弾劾審判で罷免された韓国の朴槿恵・前大統領が3月21日、ソウル中央地検に出頭して約14時間に及ぶ取り調べを受け、22日午前に帰宅した。
今後は、検察が朴氏の身柄を拘束して捜査するかどうかに注目が集まっている。検察の特別捜査本部は遅くとも24日までに、逮捕状(事前拘束令状)を請求するかどうか決定する見込みだと、東亜日報は伝えている。
しかし、検察内部でも、身柄拘束か、在宅起訴かは意見が分かれている。
朴前大統領と共謀して、大企業に賄賂を要求したり、政府系の「ミル」「Kスポーツ」の両財団への出資を強要した疑いを受けている崔順実(チェ・スンシル)被告と、前大統領政策調整首席秘書官の安鍾範(アン・ジョンボム)被告らが拘束されており、バランスを取らなければならないということだ。(中略)
一方、逮捕状請求に反対する側は、どの被疑者にも適用される「不逮捕原則」を強調している。特に、裁判所が逮捕状を発付したとき、最も重視する「証拠隠滅と逃走の恐れ」が朴氏には適用されないと主張している。(東亜日報、3月22日)
ハンギョレは、主任検事の意見が、すなわち身柄拘束の可否を決めると予想している。
検察内部では、逮捕状の請求の可否は、検事総長が最終的な承認権限を行使するが、朴氏の事件の主任検査であるハン・ウンジェ(47・司法研修28期)ソウル中央地検刑事8部長の意見がそのまま貫徹されるという見方が強い。検事は、事件処理をする際、上級者の指揮・監督を受けるが、基本的に個々の検事が捜査や起訴など検察事務について独自の権限を持っている。(ハンギョレ、3月22日)
韓国の歴代大統領で退任後に捜査対象となったのは4人目。うち全斗煥、盧泰愚の両氏は収監され、盧武鉉氏は事情聴取後に自殺した。ただ韓国内で「朴槿恵氏も自殺するのでは」と危惧するメディアの記事はほとんど見られない。
5月9日に大統領選挙を控えている政界は、朴氏の逮捕について、思ったより静かだ。しかし内心は複雑だ。
政界の悩みは最終的に、検察が「身柄拘束」または「在宅捜査」を選択したとき、世論がどのように動くか予測するのが難しいことが出発点だ。朴前大統領が拘置所に収監されると同情論が大きくなり、保守勢力結集の「てこ」になるのか、それとも没落する保守層の「ピリオド」になるのかは不透明だ。逆に「在宅捜査」が、反朴政権デモで盛り上がった民心を刺激して反発につながるか、または社会統合に役立つかもしれない。(ハンギョレ、3月22日)
報道機関の主張も、検察内部と同様に分かれている。進歩系(革新系)のハンギョレの社説は「本来なら身柄拘束が当たり前」と述べるのに対し、保守系の中央日報は「調査の誠実さ」を基本にするよう社説で要望した。
検察が朴氏側の計算に気を使う理由はない。法と原則に基づいて事実関係を捜査し、必要に応じて身柄を拘束して捜査を続けるだけだ。本来なら身柄拘束が当然に見える。朴前大統領は、検察の事情聴取で容疑のほとんどを否認したと伝えられた。贈収賄や反政権文化人のブラックリスト作成など、朴元大統領の容疑一つ一つに対して関係者の具体的な証言と物証が得られているという。証拠が明らかなのにも関わらず否認を続ければ、身柄拘束は避けられない。(ハンギョレ、3月22日)
検察は、次々と逮捕された李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長や青瓦台の首席秘書官らとの公平性、元国家元首という特殊な身分、世論も一緒に苦心するだろう。法の前では万人が平等だ。世論調査では身柄拘束を求める意見が多数だ。しかし、政界が率先して党派的な利害関係に基いて「身柄拘束」と「在宅捜査」を叫ぶのは問題だ。私たちは、拘束か在宅かは、真実究明に協力する捜査に誠実かどうか、それが基準にならなければならないと信じる。(中央日報、3月22日)
ハフィントンポスト韓国版に掲載された記事を翻訳しました。
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