いつものことだが、彼女が謝るなんてことはない。
アメリカの歌手マドンナは、ドナルド・トランプ(DT)大統領就任式の翌日、1月21日に開催された「ワシントン・ウィメンズ・マーチ」に多くのセレブたちとともに参加した。このデモは、首都ワシントンだけでなく、アメリカ各地で行進する数十万人の女性たちと連帯して、全米およそ370カ所に波及した。
大統領選以来、トランプ氏への嫌悪感を公言してきたマドンナは、すべての人が「ウェイク・ザ・ファック・アップ(目を覚ます)すべき、政治的危機だ」として、情熱的にスピーチした。
「ウィメンズ・マーチが政治的に影響を及ぼすことはない」という当てこすりに対し、マドンナはシンプルなメッセージで反論した――「ファック・ユー」と。
マドンナは、詩人のW・H・オーデン氏の名言を引用して演説を終えた後、「エクスプレス・ユアセルフ」と「ヒューマン・ネイチャー」を歌った。しかし皮肉こそがマドンナの持ち味だ。彼女は演奏した曲を「DT(ドナルド・トランプ)」に捧げた。
演奏に入る前、マドンナは「新しい『DT』はホワイトハウスにいる。よく知らないけど、『D』は、ディック(男性器)でしょ」と語った。
この曲の後半に、彼女はこの歌詞を「ドナルド・トランプ、サック・ア・ディック」と言い換えた。歌詞の内容をはっきりさせたのだ。
マドンナのスピーチ全文は次の通り。
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ハロー、まだちゃんと意識はある? 自信はある? 私の声は聞こえてる? 世の中を変える準備は出来てる?
みなさんようこそ!愛の革命へ、反乱へ、そして新時代の独裁政治に対する「ノー」へ。いま危機的なのは、女性だけじゃなくて、社会の主流から取り残された人たちみんな。ユニークで多様性にあふれた人たちが犯罪者扱いされることだってある。こうやって、目覚めたらクソみたいな暗闇に連れ込まれてしまっている。
でもそれなのに、なんか快適だってみんな錯覚してるでしょ。正義が勝った、善が勝ったとみんなが思ってる。本当は、今回の選挙で勝ったのは善じゃないのに。だけど、最後にはきっと善が勝つと私は信じてる。つまり、今日という日があるのは、決してこれが終わりではないっていうこと。今日は記念すべき最初の1日、革命が始まった日。これは、自由であるための、自分らしくいるための、平等のための権利を勝ち取る闘い。この暗闇の中を、一緒に行進しよう。そして、その一歩ごとに、私たちは何も恐れていないこと、私たちが決して一人でないこと、私たちが絶対引き下がらないこと、私たちの結束が力になること、そして例えどんな相手だろうと真の連帯には勝ち目がないことを、噛み締めよう。
そしてこのデモが決して何の役にも立たないなんてバカにする人たちに。ファック・ユー。ファック・ユー。これは、変化の始まり。変化は人々に犠牲を要求するかもしれないし、変化は多くの人々に、人生でいろんな選択を要求するかもしれない。でも、それこそが革命でしょ。だから今日、みんなに答えてほしい。アー・ユー・レディ? 準備はできてる? そう、イエス、と言って。ウイ・アー・レディ、って。準備はできてるって。さあもう一回。ユー・アー・レディ。」
そう、私は怒っている。そう、めちゃくちゃ怒ってる。そう、ホワイトハウスを吹き飛ばしたいって、心の底から思ってる。でも、そんなことをしても何も変わらないってことも分かってる。絶望なんてしてられないでしょ。第二次世界大戦目前に、詩人のW・H・オーデンはこんな詩を残した。「私たちは、互いに愛しあうか、さもなくば死ぬかしかない」、って。
アイ・チューズ・ラブ、選ぶのは愛。みなさんはどっち? ほら、一緒に言って! ウイ・チューズ・ラブ。選ぶのは愛。ウイ・チューズ・ラブ。
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ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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