加藤一二三九段、現役最後の順位戦で敗北 「指せなくなるのは寂しい」と無念さ語る

現役棋士生活63年の名棋士は、対局開始から13時間以上、188手に及ぶ大熱戦を最後まで戦い抜いた。

史上最年長の現役棋士・加藤一二三九段が3月2日、棋士の序列を決める「名人戦」順位戦・C級2組の最終11回戦に臨んだ。

引退が決まっている加藤九段にとって「現役最後の順位戦」だったが、有終の美を飾ることはできなかった。

「将棋界のレジェンド」とも呼ばれる加藤九段は現在77歳。現役棋士生活63年の名棋士は、対局開始から13時間以上、188手に及ぶ大熱戦を最後まで戦い抜いた。


加藤九段は名人への挑戦権を争う順位戦の最上位クラス「A級」に通算36期在籍。一度は将棋界の頂点「名人」にも就位し、還暦後もA級棋士として活躍したが、2002年に「B級」へ陥落。近年は成績が振るわず、2014年からは最下位の「C級2組」に。1月19日に降級が確定し、定年規定により「現役引退」が決まっている。

■最後の順位戦、戦型は十八番の「相矢倉」

盤面に向かう上村四段(左)と加藤九段

この日の対局は午前10時10分から東京・将棋会館で加藤九段の先手番ではじまった。対局相手は上村亘四段(30)。加藤九段と上村四段、過去の対戦成績は2勝2敗。

加藤九段は指し慣れた矢倉を目指した。上村四段もこれに応じるように、盤上は両者とも「玉」を囲いあう「相矢倉」となった。加藤九段が指し続けてきた戦型で、「加藤矢倉」や「加藤流」とも呼ばれる。

中盤は加藤九段優勢の局面もあったが、慎重に指しまわしたことで決め時を逸してしまうことに。持ち駒から攻めに使える「歩」がなくなり、駒得が消えた。その後、粘りに粘った上村四段に追い詰められ、最後は加藤九段が投了した。

対局後、加藤九段は「優秀な若手を負かしたというニュースになれば面白いと思っていた。相手に粘っこく戦われた。心血注いできた順位戦を指せなくなるのは寂しい」と、無念さをにじませた

■最後の順位戦でも、昼食と夕食やっぱり「アレ」でした

加藤九段といえば数々の名勝負もさることながら、「ネクタイをかなり長く結ぶ」「旅館の人工滝の音が気になったので止めさせた」など、個性的な「伝説」でも知られる。

特に「対局時の食事は、昼も夜もうな重」は加藤伝説の代名詞だ。

この日も、昼食は「うな重・竹」、夕食は「うな重・松」と、"定跡通り"の注文だった。

加藤九段が注文したものと同じ「うな重・竹」。朝日新聞・村瀬信也記者のTwitterより

朝日新聞デジタルによると、「竹はウナギが2枚なのに対し、松はウナギが3枚。ご飯も増量されている」とのこと。高齢となった今もなお、加藤九段の闘志に衰えは見えない。

加藤九段は現役引退が決まっているが、この後も5月ごろまでは対局の予定がある。日本将棋連盟によると、「引退が決まった棋士でも、他の棋戦(の予選・本選)で勝ち残れば現役扱いとなります」。

予定される全ての対局が終わった時点で引退となるので、加藤九段はまだしばらく「現役」は続けられる。

▼画像集が開きます▼


【※】スライドショーが表示されない場合は→こちら

注目記事