アメリカ政府当局は4月8日、アメリカの原子力空母「カール・ビンソン」を中心に編成した空母打撃群が北朝鮮付近の海域へ向かっていると説明していたが、実際は反対の方向へ向かっていたことがわかった。ニューヨークタイムズと軍事専門サイト「ディフェンス・ニュース」が報じた。
アメリカと北朝鮮の緊張が高まる中、アメリカ太平洋軍は4月8日「空母カール・ビンソン打撃群は本日シンガポールを出発し、西太平洋北部に向かう」と発表した。その時アメリカ当局はロイター通信に対し、朝鮮半島への空母派遣は金正恩政権に軍事力を誇示するものだと述べた。
その翌日、H・R・マクマスター補佐官(国家安全保障担当)は、「慎重に」軍事力を示すために空母をシンガポールから朝鮮半島に針路変更させたとFOXニュースに語った。
2017年4月15日、スンダ海峡を通過するアメリカの空母カール・ビンソン。US NAVY PHOTO BY MASS COMMUNICATION SPECIALIST 2ND CLASS SEAN M CASTELLANO/RELEASED
新しい針路を発表してからわずか数日後、ドナルド・トランプ大統領は4月12日、FOXニュースに「我々は非常に強力な艦隊を送り込んでいる。空母よりはるかに強力な潜水艦もある」と強調した。
「我々には世界最強の部隊がいる。そしてこう言おう。『彼は間違っている』」と、トランプ氏は金正恩・朝鮮労働党委員長について言及した。
しかしディフェンス・ニュースは18日、アメリカ海軍が公開した写真から空母は15日に朝鮮半島から3500マイル(5632km)離れたインドネシアのスンダ海峡を通過していたと指摘。空母が朝鮮半島に向かっているとアメリカ当局が発表していた頃、実際には北朝鮮から遠ざかっていたと、ニューヨークタイムズが18日に確認した。
その後空母は針路変更したが、当初の予定よりも大幅に遅れて到着する見込みだ。
CNNのジム・アコスタ氏は、ある政府関係者が通信の行き違いによる混乱を批判したとツイートした。ホワイトハウスはコメントの求めに対し、すぐには応じなかった。
政府関係者が日本海に向かっていると発言した原子力空母カール・ビンソンの所在地に関する通信の混乱を、政府高官が批判した
北朝鮮は核開発計画を加速させており、アメリカに核弾頭を発射できるミサイルの開発を目指しているとみられる。トランプ大統領は北朝鮮問題を「解決」すると断言しているが、この脅威に対抗する選択肢は限られている。
北朝鮮政府は、日本の安倍晋三首相がアメリカを訪問していた3月にミサイルを発射し、中国の習近平国家主席のアメリカ訪問に先駆け、4月4日に再びミサイルを発射した。4月のミサイル発射を受け、レックス・ティラーソン国務長官は「アメリカは北朝鮮について十分語ってきた。これ以上発言することはない」とコメントしている。
北朝鮮の建国者、金日成氏の生誕105周年にあたる4月15日、緊張はさらに高まった。専門家は、北朝鮮がミサイル実験を行う可能性があると警告した。その時の人工衛星による画像は、北朝鮮が大規模な軍事パレードと共に6回目の核実験を行う準備を進めていることを示唆していた。
北朝鮮は16日にミサイルを発射したが、ミサイルは発射とほぼ同時に爆発し、失敗に終わった。
この実験を受け、マイク・ペンス副大統領は、トランプ大統領は北朝鮮に対してこれまでの政権以上に積極的な姿勢で臨む構えだと述べた。
「戦略的な忍耐を保っていくという誤った方針は見直すことになる。北朝鮮に対して外交的、経済的により一層圧力をかけていく。我々の願いは、この問題を平和的に解決することだ」と、ペンス氏はCNNに語った。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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