石破茂氏、"表現の自由"めぐり政府とメディアに苦言 「報道と権力が一体となるのが一番恐ろしい」

自民党の石破茂・前地方創生相が6月14日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見した。
Kei Yoshikawa/HuffPost Japan

自民党の石破茂・前地方創生相が6月14日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見した。これまでに石破氏は、自民党の憲法改正案を年内に取りまとめる意向を表明した安倍晋三首相の姿勢を批判。加計学園の獣医学部新設めぐる問題でも、前川喜平・前文科事務次官の発言を「意義がある」など、政権を戒める趣旨の発言をしていることから、会見での発言に注目が集まった。

石破氏は会見の中で、憲法9条に新たな条文を設け自衛隊の存在を明記することで「自衛隊の合憲化」を目指すとする安倍首相の改憲方針について、「自衛隊の存在を憲法に書けばそれで良いというものだと私は思っておりません」とけん制した。

また、安倍首相の改憲姿勢については「総裁(安倍首相)は読売新聞を熟読せよとおっしゃったので、熟読してみたが、よく分からない」と発言する場面もあった。

会見では、報道陣から「自民党の憲法改正案21条では『表現の自由』を制限する条文があるが、どう思うか」「国連人権理事会の特別報告者が6月12日、日本のメディアの独立性に懸念を示した勧告についてどう思うか」など、「表現の自由」に対する認識を問う質問があがった。

これに対して石破氏は、「国連特別報告者のレポートを正確に読んでおりません」とした上で、「表現の自由は最大限認められるべきものだ」と明言し、以下のように語った。

(国連特別報告者に)事実誤認があると(政府が主張)するならば、どこがどう事実誤認なのか、国際社会に向かって説明する責務があろうかと思う。日本国の言論の自由、表現の自由に対して疑問が提起されているわけだから、それに対して世界を納得させる責務が政府にはある。

「表現の自由」は最大限認められるべきものだと思います。新聞でも週刊誌でもテレビでも、私のことについて論評されて非常に悲しい思いをすることはしばしばでありますが、それは甘受すべきものであり、それが嫌なら政治家なんかやらないほうが良いということでしょう。

また石破氏は、太平洋戦争期にメディアが政府方針に沿った報道をし続けたことに言及し、「報道と権力が一体となることが一番恐ろしいということは、報道の皆様はよくご認識のことだと思う」「表現の自由を守っていくことが健全な民主主義のために必要。報道が本当に権力と一体のものとなっていないか、常に自浄自戒を」と述べた。

他の主な質疑応答は以下の通り。

――次回の自民党総裁選に出馬するか。

自分がそれにふさわしいと、自分で納得をしなければ、出てはいけないものだと思っています。自民党はいろいろな考え方を持つ人たちがいる政党、考え方が一つだけというのは自民党ではありません。

経済政策において、社会保障政策において、あるいは安全保障政策について、違う考え方を持っているとするならば、私であれ誰であれ出るべきものだと思います。それが自民党のためというより日本国のためだと思います。

――「東京オリンピックが開かれる2020年に憲法改正したい」というタイムリミットについてどう考えるか。

以前から、憲法改正は早ければ早い方が良いと申し上げてきた。それは私が1957年の生まれで、安倍さんは54年生まれ。どちらも戦争を全く知りません。

戦争に行って、本当に厳しい体験をされた方、あるいは東京大空襲や、広島・長崎における原爆や、日本各地で戦争で非常に辛い思いをされた方々がこの世におられる間に改正したい。戦争を全く知らない世代だけで憲法改正をして良いとは思わない。

オリンピックは確かにビッグイベントですが、なにも「そのときまでに…」という論理的整合性はありません、64年の東京オリンピックもあった。長野オリンピックも札幌オリンピックもあった。オリンピックがあるかというのは、論理的な話だとは思わない。

「早く改正すべき」というのは、「議論が疎略であって良い」ということを意味しない。憲法改正をしようとする我々が、確固たる考えを持ち、街頭に出てそれを訴え、小さな集会でも訴えるということ。きちんとした知識を習得すること、それを可能にする行動を起こすこと。それが憲法改正の早道。「いついつまでが期限だから、その時までにやれ」というだけが憲法改正の手段だとは思わない。

――憲法9条に第3項(新たな条文)を追加することについて、どう思うか。

(安倍)総裁は読売新聞を熟読せよとおっしゃったので、熟読してみたが、よく分からない。「第3項をこのように加えるぞ」ということは、総裁はなにもおっしゃっていないので、熟読してもわかるとは思えない。

想像力の限りを働かせて考えると、9条3項に「前項の規定に関わらず、日本国は日本国の独立の並びに国際社会の平和と安全に寄与するため、陸海空自衛隊を保持するものとする」というのがやり方かなと思ったりする。

これは不可能ではない。しかし、「前項の規定に関わらず」をあちこちに採用し始めると、憲法って一体に何なんだということになる。それはあまり正しいやり方だとは思わない。

――自衛隊の存在を認め、改憲を支持する声がある。しかし、安倍さんに任せて良いのかという声もあるが。

誰がやろうと、正しいことは正しいのです。誰がやろうと、間違っていることは間違っているのです。

仮に、国民の一部に、今ご指摘のことがあるとすれば、今の安倍政権は私たちが作ったもの。そうであれば、安倍政権というものが多くの理解を得られるように努力をするのが、作った我々の責任だ。

仮に総裁のお考えや総裁の立ち居振る舞いが国民の共感を得てない部分があるとするならば、「ここは改めたほうがいいですよ」と言う勇気を我々は持たなければならない。

私は今まで時の総理・総裁3人に向かって「やめてください」といいましたが、まだ生きています。誰も命まで取るとは言わんでしょう。それが議員のインディペンデントな姿勢というものだと思います。


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