アメリカのジェフ・セッションズ司法長官が2016年の大統領選中に駐米ロシア大使と2回にわたって面会していたと、ワシントンポストが3月1日報じた。
セッションズ氏は1月10日、司法長官の指名承認公聴会でロシアとの接触を否定していた。
ドナルド・トランプ大統領の陣営が選挙戦でロシア政府と接触していた可能性が新たに明るみになったことで、特別検察官に捜査を求める声が高まるのは必至だ。
ホワイトハウスの国家安全保障担当マイケル・フリン大統領補佐官は2月13日、トランプ大統領就任前に駐米ロシア大使と接触した疑惑を受けて辞任した。
また、アメリカの情報機関と捜査当局は、トランプ大統領の陣営幹部や関係者らが大統領選前にロシアの情報当局者と繰り返し接触していたことを確認したという。
トランプ氏を勝利させるためにロシアが大規模なサイバー攻撃を仕掛けていたこと、そしてトランプ氏とロシアが選挙戦中も繋がりがあったことへの懸念が高まっている。ニューヨークタイムズによると、オバマ政権下で働いた情報機関の当局者は、将来の捜査官に向けて、これまでの捜査の経緯を引き継ごうとしていると語ったが、当局者を動揺させた情報の中には、トランプ陣営の関係者とロシア政府がヨーロッパの首都で持ったと疑われる一連の会合があり、トランプ政権はこの会合があったことを一貫して否定している。
ワシントンポストは、セッションズ司法長官が2016年、駐米ロシア大使と2度にわたり会っており、1月に行われた指名承認公聴会で、この事実を明らかにしなかったと報じた。セッションズ氏は、トランプ陣営の中心人物であり、影響力の大きい上院軍事委員会のシニアメンバーだった。ワシントンポストによると、委員会の他のメンバーは、ロシア大使と接触した覚えがないと強調した。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アメリカの捜査当局はトランプ陣営とロシア政府とのつながりを捜査する一環として、セッションズ氏のロシア外交官との関係を調べたという。
司法省当局はワシントンポストに対し、セッションズ氏は、トランプ陣営の顧問というよりはむしろ、上院軍事委員会のメンバーとしてセルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使に会ったと語った。(ワシントンポストは、2016年にキスリャク氏に接触した委員会のメンバーを特定できなかった)
セッションズ氏は1日夜に声明を発表し、「私はロシアの当局者に会って、選挙運動について話し合ったことは一度もない。この主張の意味が分からない。でたらめだ」と否定した。
この報道でワシントンには衝撃が走った。トランプ氏の政権運営は、この数カ月のうちに暗礁に乗り上げる恐れもある。これまでホワイトハウスとほとんどの共和党議員は、特別検察官を任命し、大統領選でのロシアの影響について調査するよう求める声に消極的だった。しかし1日夜、共和党のリンゼー・グラハム上院議員は、セッションズ氏の疑惑を踏まえ、「調査が必要かもしれない」と、ようやく認めた。
グラハム議員「ジェフ・セッションズ氏がロシアの外交官と接触したなら、その場合はもちろん特別検察官が必要だ」
下院情報委員会のアダム・シフ民主党代表は1日、「セッションズ氏が大統領選の期間中にロシアの大使に会い、指名承認公聴会で明らかにしなかったとすれば、セッションズ氏自身が調査から外れることが絶対に必要だ」と述べた。「これは危機なんてものではない、調査は不可欠だ」と、シフ氏は声明で語った。
民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務は、セッションズ氏の公聴会での発言は偽証罪に当たると非難し、司法長官を辞任するよう求めた。
「議会への宣誓の下で、自身のロシアとのやり取りについて虚偽の証言をした以上、セッションズ氏はわが国で最高位の法執行官を務めるには適任でなく、辞任しなければなりません。トランプ氏とロシアとの政治的、個人的、財政的な繋がりを捜査するためには、独立した、両党の支持を得た第三者委員会を作る必要があります」と、ペロシ氏は1日夜に語った。
