マルちゃんは、アメリカに生産拠点を置き、メキシコに輸出している。そのため、トランプ大統領が言及する北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しで、メキシコとの間の貿易事情が変われば、製品にも影響が出かねない。
ハフィントンポスト日本版は、メキシコ版と協力し、現地での実態を調べた。マルちゃんは地元のスーパーマーケットやお店で簡単に手に入り、日本と同様、お湯を注いでその場で食べることもできるという。地元の人の声を聞いた。
メキシコの店で陳列される「Maruchan」
■メキシコ人にも「よく知られたブランド」
--どの程度の頻度で、どのようにマルちゃんを食べますか
「好きです。チーズやエビ、チリ味などいろいろ食べる」(39歳女性)
「1週間に1度のペースで食べる」(25歳女性)
「塩分が濃くて好きではない」(52歳男性)
--マルちゃんについてどう思いますか
「すぐに食べられるので、料理する時間がない時用に購入されている」(36歳男性)
「よく知られたブランド」(22歳女性)
「健康的ではないが味はおいしい」(40歳男性)
--トランプ大統領の影響で貿易事情が変わり、マルちゃんの値段が上がったらどうしますか
「値段が上がっても、メキシコ人は買うと思う」(52歳男性)
「マルちゃんを好きな理由は安いから。高くなったら買わない」(25歳女性)
「値上げしたら、誰が買うのか」(29歳男性)
ハフィントンポストは、マルちゃんを製造する「東洋水産」(東京都港区)にも取材し、メキシコで広まった経緯や、トランプ大統領がもたらす影響をどう受け止めているか、話を聞いた。
東洋水産の本社(東京都港区)
■出稼ぎ労働者がお土産に持ち帰ったことから広まった
--マルちゃんがメキシコで広まった経緯を教えてください
もともとは1972年にアメリカに進出し、現地法人や工場をつくって国内販売していました。当時メキシコから出稼ぎに来ていた人が、休暇のお土産にマルちゃんを持って帰ったことから、現地で食べられるようになりました。実際、メキシコの業者が空のトラックで工場に来て、製品を買って行ったので、これならメキシコでも絶対に流行ると、2004年に現地法人を作りました。
--どんな商品を販売していますか
メキシコでは、エビやチキン、ビーフなど13種類あり、エビにライムとハバネロで味付けしたものが一番人気です。値段は日本円で40〜50円ぐらいで。メキシコではタコスが150円ぐらいなので、安さが売りです。
--なぜ人気が出たのですか
はっきりとした理由は分かりませんが、安い値段が一つの要因だと思います。ふたを1ミリ単位で薄くしたり、大量生産したりしてコスト削減しています。日本とは異なり、香辛料やライムを加え、スープ感覚で食べているようです。学校やバスターミナルなどでいつでも手に入ります。
--マルちゃんという名前が浸透しているようです
食べる人が増えて売り上げが伸び、ブランドとして認知されました。すぐに食べられることから、「早い」「すぐにできる」という意味の俗語としても使われるようになり、議会が早々に議論を打ち切った際に、「議会がマルちゃんした」と表現するそうです。また、ギャング団が募集広告で、豪華な生活をアピールするため、「入団するとマルちゃんではない本格的な食事を提供します」という誘い文句を使っているという話もあります。
メキシコで販売しているインスタント麺「Maruchan」
■トランプのNAFTA見直し発言、影響を見極める
--トランプ大統領が発言したNAFTAの見直しや関税の復活で、製品に影響する可能性があります
メキシコが関税をかけるかどうかの話ですが、そうなっても、税金なのでやむを得ません。値上げして買わなくなったら大変ですが、どうなるかは分かりません。ただ、NAFTAができる前から輸出し、食べてくれていたので、影響はそこまで大きくないのではないでしょうか。
--どのような対策を検討していますか
状況を見守るしかありません。何も決まっていない段階では動けませんし、具体的な議論もしていません。起きた結果に対応するだけです。これまで通り、流通経費がかからないように工夫しながら、コスト削減を徹底しています。
--アメリカの影響を排除するため、メキシコに生産拠点を作ることは考えられますか
メキシコへの供給拠点であるアメリカ・テキサスの工場の生産量を落としてでも、新しいのを作ったらよいのかということになるが、そんなに簡単ではありません。そこまでの対策が必要なほど、売り上げの減少や大きな変動は起こりづらいと思います。
■関連画像集「メキシコや日本の「マルちゃん」インスタント麺」
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