安倍晋三首相が12月27日午前(日本時間28日朝)、アメリカのオバマ大統領と共に日米開戦の発端地となったハワイの真珠湾を訪問し、真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊した。ニューヨークタイムズなどの海外メディアは、「歴史的訪問」として好意的に報じた。
アメリカのニューヨークタイムズは同日、「日本の首相が真珠湾を訪問し哀悼の言葉を捧げる」との見出しで、安倍首相の真珠湾訪問を報じた。
同紙は、安倍首相がアリゾナ記念館で発表した所感について、犠牲者に哀悼の意を示したが「謝罪の言葉はなかった」と伝えた。また、オバマ大統領が2016年5月27日に広島を訪問した際に発表したスピーチで、原爆投下について謝罪しなかったことについても言及している。
そうした背景を紹介した上で、同紙は「とりわけオバマ政権下の外交政策において、安倍首相はアメリカとの協力関係を築き上げた」と伝えた。
また、同紙はドナルド・トランプ次期大統領についても言及。2016年3月のインタビューで、トランプ氏は「日本が核兵器を保有することが、アメリカにとって悪い影響をもたらすとは断言できない」とコメントしている。同紙は、トランプ氏の発言が「日本の平和主義的な憲法と対照的である」とし、「日本はトランプ氏に対して深く狼狽(unnerved)している状態だ」と伝えた。
アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルは、安倍首相の所感はオバマ大統領が広島訪問の際に発表したスピーチとテーマが類似していたと述べた上で、謝罪について言及することはなかったと報じている。
ワシントンポストも過去の行為について謝罪をしなかったと伝えるも、安倍首相は犠牲者の魂に哀悼の意を捧げ、「日本が平和の道を歩み続けることを誓った」と好意的に伝えた。
アメリカのCNNは、安倍首相の真珠湾訪問を「歴史的訪問」だと報じた。
また、同メディアは、75年前の真珠湾攻撃を近くで目撃していたというロバート・リー氏(95)のインタビューも掲載。「安倍首相の真珠湾訪問は、日米関係の『癒しの最高潮』だ」と語るリー氏の声を伝えている。
同メディアによるインタビュー内でリー氏は、安倍首相の訪問を「世界にとって大変意義があることだと思う」と歓迎した。リー氏は75年前の真珠湾攻撃を経験した際、日本に対して『巨大な怒り』を感じたが、その怒りはとうの昔に消え去ったという。日本人の血を引く友人らと共に育ってきたというリー氏は、「憎しみを心に抱き続けることは、自分自身をいずれ破壊してしまう」と語った。
アメリカ国外のメディアでも真珠湾訪問は広く報道された。
イギリスのBBCは、安倍首相の真珠湾訪問は「画期的な出来事」と伝えた。同メディアは、安倍首相が発表した所感の一部を紹介した上で、「予想通りだが、真珠湾攻撃に対して謝罪の言葉はなかった」と伝えている。
中国国営通信の新華社は、真珠湾訪問は「トランプ次期大統領の政権下でも日米同盟を強固していくための手段と捉えられる」と報道している。
真珠湾のアリゾナ記念館で慰霊する安倍首相とオバマ大統領
所感を発表する安倍首相
▼画像集「真珠湾75年式典」が開きます▼
【※】スライドショーが表示されない場合は、こちらへ。