メアリー・タイラー・ムーアさん死去 70年代に自立する女性を演じた名女優

オプラ・ウィンフリー「彼女ほど、私のキャリアに影響を与えた個人や団体はないと思います」

1970年代のテレビドラマや映画で活躍したメアリー・タイラー・ムーアさんが1月25日、コネチカット州の病院で死去した。80歳だった。

「本日、人々から愛された人気女優メアリー・タイラー・ムーアが、友人たちと33年以上連れ添った最愛の夫、S・ロバート・レヴァイン博士に看取られて、80歳でこの世を去りました。新時代を切り開いた女優、プロデューサーで、『アメリカ青少年糖尿病研究財団』の活動に熱心に取り組みました。メアリーはその笑顔で世界を魅了した勇敢で先見の明を持つ女性として、人々の記憶に残ることでしょう」と、ムーアさんの代理人マラ・バクスバウム氏が、ハフィントンポストUS版の取材に応じ声明を出した。

ムーアさんは1936年にニューヨークのブルックリンで生まれ、ロサンゼルスで育った。1960年代の連続ホームコメディー(シットコム)「ディック・ヴァン・ダイク・ショー」に出演し、世界的に有名になった。後に1970年代の人気シットコム「メアリー・タイラー・ムーア・ショー」で主演を務めた。この番組は未婚の働く女性が主役になったドラマの草分けとなった。ムーアさんが演じた役は、30歳の独身テレビニュース番組プロデューサー「メアリー・リチャーズ」だった。

自身の名前を冠した番組「メアリー・タイラー・ムーア・ショー」が実現したのは1970年だった。元夫のグラント・ティンカー氏と共同で「MTMエンタープライズ」というプロダクションを設立し、CBSに番組を売り込むことに成功した。「メアリー・タイラー・ムーア・ショー」は7シーズンにわたって放映され、エミー賞を29回受賞した。2002年に「そりゃないぜ!?フレイジャー」に破られるまで最多受賞記録だった。

この番組は、ムーアさんの演じる登場人物が男性の同僚と同じ給料を要求し、ピルを服用した点で視聴者の注目を集めた。そのため女性解放運動の礎となり、女性を妻と専業主婦の立場に押し付ける固定観念と戦う人々を勇気づける存在として認知された。

「メアリー・タイラー・ムーアほど、私のキャリアに影響を与えた個人や団体はないと思います」と女優オプラ・ウィンフリーは非営利・公共放送ネットワークPBSが最近放送した自身のドキュメンタリー番組で語った。

2002年のCNNインタビューで、「メアリー・タイラー・ムーア・ショー」で演じた登場人物がフェミニストだったか聞かれると、ムーアさんはためらうことなくこう語った。

「攻撃的にフェミニズムを主張することはありませんでしたが、フェミニストだったのは間違いありません。脚本家たちはいつもその点を意識していました。フェミニズムと関わらざるを得ない状況を作っていたのです」

ムーアさんは実生活でも女優業同様に尊敬を集めた。

「メアリーは実業家として自分の番組を見事に切り盛りしていた」と友人で「メアリー・タイラー・ムーア・ショー」の番組ディレクターを務めたアラン・ラフキン氏は自伝の中で述懐している。「メアリーは名上司だった。彼女ほど常に仕事にこだわるのは無理だが、メアリーが責任者だということを忘れる瞬間は1秒たりともなかった」

「メアリー・タイラー・ムーア・ショー」終了後もムーアさんは女優業を続け、1980年の映画「普通の人々」(ロバート・レッドフォード監督)では息子を亡くして嘆き悲しむ母親を演じ、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。最後の出演は「Hot In Cleaveland」で、「メアリー・タイラー・ムーア・ショー」で共演したベティー・ホワイトとヴァレリー・ハーパーも共演した。

RICK ROWELL VIA GETTY IMAGES

ムーアさんは動物愛護について積極的に発言しており、ニューヨーク市で飼い主のいない猫や犬の養子縁組イベントを毎年開催する団体「ブロードウェイ・バークス15」を設立した。さらに家畜虐待を防止する法律を制定するための運動に熱心に参加した。

「動物たちの人生を変えた人物として、歴史に名を残したいんです」と、ムーアさんは1997年の「アメリカン・テレビ・アーカイブ」のインタビューで語っている。

ムーアさんは33歳でI型糖尿病と診断され、糖尿病の副作用で近年は失明に近い状態で苦しんでいた。そのため糖尿病の治療法の研究を促進するよう訴え続け、アメリカ青少年糖尿病研究財団の国際部門長を務めていた。糖尿病を扱った回顧録「新しい人生: 生命、愛、そして、まさかの糖尿病」を2009年に出版した。

ムーアさんは息子のリチャード氏に1980年先立たれ、夫のロバート・レヴァイン氏に先立ってこの世に別れを告げた。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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