2020年の東京オリンピックのゴルフ会場に予定されている「霞ヶ関カンツリー倶楽部」(埼玉県川越市)が、正会員を男性に限定していることが「女性差別」と問題になっている。
国際オリンピック委員会(IOC)は、あらゆる差別を禁じた五輪憲章の原則に抵触するとして会場変更も辞さない構えだ。丸川珠代五輪相も「男女平等が原則」として会員規約の変更を促した。
霞ヶ関カンツリー倶楽部(2010年のアジアアマチュア選手権の模様)
■80年以上の歴史を持つ名門クラブ
霞ヶ関カンツリー倶楽部(霞ヶ関CC)は、80年以上の歴史を持つ名門クラブとして知られている。1929年(昭和4年)に、 黒須銀行(現在の埼玉りそな銀行)創業者の発智庄平(ほっち・しょうへい)らが土地を提供し、ゴルフ界草分けの人々の努力で誕生した。
3年後の1932年には18ホールが増設され、日本初36ホールの東西コースを擁するゴルフ場となった。戦後の1957年にはワールドカップの前身のカナダカップを開催。日本オープンは国内最多の4回開催している。
週刊朝日・元編集長の山口一臣氏はTwitterで以下のように指摘している。
霞ヶ関CCは単に女性が正会員になれない問題だけでなく、極めて閉鎖的なゴルフ場です。一般の人は男性でもなかなかプレーできません。また、男性でも誰でも会員になれるわけではありません。五輪会場として相応しくないことは明らかで、限られた人の利益のために五輪会場が決められるのは問題です。 https://t.co/vbosW4ArrX
— 山口一臣 (@kazu1961omi) 2017年1月31日
■きっかけは森喜朗氏、小池都知事も非難
1月13日、東京五輪について定例会見で話す小池百合子都知事
霞ヶ関CCが問題視されたのは、大会組織委員会の森喜朗会長の発言が端緒だった。1月4日、森会長は「輸送を計画通りにできるのかどうか」として交通アクセス面などを問題視した。
ジャーナリストの大宅映子氏らの団体「日本ゴルフ改革会議」も続いた。11日、都庁で記者会見して交通アクセスの問題を指摘した上で、男女でプレー環境に格差があるほか、高級会員制クラブのため大会後のレガシーにもならないなどとし、都所有の「若洲ゴルフリンクス」(江東区)への変更を提言した。
こうした動きを動きを受けて、小池百合子都知事は13日の定例会見で「21世紀の時代に女性が正会員になれないというのは非常に違和感を感じる。五輪会場となって倶楽部のプレステージ(名声)が上がるだろう。女性会員をお認めになるべきだ」と述べた。
■IOCが問題視、安倍首相らも次々と指摘
東京五輪・パラリンピック組織委員会も27日、IOCが「オリンピック憲章などに照らし平等であるべきで、ゴルフ場は改善すべきだ」という見解を示していることを明らかにした。
31日には安倍首相が参院予算委員会で「そこで五輪を開くというのはどうかという意見があるのは当然だ」と述べた。丸川五輪相も「できる限り早く、憲章にかなう形で結論が出ることを望んでいる」と述べ、改善を求める姿勢を示した。
同日夕方、霞ヶ関CCの木村希一理事長が埼玉県の上田知事を訪問し、会場の準備状況などを報告した。報道陣の取材に対して木村理事長は「これから会員の皆さんと協議をしていく」と述べたという。
■世界の名門クラブでは?
歴史のあるゴルフコースでは、男性会員しか認めない例も多かったが、女性への門戸開放は世界的な流れになっている。
「マスターズ」を開催するアメリカのオーガスタ・ナショナルは、2012年に女性会員を受け入れた。
「ゴルフの聖地」と呼ばれるイギリスのセントアンドリュースを拠点とする「ロイヤル・アンド・エンシェント・クラブ」も、男性に限ってきた会員制を2014年に見直した。
一方で、男性限定を頑なに変えなかった例もある。世界最古の会員制ゴルフクラブであるミュアフィールドは2016年5月、女性会員の受け入れについて会員投票で否決。「全英オープン」開催コースのローテーションから外されている。
■関連スライドショー(霞ヶ関カンツリー倶楽部)
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