ファッションの中心地フランスで、極端に痩せているモデルたちの活動を禁止する法律が5月6日、施行された。BBCニュースなどが報じた。
この法律によって、モデルたちは肥満度を示す体格指数(BMI)が低すぎず、健康体であることを証明する医師の診断書を提出するよう義務付けられる。この法律に違反したモデルを起用する事務所の雇用主などは、最大7万5000ユーロ(約930万円)の罰金および最大6カ月の禁固刑を科せられる。
フランス国民議会が2015年4月に可決した法案は、BMIが18を下回るモデルの活動を禁止するという内容だった。しかし、ファッション業界幹部やモデル事務所から抗議があったことも鑑み、今回施行された法律ではモデルのBMIの下限を設定していない。
世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、BMIが18.5以上25.0未満を標準体重、18.5未満は低体重としている。さらに、17以上18.5未満を痩せ気味(Mild thinness)、16以上17未満を痩せ型(Moderate thinness)、16未満を痩せすぎ(Severe thinness)と定めている。今後、モデルたちはWHOが定めた標準体重の基準(BMIが18.5以上25未満)に基づき、自身のBMIが健全な範囲内に収まっていることを診断書によって証明する必要がある。
さらに10月には、モデルの身体を細くするなど何らかの修正を施した画像には、その旨を記した注意書きを必須とする法律も施行される。
■「痩せていることが美しい」という価値観なくなるか?
こうした法規制は、痩せすぎのリスクを負うモデルたちの健康状態を守ることや、拒食症などの摂食障害を防ぐことが狙いだ。インディペンデント紙によると、フランスでは約4万人が拒食症にかかっているとされ、そのうちの90%が女性だという。
痩せすぎたモデルの起用については、フランス国内ではたびたび議論が起こっていた。2017年3月には、ファッションブランド・サンローランがフランス・パリ市内に提示した広告ビジュアルに登場したモデルが「痩せすぎ」として物議を醸し、フランスの広告規制当局「ARPP」が同ブランドに注意喚起した。
マリソル・トゥーレーヌ厚生大臣は、「規範的で非現実的なボディ・イメージを見せつけられた若者たちは、自身を卑下し自己肯定感を失くしてしまい、健康被害を及ぼす行動を起こしてしまう可能性がある」と述べ、今回の法規制によって「手の届かないところにある”美の理想”」の奨励を防ぐことを目指したいとの展望を示した。