中国企業による買収に「待った」が、かかった。ドイツの半導体製造装置メーカー「アイクストロン」のアメリカ国内にある子会社を中国企業が買収しようとしていたが、オバマ大統領が大統領令を発して阻止した。買収対象に軍事利用が可能な技術が含まれており、アメリカの安全保障の脅威になることが禁止の理由。ブルームバーグなどが報じた。
アイクストロンは1983年にドイツで創業。ヘルツォーゲンラートに本社を置き、イギリスやアメリカ、中国、日本など海外にも進出している。発光ダイオード、レーザー、太陽電池などの製造を得意とするが、その技術は、衛星通信やレーダーなど軍事転用が可能なものだ。
大統領令によると、オバマ大統領は対米外国投資委員会(CFIUS)の判断を受けて買収を禁止した。ニューヨーク・タイムズによると、ホワイトハウスが安全保障リスクを理由に海外の買い手による投資を拒否するのは、3件目。1990年にジョージ・H・W・ブッシュ大統領が中国企業による航空会社の買収を禁じたほか、2012年にはオバマ大統領が、オレゴン州の風力発電プロジェクトを、海軍施設に近すぎるという理由から、中国企業への売却を禁じていた。
■アイクストロン買収はドイツでも阻止されていた
子会社を買収しようとしていたのは、投資会社「福建グランド・チップ・インベストメント・ファンド」(FGC)。FGCはドイツにある子会社グランド・チップ・インベストメントを通じて、アイクストロン買収を進めようとしていた。5月には6億7000万ユーロ(約807億円)でアイクストロンの買収に合意。アイクストロンの経営陣も賛同した。
この買収でアイクストロンは中国市場において、新規顧客を開拓できるなどとみられており、逆に買収がなければ、アイクストロンにはリストラが必要だとされていた。
ニューズウィークによると、このときアメリカはドイツ政府に対し、買収によって中国は軍事転用可能な技術を手に入れることになるなどと警告していたととされる。これに対してドイツ政府は、この時の決定はアメリカの精査とは無関係だとコメントした。
10月の買収承認取り消しの後、アイクストロンはある大型の注文契約を落とした。ニューヨーク・タイムズによると、契約を破棄したアイクストロンの顧客は、FGCや中国政府系ファンドと関係のある企業だとされる。