日本政府によるメディアへの圧力を懸念する――国連人権理事会の「表現の自由」に関する特別報告者、デービッド・ケイ氏が6月12日、同理事会で演説し、日本政府に対し、報道の独立性を確保するために、法律を改正すべきだなどと要請した。NHKニュースなどが報じた。
ケイ氏はこの日、日本で行った表現の自由についての調査結果を報告。「日本では政府当局者がメディアに対して直接・間接的な圧力をかけることができる」などと指摘した。総務省が放送メディアの規制権限を持つ現状を問題視した格好だ。
なぜ放送法が問題になるのか。ケイ氏が2016年の調査後の記者会見で述べた、放送法に関するコメントを振り返ってみよう。
放送の置かれた立場から言うと、権力者からの独立性が法律的にあいまいです。特に放送法4条に「政治的に公平であること」と書かれています。これは法律上の義務と解釈できます。
174条を見ると、4条違反があれば、業務停止を命じることができます。停波の可能性も含め、大きな懸念です。放送法そのものが政府の規制を許容しているからです。
ジャーナリストからも「過去にこの条項が実施されなかったとしても、罰が下された事実がなかったとしてもやはり脅威だ。強くメディアの報道の自由を行使することができなくなる」との意見でした。
放送法は改正し、4条を削除する必要があります。政治的公平性を判断することは非常に大きな議論が必要ですが、政府がコントロールすることであってはなりません。独立性のある第3者機関が管理すべきです。政府が直接、規制を放送に及ぼしてはなりません。
(国連「表現の自由」特別報告者「懸念は深まった」記者クラブ廃止など提言【発言詳報】より 2016/04/20)
なお、今回のケイ氏の指摘に対し、伊原純一駐ジュネーブ国際機関政府代表部大使は「わが国の説明や立場に正確な理解のないまま記述されている点があることは遺憾だ」と反論。「政府が報道機関に対して違法・不当に圧力をかけた事実はない。放送法により放送の停止などを命令したことは一度もなく、圧力に使ったこともない」と述べた。
ケイ氏は2016年の報告で、「構造的に政府機関との癒着を招く記者クラブは廃止すべき」「ジャーナリスト保護の観点から、特定秘密保護法は法改正すべき」などの点も指摘していたが、今回の演説でも、改めてこれらを訴えた。