「ネット炎上」の専門家が語る、『正しく怖がるインターネット』とは

「スマホ利用に家庭でどんなルールを設けるべきか?子どもに何歳からスマホを与えるべきか?」こうしたことに心を砕いている家庭も多いことだろう。

ネット上での子どもの安全やモラル、「ネット炎上」対策について、学校や企業などで年間300回以上の講演を続けているグリー株式会社の安心・安全チームマネジャーの小木曽健さんが、「11歳からの正しく怖がるインターネット」(晶文社)を出版した。

本では、「ネットで失敗しない方法」として、個人情報を流出させないために「ネット上にアップロードしてはいけない情報」や「ネット炎上した時にすべきこと」「SNS乗っ取り被害への対処方法」など、気をつけるべきことが網羅されている。

一方で、ハフィントンポストの取材に対して、小木曽さんは、大人も子どもも、ネットを利用しないで生きていくことはもはやできないとして、「むやみに否定せず『正しい怖がり方』を知ることが最も大切」だとも訴えている。どういうことだろうか?

■家庭のスマホルール

スマホ利用に家庭でどんなルールを設けるべきか?子どもに何歳からスマホを与えるべきか?

こうしたことに心を砕いている家庭も多いことだろう。

ネットとの付き合い方について講演経験が豊富な小木曽さんには、ネットの悪影響を心配する親や教諭たちから、子どもに教えるネットやスマホのルールについての質問が頻繁に寄せられるという。

しかし、本の中で小木曽さんは、子どもの夜更かしを防止する目的で作られることが多い、「我が家では◯時以降、スマホ禁止」というルールについて「残念ながらルールが効果をあげず失敗するケースが多いんです」と、明かしている。

たとえばある家庭で、「もう!我が家は夜九時以降はスマホ禁止よ!」というルールが作られたとします。するとかなりの確率でこんなことが起きます......。

ルール初日、この家庭のお子さんが、夜九時ギリギリまで大慌てでLINEをやりまくってます。バタバタです。そして夜九時になった瞬間、「あ〜間に合った、疲れたぁ!」って言いながらマンガを読み始めましたね。結局、寝る時間が早まることはなく、母ちゃんまた激怒。でも残念ながらコレ、仕方ないんですよ。(「11歳からの正しく怖がるインターネット」(晶文社)より)

なぜ失敗するのか。

小木曽さんは「スマホルールを何故作らなくてはならないのか?その、本質からズレてしまっているからです。本来の目的は『良質な睡眠時間を確保する』、それに対して本質的なルールを作るなら『我が家では◯時間以上寝る』ということにしなければいけない。こうしたルール作りは実はビジネスでも同じなんです。本質的な問題を解決しなくてはいけないのに、意外と『あの部長がうるさいから...』などの理由でズレた対応をして上手くいかなくなってしまうことってありますよね」と話す。

同様に本の中では「スマホを与える時期」についての疑問にも、「包丁と同じ、家庭で、子どもの性格に合わせて、環境も考慮しながら親が決めちゃっていい」と答えている。「ネットはクルマや包丁と同じ、ただの道具。『怖いですねえ』で終わらせないで、どんなリスクで、どうやって回避すべきか、必要な知識を手に入れてほしいです」。

■それはネットの問題なのか?「ネットいじめ」

また、小木曽さんは本の中で、子どもと関わる中で、「ネットいじめ」について話してほしいという依頼も多いと明かす。いじめについて話すと、時にこんな相談が寄せられることもあるという。

ある学校での講演後の出来事でした。生徒たちが教室に戻り、後片付けをしていたら、一人の生徒さんが声をかけてきたのです。おそらくほかの生徒がいなくなるのを待っていたのでしょう。

「実は、学年の全員から......」

あとは涙で言葉が続きませんでした。自分がいじめを受けているという内容。実はこのような相談は珍しくありません。毎回、本当に胸がつぶれる気持ちになります。(「11歳からの正しく怖がるインターネット」(晶文社)より)

小木曽さんによると、多くの教育現場では、ネット上での誹謗中傷や、ケンカなどのトラブルが頻出しており、教諭らは毎日のようにその対応に明け暮れているという。

しかし、小木曽さんによると、こうしたトラブルは、ネットなしでも「ほぼ間違いなく起きていた」として次のように語った。

実はネットなんて、トラブル全体から見ればオマケの部分でしかありません。それなのに『ネット』に囚われすぎると、『投稿ボタンを押す前にもう一度見る』とか、本質の部分じゃないところに目が行ってしまうのです。

いじめを世の中から無くすことは不可能かもしれない。でも『死なせない』ことはネットの力でできるかもしれない。いじめられている子に、匿名で、『わたしは味方だよ』『嫌いじゃないよ』と伝えることもできるからです。

ネットは単なる道具であって、使う人次第で悪くも良くもなる。不必要にこわがり過ぎず、クルマと同じようにハンドルさばきを覚えて使ってほしい。この本を読めば、安心して使ってもらえるようになると思います。

■プロフィール

小木曽健(おぎそ・けん)

グリー政策企画室・安心安全チームマネジャー。2010年グリー株式会社入社。「GREE」のネットパトロール・カスタマーサポート部門の責任者を経て、12年8月より現職。インターネット啓発に関する全国での講演は年間300回以上、受講者は40万人を超える。講演を基に作成した無料教材「事例に学ぶ情報モラル」は、消費者教育教材資料表彰の優秀賞を受賞。

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