フィリピン国家警察のロナルド・デラロサ長官
フィリピン国家警察のロナルド・デラロサ長官は1月30日、警官グループが韓国人ビジネスマンを拉致、殺害した事件を受けて、麻薬犯罪取り締まりを中断すると発表した。
2016年10月、麻薬取り締まりを担当していた警察官が仲間と共謀し、麻薬捜査と偽って韓国人男性を連行し、誘拐した。男性の家族は500万ペソ(約1100万)の身代金を支払ったにもかかわらず警察官たちは男性を国家警察本部で殺害して火葬し、遺灰をトイレに流したという。
ドゥテルテ大統領に耳打ちするデラロサ長官
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は29日深夜、会見で警察に「警官全員を浄化し、悪党のリストを提出しろ」と要求した。
デラロサ長官は、警察全体を蝕む腐敗を「浄化する」と宣言し、麻薬取り締まりを中止し、警察の麻薬捜査部隊を解体したと発表した。
「我々は警察全体を浄化する。その後でまた薬物への戦いを再開できるかもしれない」とデラロサ長官は語った。
デラロサ長官によると、警察官の約40%が「薬物のように卑劣で、腐敗している」と推定している。
ドゥテルテ大統領が2016年6月30日に就任し、麻薬販売者や麻薬使用者の撲滅に焦点を当てて以来、7000人以上が警察や自警団の手で法の目の届かないところで殺害されている。終わりのない麻薬戦争では皮肉なのは、警察が罰する人間と同じ程度の犯罪者になってしまったことだ。
ロサンゼルスタイムズによると、デラロサ長官は腐敗した警察官を取り締まるための防諜部隊を立ち上げると発表した。
「シンジケートに関わった警察官たちよ、これから何が起こるか見せてやろう。反抗すれば死が待っている」と、デラロサ長官は警告した。「この防諜部隊に殺されることになる」
麻薬取り締まりの大部分は、スタッフがはるかに少ないフィリピン薬物取締庁に移管される予定だ。
デラロサ長官は、麻薬組織の中心人物にとって「これは束の間の勝利になる」と語った。「いまのうちに楽しんでおくがいい。必ず奴らにも年貢の納め時が来る」
警察官の不正はドゥテルテ大統領の法支配が崩壊している証拠だと、人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のアジア副局長フェリム・カイン氏は指摘した。「フィリピンの警察官は、殺人罪から逃れられる都合のいい言い訳ができる」
ドゥテルテ大統領は、麻薬密売人を殺害して遺体をマニラ湾に投棄し、全国的に麻薬を撲滅する公約を掲げて権力の座に上り詰めた。
暗殺団の一員だったという男性は2016年9月、フィリピン上院議会で証言し、ドゥテルテ大統領がダバオ市長時代に超法規的な殺害を命令した、と証言した。また、ドゥテルテ氏自身が暗殺に加わったという。
ドゥテルテ大統領も、警察が「芯から腐敗している」と認めている。しかしドゥテルテ氏は「麻薬密売人に対する戦いをやめるつもりはない。私の任期最終日まで続く」と語った。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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