安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」が国家戦略特区制度を活用して獣医学部の新設を進める際に、内閣府が「総理のご意向」として、文科省に対し早期開学を促していたとされる問題が持ち上がっている。
山本幸三・内閣府特命担当大臣(地方創生担当)は、6月16日朝の記者会見で、関連する文書は「8種類あった」と明らかにした。文科省側が、15日午後に文書があったと発表したことを受け、一晩かけて調査をした結果だという。文科省が確認した文書のうちの4種類と、新たに確認された4種類だという。
一方で、山本・地方創生担当相は「内閣府から文部科学省に個別の項目や個別のプロジェクトについて、『官邸の最高レベルが言っている』とか『総理のご意向』などと伝えた認識はなく、また総理からもそうした指示などは一切なかった」とも発言。
安倍首相が「総理が常々、特区諮問会議などで規制改革全般について、スピード感を持って実現すべきだという旨を発言しており、これを受けて事務方が関係省庁との議論を行う際、こうした発言に言及することはあった」として、内閣府側は手続きは一般的な指示と受け止めていたとの見方を示した。
この問題について、内閣府と文科省側では、受け止めに温度差があることが明らかになった。8つの文書の存在など詳細については、午後の記者会見で公表するとしている。
■これまでの経緯
一連の文書をめぐって、文科省は5月に職員などへの聞き取りをしたが、「文書は確認できなかった」とする調査結果を公表していた。
一方で、前川喜平・前文科事務次官が記者会見し、「文書は確実に存在する」と強調。野党側は改めて調査をするよう求めていた。
これに対し、菅義偉官房長官は「出所や入手経路が明らかにされない文書の調査は必要ない」と繰り返し、これまで再調査はしない意向を示していた。
6月6日には、内閣府の担当者が文科省側に「官邸の最高レベルが言っている」などと発言したとされる2016年9月26日の打ち合わせについて「確認できない」とする答弁書が閣議決定された。
ところが、文科省の現役職員からも文書が「省内で共有されていた」といった証言もあったことなどから、政府に対して追加調査を求める声が強まっていた。
こうした経緯から、政府・文科省は「追加調査はしない」という方針を転換、民進党などが入手・公表した19の文書のうち、職員への聞き取りなどで14文書を確認したとする再調査の結果を15日に公表した。複数の文書が確認されたことについて松野博一文部科学相は「大変申し訳ない」と陳謝していた。
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