「私は洗脳されていた」AV強要の実態、被害者のくるみんアロマさんが語る

3月2日、東京の参院議員会館でアダルトビデオへの出演強要問題で、被害根絶を目指すシンポジウムが開かれた。

アダルトビデオ(AV)への出演強要の被害が続出していることを受けて、被害根絶を目指すシンポジウムが3月2日、東京の参院議員会館で開かれた。

与野党の国会議員らの参加者を前に、被害者を救済するための法整備の必要性を訴える内容。AV出演被害者の「くるみんアロマ」さん(26)は自身の体験を語った上で、「他にも被害者がいるのは絶対に許せないことなので、国全体でこの問題に向き合って欲しいと思いました」と訴えた。

AV出演強要の被害について語る、くるみんアロマさん

■「AV女優は芸能界で一番すごいんだよ」半年間の説得の末に

くるみんさんは2014年から2016年にかけて芸能事務所に所属して、2本のAVへの出演を強要されたという。トークセッションで、NGO団体「ヒューマンライツナウ」事務局長の伊藤和子さんに質問に答える形で、くるみんさんは以下のように話した。

――くるみんさんは、なぜご自身の体験を社会に訴えようと思ったのでしょうか?

AVの事務所を辞めた後は自分もふさぎ込んでいて、忘れたい過去でした。いろいろなメディアから取材依頼を受けたんですが、自分の中で整理もついていないので「そういう取材は受けないんで」と断っていました。ただ、時間が経って、気持ちの整理もついたころに、あるユーチューバ—のイベントで記者の方から「今こういう(AV強要の)被害が増えているんです」と教えてもらい、「自分じゃないと伝えられないんじゃないか」という気がして、私は取材を受けていこうと決めました。

――まずスカウトされて事務所と契約したときに、最初は歌手になりたいという話だったのがヌード写真を撮影されるようになった経緯を教えてもらっていいですか?

(東京の)新宿を歩いていたときにスカウトされて、「グラビアをできる人を探している」と言われました。高校のとき3年間音楽をやっていたのもあって、「もし音楽デビューできるなら」と言ったら、親身になって「その話を聞かせて」と言われました。その人からスカウトされるのは2回目で、一度は断っていたんですが、名刺もしっかりしてて、経歴もちゃんとした人のように見えました。喫茶店で話をして、1週間後に事務所に案内されました。そのまた1週間後に(大手出版社のグラビア撮影の)面接を受けることになりました。

そのときは「ヌードをやる」とは全く言われてなかったけど、面接をしている間に「この子はヌードもできます」と面接官に説明されてしまいました。私はそんなつもりがなかったので、内心「えっ」と思ったんですが、そのときの空気とか……。面接をやる前に「絶対、ノーと言わないで」と釘を刺されていたので、「はい」と答えてしまいました。それでヌード撮影の話になってしまったけど、その間は「どうしたらいいんだろう」という気持ちで毎日泣いてました。もどかしい気持ちというか。グラビアですら抵抗があったのにヌードまで行ってしまったので。戸惑いが毎日ありました。

――ヌードが嫌だったのに、最終的に撮影になった。断れなかったのはどうしてですか?

ヌード撮影は、サイパンでやりました。ヌードグラビアで写真週刊誌でデビューするのと同時にイメージビデオも撮ったんですけど、もう逃げられないというか「こんなことまでするんですか?」というようなことまで言われました。説得の仕方もすごくて。「一回ヌードになったら、どんどん脱いでいかなきゃカッコ悪いよ」みたいな感じ。「脱ぎ損という言葉知ってる?」とか、どんどん過激なことを要求されたのは事実です。「断れない」という方向に仕向けられていきました。

――夢を利用されたというような思いはありますか?

そうですね。やっぱり、ステップになると思ったんですよね。自分が音楽をやりたいと思っていたので、「これをやってくれたら音楽デビューしようね」とか「こういう番組に出ようね」「君の好きなアーティストに会わせるよ」とか。そういう話が流暢に出てくるので、(事務所の)その人に相談すれば夢をかなえることができる。ヌードを乗り越えれば、それができると。夢を利用されたっていうのは、「ステップになるよ」と、良いことばかり言われてやらされてしまったのが「ずるいな」と思いました。

――ヌードになった後にAV出演を説得されてしまった経緯は?

