ユダヤ教徒とイスラム教徒の親子が、手を取り合って、イスラム圏7カ国からの入国禁止を決めた大統領令に立ち向かおうとしている。
アメリカのトランプ大統領は1月27日、シリア難民およびイスラム教徒が多数を占める中東・アフリカ7カ国からの入国を一時禁止する大統領令にサインした。
その後、入国禁止に反対するデモがアメリカ各地の空港で起こった。シカゴ・オヘア国際空港もその一つだ。40人〜50人の旅行者が拘束された同空港で1月30日、大勢の人がプラカードを掲げて大統領令に反対した。
そこで、シカゴ・トリビューン紙の写真家、ヌッチョ・ディノッゾ氏が撮影した1枚の写真が、大勢の人にシェアされている。
(CHICAGO TRIBUNE VIA GETTY IMAGES)
写真の右側にいるのは、ユダヤ教のラビ(ユダヤ教の指導者)であるジョーダン・ベンダット・アペルさんと、9歳の息子アディン。
左側に写っているのは、イスラム教徒のファティ・ ユルドゥルムさんと7歳のメリャムだ。
ベンダット・アペルさんのプラカードには「私たちは、同じことを体験している。もう二度と起こしてはいけない。ユダヤ人は入国禁止に反対する」、ユルドゥルムさんのプラカードには「共感」と書かれている。
また子供たちのプラカードに書かれたメッセージは「憎しみのための場所はここにはない」(アディン)、「愛」(メリャム)だ。
ディノッゾ氏がこの写真をツイートすると、瞬く間に1万人以上がいいね!した。
「“名前のない写真”」
この2組の家族は、デモで初めて出会った。ベンダット・アペルさんが、その時の様子をハフィントンポストUS版にこう話した。
「息子のアディンは、デモをしている人たちを近くで見たいからデモ隊の一番前の列に近づきたいと言ったんです。アディンはデモの現場にいることをとても喜んでいて、肩車をしてして欲しいと言ってきました。そこで、ファティと彼の家族に出会ったんです」
彼らはすぐに打ち解けたそうだ。写真が撮影された時、ユルドゥルムさんはどこかいいコーシャー(ユダヤ今日の戒律に従った食事)ステーキの店を知らないか、ベンダット・アペルさんに尋ねていた。
「人間としての関係を築くことができて、とても嬉しかった。ユダヤ教徒とイスラム教徒ではなく、正しい側にいるふたりの人間として」とベンダット・アペルさんはその時の気持ちを語った。
その後、ベンダット・アペルさんは、ユルドゥルムさん一家を、ユダヤ教の休日である「安息日」のディナーに招いたそうだ。「私はステーキを焼き、彼はバクラを持ってくる予定です」と話してくれた。
ベンダット・アペルさんはイスラム教徒ではない。なぜ空港のデモに参加したのか、次のように語った。
「ユダヤ人として、抑圧に立ち向かう責任があると思ったんです。ユダヤ人は迫害を受けてきました。ユダヤ人の歴史は『不当な行為の前に私たちは黙っていてはいけない』と教えてくれます」
「この写真を見て『私たち人間は一つになれる』と感じてもらえたら嬉しいです。私たちは同じ人間です。子供でさえ『人間になる』という選択ができるのです。恐怖や不信感に襲われた時でも、『互いを愛して親切にする』という選択ができます。ファティも同じ気持ちでしょう。この写真が、世界に愛と光を少しでも届けてくれますように」
ハフィントンポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
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