メキシコ大統領、トランプ氏との会談中止 国境の壁建設の大統領令めぐり対立激化

「建設費用の支払い要求は到底受け入れられない」

メキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領は1月26日、ワシントンで31日に予定していたドナルド・トランプ大統領との会談を中止すると発表した。

トランプ氏は25日、メキシコの国境沿いに壁を建設する大統領令に署名した。何十億ドルもの費用を何らかの形でメキシコが負担するよう求めている。これに対し、ペニャニエト氏はトランプ大統領との首脳会談を見送ることで強硬な姿勢を示すよう、議員たちから強い圧力を受けていた。

ペニャニエト氏はTwitterで、「トランプ政権が国境の壁建設の費用をメキシコに支払わせようと決めたことは遺憾だ」と述べた。ペニャニエト氏は以前から、支払いの要求は到底受け入れられないと話している。

「私たちは今朝ホワイトハウスに連絡して、来週火曜に予定していたトランプ大統領との首脳会談には出席しないと伝えた」

ペニャニエト氏はさらに、「メキシコは主権国家として敬意を求めるし、敬意を表している」とツイートした。

ペニャニエト氏は25日夕方、アメリカ政府との対話を継続し、どのような追加措置を講じるかについて閣僚や議会と相談すると表明した動画を公開した。ペニャニエト大統領は動画で、トランプ大統領との会談中止には言及していなかったが、「メキシコ政府は国境の壁の建設費を支払うことはない」と改めて主張していた。

「メキシコは壁の建設に反対する。これまでに何度も言っていることだが、メキシコが壁の建設費用を払うことはない」

トランプ氏は26日朝、自身のツイッターで「壁の建設費用を払う気がないのなら、わざわざ訪米しない方がいい」などとペニャニエト氏を非難した。

アメリカは、メキシコに対し600億ドルの貿易赤字がある。北米自由貿易協定(NAFTA)が始まって以来やりとりは一方的で、非常に大きな数の...

雇用や企業が失われた。必要性が高い壁の建設費用をメキシコが支払わないなら、予定されている会談は中止した方がいい。

メキシコの有力政治家は25日夜に協議を重ね、ペニャニエト氏に、これまでにない敵意を見せ、メキシコ国民に多額の費用負担を求めるアメリカ大統領に対して毅然とした対応をするよう圧力をかけた。その結果、26日朝の会談中止という結論に至った。トランプ氏は、メキシコへ事業を移転させる大手企業を繰り返し非難している。

外交関係が悪化し、アメリカとメキシコの関係はこれまでにない最悪の事態を迎え、両国の親密な関係は危機的状況に陥っている。また、メキシコとの関係が損なわれれば、不法移民やメキシコの麻薬組織の取り締まりなどを実施するトランプ氏の政策への影響も予想される。

元アメリカ麻薬取締局の国際業務責任者であるマイク・ビジル氏はハフィントンポストUS版に、「これからとんでもないことになる」と語った。 「メキシコは第3位の貿易相手国だが、それ以上に我々は2000マイルの国境を共有している。それぞれの国から安全確保しなければならない」

物理的な壁は乗り越えたり、トンネルを通したりできるため、国境を越えてくる薬物には影響しないだろう、とビジル氏は語った。しかし、メキシコからの警備協力がなくなったら、違法薬物がさらにアメリカへ流入し、南米への軍事兵器の流出を拡大させる恐れがある。

「トランプ氏は、何十年にもわたって構築されてきた多くの同盟関係に悪影響を及ぼす」とビジル氏は語った。 「アメリカで、今後薬物の乱用が蔓延する光景が見えてくる」

トランプ氏が大統領選で繰り返しメキシコを非難しても、ペニャニエト氏は非難を控えてきた。しかし、アメリカがメキシコに敵意を剥き出しにしてきた今、ペニャニエト氏には会談中止以外の政治的な選択肢がなかった。

「ペニャニエト氏がアメリカ訪問を取りやめたのは、『メキシコが壁の建設費を払わないのなら来るべきではない』というトランプ氏のツイートにもとづいた合理的な判断だし、理解できる」と、ラテン・アメリカ・ワシントン・オフィス(WOLA)の研究員モーリーン・マイヤー氏はハフィントンポストUS版の取材に答えた。「アメリカとメキシコは重要な隣人であり、壁を築くのではなく、敬意、パートナーシップ、協力に基づいた関係を構築すべきだ」

一方、ペニャニエト氏の政策と北米自由貿易協定(NAFTA)を批判してきたメキシコ国立自治大学教授ジョン・アッカーマン氏は、「ペニャニエト氏がホワイトハウスと連携する方法を見つけることを期待している」と語った。

「ペニャニエト大統領が会談を中止したのは、メキシコ国内の状況を考えたからでしょう。ワシントンへ行ってしまったら、否応なしにトランプ大統領と直接対峙することになり、メキシコの野党や国民から高まる圧力を鎮めなければならなかったからです」と、アッカーマン教授はハフィントンポストUS版に語った。「ペニャニエト大統領が国内の不満を鎮める政策、トランプ大統領との同盟関係、財政や経済の地域的な利害関係を根本的に変えたということではありません」

トランプ氏は26日、共和党議員との会合で、会談中止の決定は双方の合意によるもので、ペニャニエト氏が決めたものではないと語った。

「つつしんで言わせてもらえば、メキシコがアメリカに対して公正な対応をしないのであれば、会談は有益なものにならない。だから私としては別の方法を考えたい。仕方がない」と、トランプ氏は語った。トランプ大統領のこの「つつしんで」という言葉づかいに、メキシコから軽んじられたという個人的な思いがにじんでいる。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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