サイパンでの撮影の最終日に、「脱ぎ損って言葉を知ってる?」とか言われてました。その後、ネット放送の番組などにも出たんですけどセクシータレント扱いで、普通の会話はさせてもらえなかった。「違う仕事はないんですか?」と言ったら、毎回AVの話を出されました。毎回断っていたんですけど、説得の仕方がすごくて「AV女優はこのレベルで、グラビアアイドルはこのレベルだよ。AV女優は芸能界で一番すごいんだよ」とか「あなたなぜやりたくないの? 職業差別してるでしょ。それじゃ、ゴミ収集の人は汚いの?それと一緒だよね」「時代は変わったから、AV女優になって、その後に歌ったり踊ったりするのが主流だよ」と言われました。

冷静に考えると、AV女優として活動後に普通の女優になる人もいるかもしれないけど、普通はそんなうまくいかない。ただ、「時代は変わったんだ」と毎回言われて洗脳されて、その時間だけは「本当にそうなのかな?」と思っちゃうことは何回もありました。それでも私は断っていたんですけど、半年以上にわたって言われました。毎回、それを言われて泣いていたんだけど、多いときは十何人くらいで説得に入って、みんなから「そんな泣かないでよ。大丈夫だよ、大丈夫だよ」と言われて、やるしかない状況になってしまいました。怖いと思ったのもあるんですけど。

半年以上にわたる説得が終わったら、私がAV女優をやると決まったら、急に事務所が動いて「次の日、面接に行こう」となって、面接で出来ない行為をNG項目として提出していたんですけど、撮影になると無視されて「あなた不平不満ばっかりだね」とか、「メーカーさんに迷惑かけないで。他の女の子、使ってもらえなくなるでしょ」と事務所の人に言われたり、怒られてばかりいました。「できないことは、すぐ言って」と言われていたのに、実際「できない」と言うと怒られてしまうので、最後の方は責任感で出るようになってしまって、とにかくつらい気持ちで泣きながら帰った覚えがあります。

――先ほど、洗脳という言葉がありましたが、どんな状況だったんですか?

そうですね。言葉がすごくうまくて。スカウトの人から「15分間、打ち合わせしよう」と呼び出されて、「何がやりたいの?」とか、とにかく夢を語らせて、そのときは「この人に言えば全部夢がかなうんじゃないか」と思うような雰囲気と、話の流暢さがありました。「この人に言えば大丈夫だ」という安心感もあって、周りの人も「この人はすごい人で、あの人もあの人もデビューさせた」と、冷静な判断ができなくなってしまっていました。

普通だったら「おかしいだろ?」と思うはずだし、その前にも自分が「納得いかないことだけどその後は保証してくれるんですよね」とか「騙してないですよね?」とか、もう一人の自分は疑ってるので、毎回それを確認してたんですけど「全然、大丈夫だよ。騙してないし」と言われて、そのときは信用できると思ってしまったというのはあります。

――AV出演強要にもいろいろパターンがあって「違約金がいる」と脅したり、家から物理的に連れ出すタイプもあるんですが、くるみんさんの場合は長い時間をかけて洗脳していく方法ですね。ある程度の割合の方が、こういう洗脳型で、「芸能界の大物に会わせる」などの夢を持たせて、最終的にはそれが嘘と分かる。くるみんさんが最終的に洗脳がとけて、AV業界を辞めた経緯は?

事務所では2年契約だと言われてて、それまでは頑張ろうと思っていました。2年をまたぐ少し前の日に、私が呼ばれたら「社長がお金を持ち逃げして、会社は倒産した」と言われて、移籍先と言われたところが、全員AV女優さんのいるプロダクションで。「もうこの先、この道しか行けないんだ」と思って、そこで辞めました。お給料ももらってなかったんですけど、もらわずに辞めることになりました。

――契約して2年間にAV出演させられて、ギャラをもらえなかった。加害者は今どうなりましたか?

社長は逮捕されたと聞いてますけど、他の人たちはどうなったのかは分からないです。

――自分をそういう目に合わせた人にどう思いますか?

「本当に許せないな」と思いました。メリットばかり言われて、出演料に関しても「多い人はこれくらいだよ」と言われたんですが、「ああ、そうなんですね」と何もくわしく聞かなかったんですね。うまく利用されちゃったってのは、あると思うんです。お給料について聞いてもたらい回しでした。夢につけ込まれたというのもあるし、騙したことへの憤りもあるし、騙された自分への憤りも失望感もすごくあります。

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