アメリカの情報機関を統括するジェームズ・クラッパー国家情報長官は1月5日、上院軍事委員会の公聴会で証言し、大統領選でロシアがサイバー攻撃をした証拠があると明言し、詳細な調査結果を詳述した機密扱いにならない報告書を来週の早い段階に公開する予定だと述べた。
バラク・オバマ大統領は2016年12月に、アメリカの選挙への干渉を目的とした海外からのハッキングについて2008年まで遡って詳細に調査するよう指示し、自身が大統領から離任する前に完了するよう要請した。クラッパー長官は情報機関は公聴会での証言に加えて、議員には機密扱いの情報を含む完全な報告書を来週報告する計画があると語った。
報告書は、2016年10月7日に民主党全国委員会(DNC)のメールのハッキングはロシアが主導したと結論づけた、国家情報長官室と国土安全保障省の声明に基づくものになりそうだ。
「我々はその声明に基づき、より毅然とした態度を示す」と、クラッパー長官はかつてない口調で証言した。
クラッパー長官は、アメリカ中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)、そして国家安全保障局(NSA)が準備した報告書の内容についての事前説明は避けた。しかしクラッパー長官は、情報機関がモスクワが選挙に干渉したことについて「複数の動機」を特定したと議員に話した。
通常は口が堅いクラッパー長官は公聴会で報告書に関して、「可能な限り、機密扱いの限界に挑むつもりだ。一般市民は可能な限り多くのことを知っているべきだからだ」と語った。
CIAとFBIの当局者筋によると、アメリカの情報機関は、ロシアの干渉がドナルド・トランプ次期大統領の勝利を援助することを狙ったものだと確信しているという。
クラッパー長官によると、大統領選のロシアの介入は多方面に及んだ。サイバー攻撃に加えて、プロパガンダ、偽ニュースの流布なども併用されたという。情報機関は、ロシアが投票集計を改ざんしたとは考えていない。「ロシアの活動が大統領選の結果に及ぼした全体的な影響を評価するのは、情報機関の権限外だ」と、クラッパー長官は述べた。
1月に退任するクラッパー長官にとって、委員会で証言するのはこれが最後になると思われる。公聴会は、情報機関とトランプ次期米大統領の間で緊張が高まる中行われた。ロシアのプーチン大統領との緊密な関係をアピールしているトランプ次期大統領は、ハッキングに関する情報機関の評価をはねつけ、ロシア政府に対して虚偽の証拠固めをしているとして、情報機関当局者を非難した。トランプ氏は1月6日、ロシアのハッキング活動に関する機密のブリーフィングを受ける予定だ。
2017年1月5日に、外国による大統領選介入に関する米上院軍事委員会の公聴会で証言するジェームズ・クラッパー国家情報長官と国家安全保障局(NSA)のマイケル・ロジャーズ局長。
委員会の議長を務めた共和党のジョン・マケイン上院議員は議員たちに「党派は脇に置いて」、今後のサイバー攻撃の防止と対策に共に取り組むよう促した。
「全てのアメリカ人はロシアによる我が国への攻撃を警戒すべきだ」と、マケイン氏は1月5日に述べた。「アメリカの国家安全保障上、外国の干渉なく自由で公平な選挙を行うことが最も重要だ」
上院の民主党議員は、大統領選の民主党候補だったヒラリー・クリントン氏敗北のダメージを引きずったままだが、公聴会を共和党攻撃のチャンスとして利用した。民主党のクレア・マカスキル上院議員は「次期大統領が情報機関を酷評することで、誰が利益を得たのか?」と質問した。
「懐疑的な見方と非難には違いがある」と、クラッパー国家情報長官は、過去の諜報活動の失敗を認めながら答えた。最もよく知られている失敗は、2003年のイラク戦争につながった諜報活動だ。「私は外国の同じ立場の人たちから、アメリカの情報機関への非難と受け取れることに懸念を表す言葉をたくさんもらった」
マケイン氏を含む共和党議員の一部は、ロシアのサイバー攻撃について厳しい調査を求めているが、共和党議員の中には情報機関の調査に懐疑的なトランプ氏の立場を支持するメンバーもいる。
共和党のトム・コットン上院議員は、プーチン大統領が、核兵器や弾道ミサイルを増強することを訴えたトランプ氏を支持するわけがないと述べている。コットン氏はさらに、諜報機関が他国の政治に介入するのは容易ではないと語った。
共和党のトム・ティリス上院議員は、干渉はそれほど大したものではなかったとの見方を示し、「アメリカは第二次世界大戦後、81カ国の選挙に何らかの形で関わってきた」と述べた。
マケイン氏は4日、上院外交委員会のメンバーである民主党のベン・カルダン上院議員と共に、ロシアをターゲットとした新たな制裁措置を考えていると記者団に語った。
アメリカ政府は2016年12月29日、サイバー攻撃への報復措置としてロシアに制裁を加え、ロシアの外交官35人をアメリカから追放した。
クラッパー長官は5日、制裁措置を支持し、初期対応としてサイバー攻撃に対する防衛能力を強化すると語った。
報復措置は反撃されるリスクをもたらすだろうと彼は付け加えた。「サイバー攻撃は核兵器のように見て、感じて、触れたり測定したりできるものではないから、阻止するのは困難だ」と、クラッパー長官は語った。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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