アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は1月11日の会見で、大統領選の公約に掲げていたメキシコ国境での壁の建設について、「私たちは壁をつくる。待てない」と述べ、単なるフェンスではなく壁の建設を早急に開始し、メキシコにその費用を払わせると改めて主張した。
当選後初の記者会見でトランプ氏は、実際に建設費用を支払うのはアメリカ政府だと認めた。しかし、メキシコに費用を弁済させると主張し、1年半以内に「おそらく」メキシコ政府との交渉をまとめられるだろうと予測した。
「壁は建設する」と、トランプ氏は言った。「メキシコ政府との交渉をまとめるのに、1年半ぐらいは待てると思う。正式に大統領になったら、即座に交渉を開始する。しかし、壁の建設は待てない」
言いかえれば、トランプ次期大統領は期限を設定し、壁建設が失敗となるかどうかの境界線をはっきりさせたことになる。
メキシコ政府は、国境の壁の建設費用を支払うつもりは全くないと繰り返し述べている。1月10日、メキシコのルイス・ビデガライ新外相は「絶対に払わない」と話した。
「そんな状況ではない。代わりにどんなにすばらしい貿易協定や投資、支援が得られるとしても、メキシコ国民の尊厳が大きく損なわれる」と、ビデガライ新外相は地元のテレビで述べた。
トランプ氏の会見を受けて、メキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領は外交官らに、トランプ氏が壁の建設費用を無理やり私たちに払わせようとしているが、決して協力しないと語った。
メキシコのニュースサイト、アニマルポリティコによると、ペニャニエト大統領は「私たちはアメリカとは違う。私たちが壁の費用を支払うつもりなどない」と述べた。「しかし、私たちは良好な関係を築くつもりだ。恐怖と脅迫によって企業がメキシコへ投資できないようにするのは断固拒否する」
トランプ氏は、「課税か、費用の支払いのいずれかで」メキシコ政府と協力できるだろうと強調した。しかし「おそらく支払いの可能性は低いだろう」と付け加えた。
その一方で、トランプ氏はメキシコ政府とメキシコ国民を尊敬していると述べた。しかしこうした発言は、大統領選に出馬した時に「メキシコの不法移民は麻薬や犯罪を持ち込んでいる。メキシコ人はレイプ犯だ」とメキシコを非難していることから、疑問視されている。
トランプ氏は会見で、「自分の企業で働いてくれているメキシコ出身の人たちの、目を見張るような素晴らしい働きぶりをよく知っているから、私はメキシコ人が好きだ」と述べ、その上「メキシコ政府は素晴らしい」と付け加えた。
「私は彼らがアメリカを利用してきたことを責めているわけではない」と、トランプ氏は語った。「我が国の政治家たちも、そのくらい賢明であればと思っている。今までメキシコは、アメリカを利用してきた。だからと言って、メキシコの議員や、大統領の方々を責めているわけではない。私が言わんとしていることは、こんなことが起きることを、許すべきではなかったということでだ。そしてもはや起こらないだろう」
トランプ氏が提案している国境の壁については、メキシコが建設費を弁済するかどうかよりもまず、事業計画上の問題が山ほどある。全長ほぼ2000マイル(約3218キロ)ある国境のうち、約670マイル(約1078キロ)の長さに及ぶフェンスを撤去する、とトランプ氏は既に述べている。トランプ氏は11日、フェンスについて尋ねた記者を窘めた。「フェンスではないと言ってるだろう、壁だ」と述べた。つまり既存のセキュリティーシステムであるフェンスを単に強化するだけでは話は収まらなくなってきていて、フェンスをすべて壁につくり代えなければならない。
しかし、フェンスの建設ですら、アメリカ政府にとって無謀な計画だった。
国境に沿った土地はほとんどが私有地だ。また両国の条約で、国境線となっているリオ・グランデ川の一部では建設を制限している。初期費用は議会による承認が必要であり、その額は数十億ドルに達するとみられる。
トランプ氏によると、次期副大統領マイク・ペンス氏が壁建設に取り掛かるためにさまざまな機関や議会から最終承認を得るために動いているという。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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