ロシアの最高裁判所は、宗教団体「エホバの証人」の活動を禁じ、同団体の過激主義団体指定を求める政府の訴えを審理している。
ロシア司法省は、サンクトペテルブルク近郊にあるエホバの証人ロシア支部を1年前から捜査しており、同団体が過激主義を禁じる法律に違反していると断定した。司法省は、エホバの証人が「過激主義的な」小冊子を配布したと非難し、国内に400近くあるこの団体を「解散させる」べきとの判断を下した。
BBCによると、ある小冊子に作家レフ・トルストイの言葉が引用され、ロシア正教会の教理が「迷信で呪術的」と記載されていたのを司法省が問題視したという。
エホバの証人たちは司法省に対して反訴し、この措置が非合法だと訴えた。また信者たちが政治的な抑圧を受けていることを認めてほしいと裁判所に求めた。ロシアの国営通信者RAPSIによると、最高裁判所はこの措置が政治的抑圧には当たらないとして5日、訴えを退けた。裁判所は6日まで審理を中断した。
司法省は3月15日に提訴し、エホバの証人のあらゆる宗教活動を国内で完全禁止にするよう求めた。エホバの証人世界本部の報道官デーヴィッド・A・セモニアン氏は声明の中で次のように述べた。「法に従う非暴力的な市民をテロリストのように訴追するのは、明らかに過激活動対策法の誤った適用だ。このような措置は完全に誤った見方によるものだ」
アメリカを拠点とするエホバの証人のウェブサイトによると、ロシアには17万人以上の信者がいる。モルモン教、セブンスデー・アドベンチスト教会などロシア国内にある他の宗教的少数派と同じように、エホバの証人は近年ロシアの過激活動対策法の対象団体となっている。この法律は布教活動を禁止し、宗教的なパンフレットの配布を制限するものだ。
エホバの証人のロシア人指導者アンドレイ・シバク氏は2010年に逮捕された。事前に覆面の特別警察がエホバの証人の施設に侵入し、シバク氏が集会を主催していたところをひそかに撮影していた。政府はシバク氏ともう一人の指導者ヴャチェスラフ・ステファノフ氏が「憎悪を煽り、市民の人間としての尊厳を軽んじている」と非難した。
ニューヨークタイムズによると、訴状には「この団体は国家を尊重せず、あらゆる市民的な結びつきを弱らせ、国の安全を破壊する」と記されていた。
今回の弾圧は、過去にエホバの証人に対して行われたものと同様のものだ。エホバの証人ロシア支部の代表ヴァシリー・カーリン氏は子供の頃、家族とシベリアに強制移住させられた。この時代、旧ソビエト連邦はエホバの証人を非合法化し、数千人もの信者を追放していた。
カーリン氏はニューヨークタイムズに「私の子供や孫が同じようなことになるのは悲しいし、非難すべきことです。まさか現代ロシアで、また宗教弾圧の脅威に直面するなんて思いませんでした」と述べた。
アメリカの国際宗教自由委員会(USCIRF)の議長でイエズス会の司祭トーマス・J・リース氏は、声明の中で次のように述べた。「ロシア政府の今回の措置は、同国内でのエホバの証人の法的存在を抹消することを目的としているようだ。USCIRFは、この平和的な宗教団体に対する弾圧を止めるよう、ロシア政府に要請する」
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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