イギリスのテリーザ・メイ首相は4月18日、6月8日に総選挙を実施する意向を表明し、「将来の確実な道と安全を担保する唯一の方法がこの選挙を行うことだ」と述べた。下院は、19日に首相の意向について採決すると見られる。今、一体何が起きているのだろうか?
今なぜ解散総選挙?
イギリスの総選挙は、「議会期固定法」に基づいて5年に一度行われる。保守党のデイヴィッド・キャメロン前党首が2015年の選挙に勝利しているため、次回の選挙は2020年に予定されていた。しかし与党は早期の解散総選挙を選択し、実施することが認められている。その権限が18日に行使されたわけだ。野党労働党のジェレミー・コービン党首は党として選挙の実施に賛成すると述べており、イギリス国民は2カ月後に投票する公算が高まっている。
首相が決断した背景は?
今回の選挙に踏み切った理由の大半は、内政問題だ。前政権で内相を務めていたメイ氏は、首相になる過程でも党首になる過程でも、選挙を通過していない。2016年6月にEU離脱(ブレグジット)の国民投票でキャメロン氏が敗れ辞任した後、混乱が続く中で保守党は彼女を党首に押し上げた。そしてボリス・ジョンソン氏やマイケル・ゴーブ氏など、首相を目指したライバルがすべて脱落したため、彼女が首相となった。
イギリスにとって、EU離脱はここ数十年で最大の政治的変化だが、首相は自らへの委任を受けずにそれを断行しようとしている。
総選挙に勝利すれば、保守党党首としての地位を盤石にできるだけでなく、EU離脱の方向性について国民の信任を得たと主張することができる。首相は18日にこう語った。「議会は一体となるべきですが、現在は分断しています。国はまとまりつつありますが、政治家はそうではありません。総選挙が必要であり、ただちに実施する必要があります」
首相は危険を冒しているのか?
そうとも言えない。長年、保守党と多数派を争っている労働党はジェレミー・コービン氏の指導者ぶりが議論を呼び、足並みが乱れている。扇動的な言動が目立ち、左翼的な政策を支持する議員は身内にも少ない。世論調査会社「YouGov」によると労働党の支持率は現在23%程度で、保守党の44%に遠く及ばない。
2015年の選挙の結果、保守党は17席多く議席数を獲得しているが、安定運営には十分だがギリギリの数でもある。メイ首相は総選挙を利用して労働党の危機に乗じ、保守党の勢力が伸びることを願っている。そうすれば、教育改革など自身の政策を実現する余地が増すだろう。
世論調査では、メイ首相個人が有権者から強い支持を得ていることも示されている。最近のYouGovの調査によると、EU離脱を成功に導いてくれると期待している国民は48%。立場はかなり盤石だ。
6月8日の総選挙の発表を受け、投票意志についてYouGovの最新の調査結果。
保守党 - 44%
労働党 - 23%
自由民主党 - 12%
イギリス独立党 - 10%
選挙によってブレグジットは頓挫する?
それはない。仮に労働党が野党として機能していたとしても、党の綱領では国民投票の結果を尊重し、EUを離脱するとしている。自由民主党は、2回目の国民投票を実施しブレグジットの決定を覆すと公約しているが、世論調査の支持率は12%であり、多数党になる公算はない。EU離脱の交渉を開始するリスボン条約第50条はすでに発動しており、予想を大きく外れた事態が起きる可能性は少ない。ブレグジットはすでに現実のものとなっている。首相も述べているように、「イギリスはEUから離脱するのであり、後戻りはありえない」のだ。さらに、総選挙に勝利すれば、来たるEUとの交渉において首相は大きな権限を得ることになる。
他党について予測される結果は?
ある労働党議員はすでに、コービン党首のもとでの選挙には立候補しないと表明している。他の議員もこれに追随すると思われ、6月には多数の議席を失う可能性がある。選挙前に党首が交代する可能性は低く、大敗を喫すれば、少々無鉄砲な党首としての任期が終了することもありうる。自由民主党は勢力を伸ばすと見られるが、保守党の対抗勢力にはならないだろう。
選挙でのサプライズはあるか?
可能性はかなり低い。メイ首相への障害は見当たらない。問題は単純な勝利なのか、それとも圧倒的勝利なのかという点にある。結末は神のみぞ知る、だ。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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