"ひとり自転車部"高3生が全国初優勝、片道10キロ通学きっかけ 「気持ちの面ではきつい。でも...」

韮崎高校(山梨県韮崎市若宮3丁目)の3年生、山本哲央選手(17)は同校のたった1人の自転車部員だ。
朝日新聞社

ひとり自転車部、全国V 片道10キロの通学きっかけ

 韮崎高校(山梨県韮崎市若宮3丁目)の3年生、山本哲央選手(17)は同校のたった1人の自転車部員だ。平日は昇仙峡近くの登りのきつい道路を1人で駆け上がってトレーニング。そんな環境で今春、第40回全国高校選抜自転車競技大会のロードレース(77・7キロ)で初優勝を成し遂げた。

 自転車を始めたきっかけは高校入学。甲斐市竜地の自宅から韮崎高校までは片道10キロちょっと。9万円のロード用の自転車を親に買ってもらい、通学を始めた。自転車で山道を走るうちに楽しくなり、週末に笛吹市の境川自転車競技場で行われている高校生の合同練習に参加。そこから本格的に取り組むようになった。

 「通学定期を計算したら13万円だったので、自転車の方が安かった。韮崎高校に入っていなかったら、たぶん自転車はやっていなかったと思う」と話す。

 日々の自転車通学が練習になる。雨の日でもカッパを着てペダルをこぐ。平日は放課後、昇仙峡周辺を走る。ほぼ毎日、標高約870メートルの金桜神社まで坂道を登っていく。茅ケ岳の北東にある観音峠(標高約1390メートル)まで走ることもある。自宅と観音峠の標高差は約1千メートルで、そうしたアップダウンのある道路を一日約60キロ走る。こうして脚力が鍛えられた。

 「1人での練習は、気持ちの面ではきつい。でも練習で走る所はいっぱいある。信号もないし、練習環境という面では全国でもトップだと思う」。練習のコースやメニューは1人で考えている。

 境川自転車競技場での週末の合同練習では、甲府工業高の早川誠司監督らの指導を受ける。早川監督の評価は「彗星(すいせい)のごとく出てきた選手。昇仙峡のきつい山道で鍛えているため、とにかく登りが強い」。

 3月下旬に熊本県で行われた全国高校選抜大会のロードレースには179人が参加。甲府工業高の依田翔大選手と2人で最後に抜け出し、県勢のワンツーフィニッシュを成し遂げた。山本選手は「入賞が目標だったので、本当にうれしかった」と話す。

 6月12日には静岡県で関東高校総体のロードレースがあり、7月の全国高校総体へと続く。山本さんは「選抜大会の優勝者として、全国高校総体でも優勝したい」。卒業後は大学へ進学し、さらにロードレースの道を極めるつもりだ。(田中基之)

(朝日新聞デジタル 2017年05月28日 12時03分)

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