アメリカのドナルド・トランプ次期大統領が次期中央情報局(CIA)長官に指名した共和党のマイク・ポンペオ下院議員が11月18日、任命を受諾すると発表した。
ポンペオ氏は受諾にあたって、次のようなコメントを出した。
「トランプ次期大統領の下で、アメリカの安全を維持する職務に就く機会を与えられたことを名誉に思います。また、アメリカ国民の安全を守るため日々努力し続けているCIAの勇士たちと、共に働けることを楽しみにしています」
■ポンペオ氏はどんな人物なのか?
ポンペオ氏は陸軍士官学校を卒業し、航空関連企業を設立して成功を収めた。2010年、当時勢いを増していた保守系の草の根運動「ティーパーティー」の支援を受け下院に当選。アメリカとイランの核合意に反対する議員の急先鋒としても知られる。
下院では情報特別委員会に所属。2012年9月、リビア東部の都市ベンガジで大使ら4人が死亡したアメリカ領事館襲撃事件に関する特別委員会の一員でもある。このベンガジ委員会は事件をめぐり、当時のヒラリー・クリントン国務長官とオバマ政権を批判してきた。
また、ポンペオ氏は、アメリカ国家安全保障局(NSA)と同局による違法な情報収集活動を擁護している。NSAの情報収集活動は、2013年に同局職員だったエドワード・スノーデン氏が暴露した。ポンペオ氏は当時、「私は、(NSAの)情報収集活動は、合法、合憲であり、イスラム過激派のテロを打倒する最重要任務に必要なことだと確信している」と記していた。
■「拷問」と称された「強化尋問」を支持
ポンペオ氏は、CIAによる「強化尋問」、いわゆる「拷問」の必要性を擁護し、2014年ごろその名がアメリカ国内に知れ渡った。「強化尋問によって我々が得た情報は貴重なものだ。オサマ・ビンラディン容疑者確保の直接的な要因になったからだ」と、ポンペオ氏は2014年12月にラジオ番組の司会者ヒュー・ヒューイット氏に対して語った。
また、イラク戦争時にCIA職員が作成した「強化尋問テクニック」で、アメリカ兵が捕虜を拷問したことを擁護しなかったオバマ大統領を批判した。
「(オサマ・ビンラディンが殺害された)あの晩のシチュエーションルームの写真を、オバマ大統領が公開したのは素晴らしいことだ。しかし、彼は実際に作戦を実行した兵士たちに背を向け、擁護しなかった」
拷問は、アメリカ法と国際法の両方に違反しており、何も効果をもたらさないとされている。2009年、オバマ大統領は就任2日目に大統領令を行使、CIAによる強化尋問を禁止した。
マイク・ポンペオ氏(2012年撮影)
■イラン核合意に反対
ポンペオ氏は、CIAの強化尋問の一件だけではなく、イラン核合意に反対したことでも注目を浴びた。
イラン核合意とは、イランの核開発能力の減少を目的としたもの。2015年夏、最終合意に向けて交渉が続けられていたが、ポンペオ氏とトム・コットン上院議員は、核計画を監視する国際原子力機関(IAEA)とイランが「裏取引」を行っているとして非難した。オバマ政権はイランとIAEAの間に非公式な会談があったことは認めたが、その内容は戦略的なものではなく技術的なもので、アメリカと同盟国に脅威を与えるものではないと述べた。
アメリカの専門家らは非公式会談について、この手の交渉に関しては標準的だと述べたが、ポンペオ氏とコットン氏は、技術的合意の内容を精査すべきだと主張。2015年7月にポンペオ氏は、ワシントンポストに「まったく受け入れがたいことだ」などと語った。
「実際の合意の全容を知らない議員が、どうやって票を投じるというのだ」
トランプ氏もイラン核合意を強く批判しており、白紙に戻す計画もあると話している。
■イスラム教徒への監視強化を支持か
ポンペオ氏は、イスラム過激派によるテロの脅威に対して過剰な懸念を抱いているという点でも、トランプ氏と共通している。
例えば、2013年に起きたボストンマラソン爆破テロではイスラム過激派は関与していないとみられているが、ポンペオ氏はイスラム教の指導者たちが犯行に関わっている可能性があると批判。議会ではこう発言した。
「この20年間にアメリカで起きたテロリストによる攻撃は、信仰の名のもとに実行されてきた。アメリカ政府は沈黙し続け、それによって、アメリカ国内にいるイスラム教の指導者たちは、テロ行為に関与できる状態にいた。なにより重要なことに、今後も彼らによる犯行は続いていく可能性がある」
トランプ氏は、テロ行為の責任はイスラム教徒全体にあると主張。これまで様々な形で、イスラム教徒がアメリカへ入国するのを禁止する計画を立てていると繰り返し発言してきた。
CIAのトップにポンペオ氏が就任することで、国内外のイスラム教の礼拝堂やコミュニティへの監視が強まると考えられる。
ハフィントンポストUS版に掲載されたものを翻訳・編集しました。
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