福島いじめ「大人社会を映し出している」避難者が訴え

「大人社会を映し出している」
Yuriko Izutani / HuffPost Japan

東京電力福島第1原発事故によって、福島県から避難した子どもたちへのいじめが横浜市や新潟市などで相次いで明らかになった問題を受けて、避難者らが12月22日に東京・霞ヶ関の司法記者クラブで記者会見を開いた。「胸をかきむしられる思い」と、辛い環境にある子どもたちの苦しみを訴え、また、いじめが起こる背景として「大人社会を映し出している」などと指摘した。

会見を開いたのは、避難者約1万人が原告となり、各地で国や東電の責任を問うている、原発被害者訴訟原告団全国連絡会の代表者ら。

「いじめの連鎖に深い悲しみと怒りに打ちひしがれれいます。残念なことに、報道されたいじめは氷山の一角です」とする声明を発表した。

連絡会が把握している子どもへのいじめでは、過去に以下のような事例があったという。

・避難先から福島に戻り、新しい学校に転校したら少し新学期から遅れたために、いじめにあった。不登校になり転校した。

・福島県民とわかると差別されるので出身地を言えない。

・「福島から来ました」と挨拶したら「あなたとはおつきあいできません」と言われた。

・「タダで東京に住んでいるのか」と言われた。

・お菓子をおごらされた。

■報道されたいじめは氷山の一角

どのぐらいの避難者がいじめの被害にあっているのか。

原告団連絡会の佐藤三男事務局長は、子どもがいじめられているという報告について「10件の陳述書のうち4〜5件はそのような話がある」。

また、米倉勉弁護士は、「原告団の9000人以上いる避難者のうち、ほとんどの人が心ない言葉をかけられた経験がある。避難していることを喋れないという話も多い。皆、避難者であることを隠している。子供の事例も推し量れると思う」と話した。

記者会見で自身の経験を話した、松本徳子さんは、娘と福島県郡山市から自主避難し、神奈川県内で民間の借り上げ住宅に避難している。最近になって、高校三年生になった娘から「福島から来たというだけで偏見の目で見られた」とポツリポツリと明かしたという。

この6年間は大変でした。(区域外からの避難のため)国や東京電力には「勝手に避難した」と(して賠償金が受けられないなど)見放されている。その一方で、「避難しているんだからお金持ってるんだろ?」と罵倒する声が流されて耳に入ってくる。

慣れない場所で、私も必死で仕事をしながら、狭い部屋で暮らしています。だから、そんな母親をなるべく心配はさせたくないと娘は思って、これまで私には言わなかった。そういう子どもがたくさんいるんです。子どもたちも傷ついていることを知ってほしい。

また、同じく福島県郡山市から子ども2人と大阪市に避難している森松明希子さんは、大人社会を映し出していると指摘した。

福島の子へのいじめがなぜ起こるか、それは大人社会を映し出しているんだと思います。家庭での発言やテレビでの報道などから、(いじめる側、いじめられる側の)子供たちは様々な影響を受けている。それが、「賠償金もらっているだろう」とかの発言になってしまう。


私は損害賠償を求める裁判をしているのですが、何十人の原告をまとめて損害を積み上げると、報道では「何億円の賠償を求めて提訴」となるんです。そうすると、何か私がすごく多額のお金を要求しているかのように思われてしまう。実際はそんなことはないのに。

■自主避難者の住宅支援打ち切りへの懸念

横浜市、新潟市で発生したいじめは、共に自主避難した家庭の子が被害に遭っていた。

福島県では避難指示区域に住んでいた人の他にも、被ばくを避けるためなどの理由で多くの人が全国各地へ自主避難を続けている。その数は2015年10月時点で約1万3000世帯、2万5000人にのぼる。

福島県からの避難者は、発生直後に全県が災害救助法の適用となったため、避難指示区域内外を問わず、仮設住宅が無償提供されている。しかし、福島県は自主避難者への住宅支援を2017年3月末で打ち切るとの方針を発表した。

福島県いわき市から東京に自主避難している鴨下祐也さんは、こうした支援打ち切りで再び引っ越しすることになった子どもは、いじめが発生しやすい転校を強いられることにつながる懸念があると訴えた。

すでに子どもたちは複数回の転校をさせられている。なんとか今の比較的安定した生活を、5年以上かけて作り上げてきた。自主避難への支援が打ち切られれば、また強制的に転校を強いられる。親としてはやりたくない。

転校先で、子どもは福島出身であることを明かすのか?それとも隠して、いじめを避けるのか。新たに厳しい選択が迫られる。支援打ち切りは、単なる住居問題だけでなく、いじめとつながる生活破壊だとお伝えしたい。

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