フランス大統領選、偽文書が出回る マクロン陣営から大量のメールが流出

「不信感を植えつけ、偽情報を流している」
Emmanuel Macron, head of the political movement En Marche !, or Onwards !, and candidate for the 2017 presidential election, speaks with supporters during a campaign visit in Rodez, France, May 5, 2017. REUTERS/Regis Duvignau
Emmanuel Macron, head of the political movement En Marche !, or Onwards !, and candidate for the 2017 presidential election, speaks with supporters during a campaign visit in Rodez, France, May 5, 2017. REUTERS/Regis Duvignau
Regis Duvignau / Reuters

フランス大統領選の中道系候補エマニュエル・マクロン氏の陣営が5月5日、「大規模で組織的な」ハッキング攻撃の被害を受けたと発表した。フランスは5月7日の大統領選を目前に控えている。

政治運動「アン・マルシュ!」(EM=前へ!の意)を2016年に立ち上げたばかりのマクロン氏は、極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン氏と大統領の座をかけて対決する。

イギリスのPA通信によると、5日夜に出された声明の中で、EMは数週間前にサイバー攻撃を受け、流出した文書には「不信感を植えつけ、偽情報を流し」7日の大統領選を不安定化させるために偽文書が混在していると述べた。

マクロン陣営は、サイバー攻撃によって選挙関連の電子メールや会計文書が流出したと発表した。

報道を受け、内部告発サイト「ウィキリークス」は流出した文書には4月24日までの「数十万もの」電子メール、写真、添付ファイルが含まれているとツイートした。

しかし、選挙結果に影響を与えるには「遅すぎた」と、ウィキリークスは語っている。

候補者たちは5月6日の午前0時に選挙運動を終了した。投票前の1日を有権者に考える時間として与えるためだ。今回の選挙では、戦後に政権を独占してきた2大政党が、すでに有権者から見放された。

エマニュエル・マクロン陣営がハッキング攻撃を受けたと発表。PA WIRE/PA IMAGES

世論調査では、マクロン氏が優位に立っている。敗北した保守中道の統一候補でド・ゴール主義者(第五共和制の初代大統領ド・ゴールの政治思想で、フランスの威信を強調する愛国主義)のフランソワ・フィヨン氏と、社会党のブノワ・アモン氏も、マクロン氏がフランソワ・オランド大統領の後を引き継ぐことを支持し、一致団結してルペン氏の国民戦線に抵抗するよう呼びかけた。

4月の第1回投票では他の9人の候補者が敗退し、マクロン氏とルペン氏が決選投票へ勝ち進んだ。

社会党の候補者アモン氏の得票率はわずか6.4%だった。アモン氏はオランド大統領に引き続きエリゼ宮(大統領官邸)を中道左派の社会党の手中に収めるために立候補したが、結局5位に終わった。

中道右派・共和党のフィヨン氏は、「ド・ゴール主義」勢力の熱烈な支持を得ていたルペン氏の出馬によって3位に転落した。この勢力はフランスが第五共和国憲法を採択してから59年間のうち、33年にわたって権力を握り、全面的な権限を大統領に与えてきた。

フィヨン氏は、ウェールズ人の妻ペネロペ氏に対して、勤務実態がないのに不正に給与を支払っていたことを激しく糾弾され、支持率が低迷した。

スキャンダルが明るみになったとき、フィヨン氏は撤退を求める声を拒否した。そして共和党はフィヨン氏の強気の姿勢の代償として、第1回投票で敗退した。

マクロン氏とルペン氏はを5月3日に生放送されたテレビ討論会で対決し、激しい議論を繰り広げた。欧州連合(EU)をめぐり、ユーロから離脱して国内通貨フランを復活させ、EU離脱の是非を問う国民投票を実施すると主張するルペン氏に対し、マクロン氏は「フランを復活したら通貨が切り下げられ、物価が高騰する。強いEUこそがフランスの利益になる」と批判した。

一方でテロやイスラム過激派への対策についてルペン氏は、「マクロン氏はイスラム原理主義に甘い。私が大統領になったら国境の検問を復活させる」と主張した。マクロン氏は「ルペン氏は国民を分断し、憎悪を掻き立て、内戦を生み出そうとしている」と反論した。

最新の世論調査では、マクロン氏が60%対40%で勝利するとみられている。

両候補者は、選挙運動が停止する週末前の最後の日に大聖堂を訪問した。

親EU派のマクロン氏はロデズ大聖堂を訪れた。一方、愛国主義者のルペン氏はランス市を訪れたが、裏口から帰ったと野次を浴びた。

マクロン氏は、大統領の座をかけてマリーヌ・ルペン氏と対決する。BLOOMBERG VIA GETTY IMAGES

オランド大統領は2012年に当選し、17年間ド・ゴール主義の大統領が続いた後エリゼ宮(大統領官邸)を社会党の手に戻したが、支持率の低迷から2期目は立候補しないと決めた。任期中の5年間はテロ攻撃によって数百人が殺害され、非常事態宣言の発令を余儀なくされた。

2016年まで経済相を務めていたマクロン氏は社会党を離脱し、左でも右でもないと訴え、自身の運動「EM」を立ち上げた。

決選投票に保守的なドゴール主義勢力も社会党もいないのは、フランスが1958年に第五共和政を導入してから初めてのことだ。

フランス大統領選では伝統的に中道左派が勝ってバスティーユ広場で勝利集会を開くか、中道右派の勝者がコンコルド広場で勝利集会を開く。

マクロン陣営は、右でも左でもないことを示そうと、エッフェル塔裏の公園シャン・ド・マルスで勝利集会を開こうと使用許可を求めていたが、パリ市はオリンピックの開催地候補として芝生を保護する必要があるため、申請は却下された。

フランスの選挙委員会は6日朝に会議を開き、マクロン陣営へのハッキング攻撃とネット上の文書漏洩問題について協議した。

同委員会はフランス国内のメディアに対し、偽の文書が混在している「可能性が高い」と警告し、流出した文書を公表しないよう求めた。

ハフポストUK版より翻訳・加筆しました。

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