憲法の専門家ローレンス・トライブ氏は、これが偽証罪に当たるかどうか、Twitterで見解を求められ、こう答えた。
私はそのように思います。明確に関連性のある事柄について宣誓の下に行われた、意図的で故意の虚偽でした。
司法省の今後の動きは、今後数日間でより明確になるだろう。セッションズ氏の広報担当者はワシントンポストの取材に対し、上院議員だったセッションズ氏が選挙中にはっきりと口にした「ロシア政府とのつながりはなかった」という発言は、上院司法委員会に対する偽証にはあたらないと主張した。しかし、セッションズ氏の進退に関して、広報担当者からはっきりとしたコメントはなかった。もし辞任を拒否すれば、セッションズ氏はこの疑惑に関するFBIの捜査を受けながら職務にあたることになる。長官職を辞任し、トランプ大統領の選挙チームメンバーとロシア政府の関係を探る司法省の捜査を率いる独立検察官を指名するか否か、セッションズ氏はこれまでのところ態度を明らかにしていない。
【動画】ロシアとの関与を「宣誓のもとで」否定するセッションズ氏
連邦議会では上院情報委員会が独自調査を進めている。また、上院情報委員会は1日夜の報道以前に、ロシアの選挙干渉に関する調査の一環として 、トランプ氏陣営とロシアとの関連についても詳しい調査を行うと発表していた。
下院情報特別委員会のデビン・ヌネス委員長(共和党)とシフ氏は声明で、調査の概要をまとめた6ページの文書は依然機密扱いであると述べた上で、調査は、以下の点に注目したことを明らかにしている。
・アメリカや同盟国に対し、どのような手段でロシアのサイバー攻撃や他の干渉が行われたのか?
・ロシア政府と、選挙陣営あるいはほかのアメリカ人の間に接触はあったのか?
・こうしたロシアの干渉に対してアメリカ政府はどのように対応したのか。またアメリカ政府が今後自国や同盟国を防衛するためにすべきことは何か?
・こうした問題について情報機関に関する情報漏洩の可能性はあるのか?
調査の要旨には、大統領とクレムリンとの関係の可能性についてさらなる情報を強く求めてきた民主党議員と、モスクワがトランプの当選を支援するのを狙って民主党機関をハッキングしたという情報機関の調査結果を過小評価しようとしてきた共和党員との間で妥協があったことがみてとれる。熱烈なトランプ支持者であるヌネス氏は2月27日、大統領とロシアへの「魔女狩り」にならないよう警告し、委員会はスキャンダルを明るみにしてしまう政府の情報漏洩の原因を根絶することに集中するべきだと主張した。
委員会は今後、面談、目撃者の証言取り、そしてロシアのサイバー攻撃がトランプ氏勝利を目的とした情報機関の調査結果資料の見直しを進める予定だ。また声明によると、情報機関の「分析基準」を見直し、「機密情報の漏洩」を調査する予定だという。
下院情報委員会の調査は、上院情報委員会により現在行われている捜査とは別に行われる。しかし、民主党は、上下両院で過半数を占める共和党が調査を骨抜きにしてしまう可能性を危惧している。
トランプ氏の政権移行チームのメンバーだったヌネス氏は、トランプ陣営とロシアの情報機関職員の接触疑惑について、先回りして否定した。
ヌネス氏は2月27日、記者団に「その件は調査済みであり、どこを探しても、証拠はまったく見つかっていない」と語った。ヌネス議員と、上院情報委員会のリチャード・バール委員長はホワイトハウスに呼び出され、トランプ陣営とロシアの間に接触があったという報道に反論した。
議会委員会とFBIの調査に加えて、対ロシア強硬派の民主党グラハム議員と共和党ジョン・マケイン上院議員は、超党派の特別委員会の設置を要求している。特別委員会が開かれれば、民主党は証人を召喚したり、捜査の過程で得られた記録の保管を命ずる権限が得られる。しかし、共和党首脳はそういった要求には応じず、情報委員会で適切な判断が下されると主張している。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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