感謝祭まっただなかのアメリカで、アメリカ先住民を含むノースダコタ州の住民と警察の間に衝突が起き、約300人が負傷した。
毎年11月第4木曜日は、「サンクスギビングデー」や「七面鳥の日」とも呼ばれる、アメリカ・カナダの代表的な祝日だ。感謝祭には約400年もの歴史がある。1621年秋、アメリカ先住民とイギリスからやってきた入植者が、共に収穫を祝い、お互いを暴力から守る目的で感謝祭は始まった。
そんな感謝祭の最中、ノースダコタ州では、先住民が主導するデモ隊と警察との間に大きな衝突が起きた。現地では、石油パイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」の建設をめぐって、先住民が数カ月に渡ってデモ活動を続けていた。
スタンディングロック・スー族が率いるデモ隊は、パイプラインの建設によって水源が汚染され、彼らの聖地が破壊されると主張を続けていた。
抗議するデモ隊の様子。Facebook上で呼びかけが行われ、多くの参加者が集まった
現地時間11月20日夜、デモ隊と警察の衝突が激化した。ワシントンポスト紙によると、デモは10時間にもおよび、約300人のデモ隊参加者が負傷したという。スタンディングロック・スー族の人々は、警察による催涙ガスやゴム弾、放水銃の攻撃を受けた。26人が頭部や四肢に重症を負い、マイナス5度の気温の中で放水を受けたことによる低体温症で病院に運ばれた。
デモ隊と警察間の衝突は10時間続いた
「これは、まぎれもなく戦争行為です」
スタンディングロック・スー族の代表フランク・サンチェス氏は、ハフィントンポストUS版のインタビューに対して答えた。
石油パイプラインは、ノースダコタ州からイリノイ州へ原油を輸送するために、3.7億ドル(約415億円)の予算をかけて建設される。パイプラインは、スタンディングロック・スー族の居留地近くにあるミズーリ川を横切って建設される予定だ。この開発によって水源が汚染される可能性があるとして、先住民たちは抗議デモを開始した。
デモに参加する女性
アメリカ政府は、このパイプラインは最も安全かつ効率的に原油を輸送できる方法だと説明しているが、デモ隊は「スタンディングロック・スー族ら先住民の居留地を侵害しない」と約束した条約(フォート・ララミー条約)に反していると主張。
自らを「水の保護者(water protectors)」と表現するデモ隊とノースダコタの警察当局の衝突は、20日に沸点に達した。デモ隊は、パイプライン建設地付近で封鎖されていた橋の突破を試みた。押し迫るデモ隊を止めるため、武器が使用された。武器の使用について、モートン郡保安局は、デモ隊が暴力的になったためだと説明している。
長い間経済的に困窮してきたスタンディングロック・スー族のサンチェス氏は、建設工事のため封鎖されている橋は、居留地に向かうための主要な移動経路であると話す。また、抗議者たちは何世紀にもわたって維持してきた土地と水を守ろうとしているだけだと語った。
「私は自分の土地で、戦争捕虜になった気分だ」
サンチェス氏はそう語った。
「そうとしか言いようがない。私たちには狩りをし、魚を釣り、植物を採る権利がある。今までずっとそうやって生活してきた。私たちの暮らしをこれからも続けていくには、有刺鉄線のフェンスや、"立入禁止"と書かれた看板を取り除く必要がある」
サンチェス氏は今週、スタンディングロック・スー族の代表としてワシントンD.C.に赴き、アメリカ政府に対してロビー活動を行った。彼は、1851年にフォート・ララミー条約に調印した人物の直系の子孫だ。この条約で、アメリカ政府は5州の一部をスー族に譲渡し、外部の人間がスー族の領地に侵入することを厳しく制限する規制に同意した。
しかし、サウスダコタ州で金が発見された1877年、アメリカ合衆国議会はすぐさまその協定を破った。金の鉱脈が見つかったブラックヒルズ山地を政府のものにし、その後も政府による土地の収奪は続いた。
「この問題は、何年も前に決着しようと思えばできた。だが、私たちには弁護士を雇うお金もない」
サンチェス氏は嘆く。
アメリカ政府は、この問題をふまえ、パイプラインの建設作業を一時的に中断している。アメリカ陸軍工兵隊は、スタンディングロック・スー族の土地で建設を進めるかどうかの決定にはもう少し時間が必要だと述べた。
ハフィントンポストUS版に掲載されたものを翻訳・編集しました。
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