ベネズエラで連日続く反政府デモの勢いは収束の見通しが立っていない。数万人もの人々が街頭に繰り出し、ニコラス・マドゥロ大統領の退陣を要求している。
全国各地でデモ隊が集まっている。4月8日には、首都カラカスにおよそ4000人が参加した。カラカスのデモ隊は「自由を、自由を」と繰り返し唱え、「独裁者マドゥロ!」や「今すぐ選挙を!」と書かれた看板を掲げた。
デモ隊によると始まりは穏やかだったという8日のデモは、最終的には治安部隊との激しい衝突で幕を閉じた。武装した機動隊員は、デモ隊の行進を妨げようと催涙ガスや放水銃を発射した。これに対して、デモ参加者の一部は石や火炎瓶を投げたりゴミ袋に火をつけたりして応戦した。最高裁判所には、100人ほどのデモ参加者が押し寄せた。
野党の活動家によると、8日には数十人のデモ参加者が拘束されたという。
ベネズエラの首都カラカスでは8日、数千人もの人々がデモに参加した。CHRISTIAN VERON / REUTERS
デモのきっかけは、ベネズエラ最高裁が3月29日、野党が多数を占める議会の立法権を剥奪し、今後は最高裁が行使する決定を下したのがきっかけだった。
最高裁は、国会の会期末にマドゥロ大統領側と結託して決定を下したが、野党が政権を握るのを阻止する不当な行為として、活動家や国外のリーダー、さらにマドゥロ大統領の支持者からも激しい非難が起こった。
ベネズエラの司法長官ルイサ・オルテガ氏も、この決定は憲法違反だと批判した。
カラカスでのデモで催涙ガスを発射する警察の機動隊。CARLOS GARCIA RAWLINS / REUTERS
国内外からの圧力が高まる中、最高裁は4月1日に決定を撤回したが、これをきっかけに野党勢力の反発を買い、その後10日以上にわたって激しいデモが連続して発生した。
6日に最初の犠牲者が発生した。カラカス郊外で法学部の学生ジャイロ・オルティスさん(19)が警察に射殺された。野党幹部によると、警察がデモを中止させようとしたとき、オルティスさんを射殺したという。内務省はオルティスさんが死亡した事実を認め、射殺した警察官の刑事責任を問う意向を表明したが、オルティスさんがデモの参加者だったという見方については否定した。
7日に再びデモが発生し、政府の会計監査事務所は同日、野党指導者のエンリケ・カプリレス氏が公職に就くことを今後15年間禁止するとの決定を下した。
カプリレス氏は過去2回にわたって大統領選に出馬し、2013年にはマドゥロ大統領に僅差で破れた。政府からは契約法違反や寄付金の不適切な管理があると批判されている。一方、野党は今回の措置で2018年の大統領選にカプリレス氏が出馬するのを妨害しようとしていると反発している。
「独裁政権が必死に妨害するのは、我々が前進している証拠だ」と、カプリレス氏は7日の演説で強調した。「政治活動を禁止されるべきなのはお前だけだ、ニコラス・マドゥロ」
カラカスでのデモ中に、催涙ガスに背を向ける女性。MARCO BELLO / REUTERS
深刻な経済危機や人道的危機に陥る中、マドゥロ政権の方針に対する不満はこれまで以上に高まっている。
国際通貨基金(IMF)の予想によると、石油価格の下落や経済政策の失敗が原因で起きたベネズエラの危機は、少なくとも2019年まで続くと言われている。経済の縮小により、ベネズエラは貧困や致命的な物資不足に陥った。
現在、失業率は上がり、賃金は大幅に下落している。国中のスーパーでは、日常的な食料品が不足している。病院は、医薬品や基本的な医療機器すらない状態で運営されている。
野党が強調するように、マドゥロ大統領は反対派の取り締まりを強化している。ニューヨークタイムズによると、政治犯として現在投獄されている人の数は100人以上で、1年前の89人から増加している。政治犯の数を監視する人権団体「ペナル・フォーラム」代表のアルフレド・ロメロ氏は、「抑圧の度合いが、ますます過酷になってきている」と訴えた。
カラカスのデモで、機動隊と衝突するデモ参加者。CHRISTIAN VERON / REUTERS
電気技師のリチャルド・モルトンさん(43)はロイターに、「デモに参加してから、もう2年になります」と語った。「今日参加したのは、人々が団結しているし、政治家もデモを応援してくれているからです。それに、今の経済状況には耐えきれません。ここに住める人はいませんよ」
ベネズエラの首都カラカスで起きた4月8日の政府批判デモでは、「独裁政権は終わりだ」という看板や国旗が掲げられている。CHRISTIAN VERON / REUTERS
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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