2016年のノーベル文学賞を受賞したミュージシャンのボブ・ディランさんの受賞記念講演を、6月5日、ノーベル財団が公開した。
ディランさんは2016年10月の受賞発表後、一時期連絡が取れなくなるなどして大きな話題を呼んだ。12月の受賞式も「先約のため」欠席していたため、「業績にまつわる講演」を発表するかどうかの動向が注目されていた。
受賞の賞金800万クローナ(約1億円)を受け取るためには、受賞式の6カ月後の6月10日までに講演しなければならないというルールがあるのだという。
講演は27分程度で音声のみ、映像はない。4日にロサンゼルスで収録されたという。
ディランさんの講演は、「ノーベル文学賞を受賞した時、最初はなぜ、私の歌が文学に関係あるのか戸惑ったが、それについてじっくりと考え、文学と私の歌がどう繋がっているのか理解したいと思った。そして今からその答えについてお話をしようと思う」と始まる。
音楽との出会い、作曲を始めるに至る経緯などを語っている。古代ギリシャのホメロスの叙事詩「オデュッセイア」、メルビルの「白鯨」、レマルクの「西部戦線異状なし」などの世界的に有名な文学作品に触れ、文学も音楽も「意味そのものよりも人を感動させることがすべて」だ、と語った。
最後に、歌と文学のつながりについて、という講演のテーマについて、以下のように締めくくった。
(文学も)歌も、常にうつろうこの世界で生きている。でも、歌と文学は違う。歌は読まれるのではなく、歌われることを意図してつくられている。シェイクスピアの言葉はステージで演じられることを意図されている。それはちょうど歌が、ページの上で読まれることではなく歌われることを想定しているのと同じように。
歌を意図されたままに聴いてみてほしい。コンサートでもレコードでも、人々が歌を聴く時に最近使う方法でも、どんな手段でもいいから。私は今一度、ホメロスに戻っていく。「ミューズ(芸術の女神)よ、私の中に入って、物語を語ってくれ」と言ったホメロスに。
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