ドナルド・トランプ次期大統領は12月28日、フロリダでソフトバンクグループのアメリカ携帯電話会社「スプリント」など2社が「計8000人の雇用をアメリカに生み出すことになった」と語った。
トランプ氏は、フロリダにあるトランプ氏所有の「マー・ア・ラゴ・リゾート」で声明を発表し、ソフトバンクグループ社長の孫正義氏がスプリント社で5000人、そしてソフトバンクが出資を発表したベンチャー企業ワンウェブが3000人を新規雇用すると述べた。
「スプリントの幹部から電話があり、5000人もの雇用をアメリカに取り戻すと伝えられた」と、トランプ氏は述べた。「ほかの国からアメリカに戻す。そしてワンウェブという新しい会社は、3000人を雇う予定だ」
トランプ氏は「今起きていること、そして情熱、希望のおかげでスプリント・ワイアレスでの5000人もの雇用が外国からアメリカへ戻ってくる。そして、3000人の雇用がワンウェブで作られる」と述べた。しかし、今回の雇用は以前から約束されていたものの一部であり、トランプ氏が関わった証拠はない。
報道機関はすぐにトランプ氏がアメリカに仕事を取り戻したというニュースを流した。12月1日に空調大手キャリア社がメキシコに会社を移転しようとした際、次期大統領が介入して800人の雇用を守ったニュースも関連づけている。
トランプ氏の勝利宣言:スプリントはアメリカに5000人もの雇用を生み出す。
CNNマネーの見出し 12月29日 木曜日 午後9時23分
トランプ氏がアメリカ労働者に さらなる8000人の雇用を発表。
FOXニュースの見出し 12月29日 木曜日 午後9時23分
スプリントは5000人もの雇用をアメリカに戻し、ワンウェブは3000人の雇用を生み出すと発表。
CNBCの見出し 12月29日 木曜日 午後9時23分
スプリントは5000人の雇用をアメリカに戻すと、ドナルド・トランプ氏が発言。
マイアミ・ヘラルドの見出し。12月29日 木曜日 午後9時23分
「スプリントともう一つの会社が8000人を雇用するそうですよ。仕事を貰いましょう」と、FOXニュースのヘザー・ナウアート氏は28日、トランプ氏の発言を受けてコメントした。「彼が500人の雇用、5万人の雇用を発表するかどうかはどうでもいいのです。大事なのは、仕事を取り戻し、明るい希望を生む手助けをすることなのです」
「これは、プロセスの一環で、進歩なのです」と、FOXニュースのキンバリー・ギルフォイル氏は付け加えた。
MSNBCのピーター・アレクサンダー氏は、トランプ氏の大胆な行為を指して「天才マーケター」と呼んだ。
「しかし、これはドナルド・トランプ氏の利益になる。なぜなら、人々は彼がこの件に実際に影響を与えると信じるようになるからです」と、アレクサンダー氏は言った。
トランプ氏は「雇用を生み出した」と言っている。しかし、ポリティコによると、今回のアメリカでの雇用は、サウジアラビアの支援を受けて設立したファンドを利用するものとソフトバンクは明らかにしている。そのファンドはトランプ氏当選前の10月に設立されたものだった。この計画は、6日にトランプ氏と孫正義氏が会談した後で発表された。トランプ氏は、選挙前に進められていたこの投資計画も自分の手柄にした形だ。
「私のおかげで、この国で 5000の仕事ができるんだ」と、トランプ氏はマー・ア・ラゴの階段で記者たちに述べた。
28日のトランプ氏の発言の数時間後、政治ニュースサイト「ポリティコ」のトニー・ロム記者は「スプリント社によると、今日発表された5000人雇用は、孫正義氏が以前に表明していた5万人雇用の一部」とツイートしたが、トランプ氏は手柄を横取りし続けた。
一方でスプリント社のマルセロ・クラウレCEOは29日、Twitterでトランプ氏が大げさに宣伝した5000人の雇用は「新規のものだ」と述べた。
「憶測は止めてほしい。これは以前に発表していたスプリントの新規事業とは"一切"関係ない」と、クラウレCEOはツイートした。
トランプ氏の大統領報道官となるショーン・スパイサー氏は28日深夜、Twitterで次期大統領の主張をさらに誇張した。
やり遂げる! スプリント社のCEOはトランプに、彼の仲介で5000人以上の雇用をアメリカに戻し、さらに増やすと伝えた。
翌29日の朝、メディアはトランプ氏の巧妙なレトリックを説明できないまま、トランプ氏が雇用を取り戻したことへの賛美を続けた。
「ドナルド・トランプ次期大統領は再び約束を果たし、アメリカに多くの仕事を取り戻しています」と、29日朝のFOXニュースで、ナウアート氏は述べた。
「トランプ氏はスプリントとの契約を発表し、アメリカに約5000人の雇用を移転し、もう一つの会社は3000人の雇用を生み出します...これはインディアナ州から雇用の流出を防いだキャリアとの取引に続き...」
トランプ氏のコメントはいつも同じパターンだ。自分が全くかほとんど手をかけていない事柄を自分の功績とする。就任前のアメリカの経済状況もその例だ。トランプ氏は最近の消費意欲や株価の上昇を自画自賛するツイートを次々と投稿している。
ハフィントンポストUS版のダニエル・マランス記者はこう書いている。「こうしたツイートは、私たちがすでに知っているトランプを物語っている。トランプは当たり障りのない経済データを利用し、それを自分の偉大さの証明だと主張するのが好きなのだ」
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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