2012年12月16日にインドの走行中のバス内で発生した集団強姦事件から3年後の15年12月29日、事件で死亡した被害者ニルバヤーさんの3周年追悼集会がニューデリーのラジ・ガットで開かれ、ニルバヤーさんの母親も姿を見せた。
2012年12月16日、インドの首都ニューデリーのバスの車内で23歳の女子大学生が男性6人にレイプされ死亡した事件で、インドの最高裁判所は5月5日、殺人や集団レイプなどの罪に問われた被告4人の上告を退け、死刑が確定した。
この事件では、ニューデリーで理学療法を学んでいた女子学生が、映画を見た帰りのバスの車内で、運転手を含む6人の男にレイプされ、鉄棒を性器に挿入されるなどの激しい暴行を受けた後、友人の男性とともにバスから突き落とされた。女性は内臓に重傷を負い、およそ2週間後に死亡した。
実行犯のうち1人は事件当時未成年だったため少年院に収容されその後出所。主犯とみられるもう1人の男は拘置所内で死亡した。
女子学生の名前はインドで公表を認められていないが、インドでは敬意を込めて「ニルバヤー」(恐れない)さんと呼ばれている。
最高裁は400ページを超す判決文で、集団レイプ事件の内容や事件の余波、取調べ内容、法医学的証拠について詳細に説明し、4人に下された死刑判決の破棄を求める被告弁護人らの主張を退けた。
弁護人らは、被害者が鉄棒で暴行を受けて重傷を負い、結果として死に至ったとみられるとの主張に異議を唱えていた。弁護側は、鉄棒についての検察側の主張は、被害者が死に至ったストーリーに被告人らを当てはめるための捏造であると主張した。弁護側はその主張について、被害者が、当初の供述では鉄棒に言及しなかったにもかかわらず、次からの供述では言及したという事実を根拠にした。
裁判所は弁護側の主張を棄却し、被害者女性が病院に搬送された時は重傷を受け大量に失血し、体が冷たくなっていたと述べた。また裁判所は、このような恐ろしい体験をした若い女性が、全てを筋立てて話すことができなくても不思議ではないとも指摘した。
また弁護側は、鉄の棒から被告人の指紋が検出されなかったことも争点とした。裁判所は棒から採取された血痕が被害者女性のDNAと一致したことを根拠とし、また死亡したラム・シン被告の指紋が棒から検出されなかったことは、説得力のある証拠とはならないと話した。
また弁護側は、目撃者の証言についても争点にした。今回の事件では被害者女性の友人である目撃者が、被害者女性が棒で暴力を受けたことを確認できなかった。この件に関して裁判所は次のように述べている「目撃者PW-1が、鉄の棒が使用されたことをどのように知っていたのかを把握するのは困難である。PW-1は被告人によってバスの前方で取り押さえられており、一方被害者女性はバスの後部で強姦され、その時バスのライトは消されていた。目撃者が被害者女性の悲鳴と泣き声を聞き、また被害者女性の声が震えていたという供述は、証言や医療記録との整合性が取れている」
弁護側はまた、検視結果の報告として、犠牲者の子宮があるべき位置にあることが判明し、無傷であったのだから、鉄棒の挿入は起こりえないと主張した。裁判所は、彼女の手術をした医師が彼女の子宮が傷つけられていると判断しなかったのだから、そのことは鉄棒が挿入されなかったことを意味しているはずだという意見を却下した。裁判所は、「前述の意見陳述は、それぞれの反対尋問で当該の医師への質問がなかったため却下する」と述べた。
さらに判決文では、検察が鉄棒の使用を捏造したという弁護側の主張を退けるするため、極めて詳細な説明を加えられいる。被害者の子宮が無事だったという理由だけで、彼女がどのようにレイプされたかについて書かれた彼女が死亡する間際の供述は偽造されたという主張について、最高裁は、解剖学の専門書(Descriptive and Applied '、34th 165 Edn. [Orient Longman Publication]) から広く引用した。引用部分は、成人女性の体内にある子宮、膣、腸および他の器官の配置を記述している。
続いて、最高裁は手術を担当した医師たちの証言に言及した。医師の一人は「被害者の小腸と大腸は極めて激しい損傷を受けており、いかなる根治手術も施せない状だった」と証言した。判決文は次に、被害者の腸、結腸、膣、直腸の状態――これらすべてがずたずたに引き裂かれていた――について、医師が下した診断結果を列挙した。
その上で、激しく傷つけられた被害者の身体を治療するために行われた11回の外科手術の詳細が列挙された。
最高裁は、手術の性質や検死報告書、調書に基づき、被告側の主張にはいかなる重要性も認められないと結論づけた。裁判官らはそれだけに留まらず、そもそもこのような主張がなされたこと自体が愚かなことだと、被告側の主張を批判した。「検察側の陳述に瑕疵を生じさせるべく、思い込みと責任逃れのために仕立て上げられたこの申し立ては退けられるべきであり、この主張を棄却する」
実際、鉄棒による暴力が被告の死刑判決を支持する決定的な役割を果たしたと最高裁は指摘し、鉄棒という単語は判決の中で104回言及された。裁判官が判決の中で事件に言及するたび、裁判官はレイプへの言及にとどまらず、彼女が鉄棒で襲われて死ぬまで放置され、レイプ犯が被害者の友人も殺害しようとしたことについても触れている。
判決文の最後で、最高裁はレイプ犯に更生の機会を与えること、さらにはレイプ犯の生きる権利について考慮せず、死刑判決を支持した理由を述べている。最高裁はレイプ犯が「悪魔のように、人間の欲望をむき出しにした」ことを指摘し、「社会規範だけでなく、人類としての規範にも無知だった」と結論づけた。
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ハフポスト・インド版より翻訳・加筆しました。