沖縄のエイサー、福島がルーツだった!? いわきのお寺で太鼓づくりのワークショップが開かれたわけ

福島県いわき市の菩提院で、沖縄の伝統舞踊「エイサー」で使う太鼓「パーランク」をつくるイベントが開かれた。主催者によると、どうしてもこの寺院でワークショップを行いたい理由があったという。いったい、どういうこと?
The Huffington Post

福島県いわき市の寺院「菩提院」で12月17日、沖縄の伝統舞踊「エイサー」で使う楽器をつくるワークショップが開かれた。主催したのは、いわき市で障害者サポートに取り組む団体「ソーシャルデザインワークス(SDWS)」。どうしてもこの寺院でワークショップを行いたい理由があったという。

パーランクづくりを楽しむ子供たち

■もともとは、どこで開催しても良かった

実は、もともとこのイベントは、どこで開催しても良かった。ただ、参加条件の「ごちゃまぜ」の理念に共感する人が集まればよいものだったと、SDWSの松岡真満さんはハフィントンポストに語った。

「ごちゃまぜ」とは、SDWSが目指す理念で、年齢、性別、国籍、宗教の違いや障害の有無などに関係なく、いろいろな人が一緒にいるのが当たり前の世界を意味する。

「障害者福祉に関係するイベントとなると、障害を持っている人だけ、または、障害者をサポートしている人だけしか参加できないような雰囲気のものが多い状態です。そういった閉じられた世界ではなく、障害がある人もそうでない人も意識せずに楽しめるような『ごちゃまぜ』の世界になれば、障害者福祉への理解も広がるのではないかと考えました。

私たち大人は、障害ということにとらわれがちですが、子供たちはあまり気にせず、ひとりひとりの友達として接しているんです」

そう、松岡さんは話した。

パーランクづくりの説明をする松岡真満さん

■なぜ、エイサーの太鼓づくり?

ごちゃまぜで楽しめるイベントのひとつとして選ばれたのが、エイサーで使う片張り太鼓「パーランク」をつくるワークショップだ。白い「パーランク」の元素材に色を塗ったり、シールや折り紙を張ったりして、参加者が思い思いの太鼓をつくる。これなら、幼児から大人まで、障害のある人もない人も夢中になって参加できる。

「パーランク」の元素材

パーランクづくりのワークショップは、もともと神奈川県でダウン症のある人との交流などをしている一般社団法人「ヨコハマプロジェクト」が行っていたものだ。ヨコハマプロジェクトの代表を務める近藤寛子さんによると、パーランクの元素材はダンボールなどが材料で、同団体が日本各地の障害者施設に発注して、つくってもらっているという。

近藤さんは、「パーランクだけでなく、Tシャツなどを各地の障害者施設に発注することで、障害者の働く場所づくりにもつながっていると思います。直接サポートをするだけがサポートではありません。それ以外にも、障害がある人とつながる方法はたくさんあります」と話した。

SDWSがいわき市でのパーランクづくりイベントを企画したのは、松岡さんらがヨコハマプロジェクトのワークショップに参加したのがきっかけだ。このワークショップなら「ごちゃまぜ」の理念で実施できる。松岡さんらは近藤さんらに助けを求め、ヨコハマプロジェクトからパーランクの元素材の提供を受けることになった。

近藤寛子さん(一番左)とワークショップに参加したある家族

■ワークショップにぴったりの場所があった

イベントをいわき市のどこで開催するか。場所探しを始めた松岡さんにヨコハマプロジェクトのメンバーらから「ぴったりの場所がある」と勧められたのが、菩提院だった。というのも、菩提院はエイサーのルーツではないかとされる伝説がある場所なのだという。復興ボランティアなどの活動を通じて、たまたまこの寺のことを知っていた人がいたのだ。

菩提院は1599年、踊り念仏を広めた袋中上人が初めて開いた寺だ。その後、袋中上人は当時中国にあった明へ渡ることを決意。しかし、上陸が許されず沖縄に漂着する。

浄土宗の公式サイトによると、袋中上人は沖縄でも浄土宗を布教。踊りと歌を浄土の教えにのせた念仏が、沖縄のエイサーの成立に大きな影響を与えたと言う説があるという。

「ぜひ、この場所でワークショップを開きたい」。

松岡さんが場所の提供を依頼すると、菩提院も快く引き受けてくれた。

菩提院の霜村真康・副住職。この日は写真係を務めていた

イベントには幼児や小学生、その保護者や知的障害がある人など、0歳〜60代までの約85人が集った。初対面の参加者同士が協力し、色とりどりのパーランクができあがった。いわき市出身で東京音楽大学に通う大学生らもボランティアで参加。パーランクの歌や踊りを、参加者に教えた。

できあがったパーランクの例

南相馬市から1歳の障害児とともにイベントに参加した30代の女性は、「私たちの家族は、子供の障害を隠そうとは思っていません。ごちゃまぜのイベントのように、誰でも気軽に参加できるイベントがあることが嬉しいです」と話した。

また、菩提院の霜村真康・副住職はハフィントンポストに、「ごちゃまぜのイベントをやるのは初めてだった」と明かした。

「本来、寺というのは縁あるいろいろな人が等しく集まって、色々なことが出来る場所。考えてみれば、ごちゃまぜというのは、寺にとっては当たり前のことなのかもしれません。寺だけでなくいろいろな場所で、ごちゃまぜが広がるといいですね」

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