フォトショップ依存文化に反対する ―― タイヤメーカーのピレリが制作する有名な「ピレリカレンダー」2017年版のテーマは、今年も強いメッセージを放っている。
「エモーショナル」というタイトルで3度目のピレリカレンダー撮影に挑んだのは、写真家のピーター・リンドバーグ。ヘレン・ミレン、ケイト・ウィンスレット、ユマ・サーマン、ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーアら、名だたる女優の姿を、修正せずに掲載した。
ユマ・サーマン(PIRELLI/PETER LINDBERGH)
「カレンダーが目指したのは、女性たちの本当の姿を写し出すこと。雑誌にあふれているような、手を加えた中身のない姿にはしたくなかった」と、リンドバーグはハフィントンポストUK版に語った。
彼が選んだモデルは、高級ファッションなどの広告にも登場する女優たちだ。その理由を「彼女たちの写真は、普段は修正されている。そんな女性たちの本当の姿を見せることで、写真がより力を持つ」とリンドバーグは述べた。
ニコール・キッドマン(PIRELLI/PETER LINDBERGH)
ピレリカレンダーは伝統的に、スーパーモデルやセレブのヌードや、セクシーさ前面に押し出す写真を採用してきた。しかし1年前、2016年のピレリカレンダーを撮影した写真家アニー・リーボヴィッツは、様々な体型や年齢の女性をモデルとして選び、彼女たちの「強くて自然な美しさ」を捉えた。
2017年のカレンダーも、ただ単にヌードを撮影するではなく、被写体の「魂を露出する写真を撮った」という意味で、ピレリカレンダー2016同様、伝統を破った。
「これは、別の形のヌード写真です。身体よりも大事な部分の」とリンドバーグは語っている。
ジュリアン・ムーア(PIRELLI/PETER LINDBERGH)
たとえば、リンドバーグが撮ったケイト・ウィンスレットの写真は、手にクロースアップしている。それは、「女性は若く見える方が美しい」という考え方に対する反対表明だ。
「ピーターに、手の甲を撮って欲しいと頼みました。40歳の私の手は、30歳の時や20歳の時とは違います。私はそれを眺めるのが好きです」
「私たちは、実際の年齢より若くて美しい40歳、生き生きとした50歳を期待されています。あるがままの40歳、50歳、60歳でいてはいけないでしょうか?」とウィンスレットは話した。
ロビン・ライト(PIRELLI/PETER LINDBERGH)
ユマ・サーマンは、リンドバーグが目指す「厳しくて間違ったスタンダードにとらわれない女性」は若い世代に重要なメッセージを伝えると称賛した。彼女自身も、自分の子供に母が自分らしい姿で歳を重ねていく姿を見て欲しい、とカレンダー発表の記者会見で語った。
写真の修正は、女性の顔から「経験」を取り除くだけでなく、不可能な美の基準を作り上げる、とリンドバーグは考えている。ピレリカレンダー2017で彼が目指したのは、現代の美の基準に抗い「美しさとは一体なんなのか」を考えてもらうこと。
リンドバーグにとって、それは「個性」「勇気を持って自分らしくあること」そして「美しい心」だ。
ハフィントンポストUK版に掲載された記事を翻訳しました。
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