否定した。

参院内閣委員会で質問を聞く、萩生田光一官房副長官(右)と山本幸三地方創生担当相=6月16日、国会内

内閣府も一連の問題について調査し、16日に発表。特区を担当する山本幸三・地方創生相は「(内閣府が文科省に対し)『総理のご意向』『官邸の最高レベルが言っている』などと発言した認識はない」と述べた。

文科省と内閣府の言い分は食い違ったまま、国会は6月18日、閉幕した。

安倍首相は19日夕、記者会見を開く予定で、加計学園をめぐる問題について触れる可能性がある。

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