内之浦から打ち上げられるSS-520の初号機(1998年2月5日)
日本の宇宙航空開発機構(JAXA)が、世界一小さな衛星打ち上げロケットを開発した。JAXAの開発担当者は11月22日の会見で「打ち上げは今回限りを予定しているが、民間と広くノウハウを共有したい」と語っており、日本の小型ロケット開発に拍車がかかりそうだ。
このロケットは「SS-520 4号機」。二段式の観測ロケット「SS-520」を三段ロケットに改造したもので、全長は約9.5メートル。現在、JAXAが運用している衛星打ち上げロケットで最も小型のイプシロンロケットの半分以下のサイズとなっている。2017年3月までに、鹿児島県・内之浦のロケット発射場から打ち上げられる。
搭載するのは、東京大学で開発された超小型衛星「TRICOM-1」だ。重さはわずか3キロだが、地上から送られる電波を収集する機能のほか、地表撮影用のカメラを備えている。
11月22日、報道陣に公開された超小型衛星「TRICOM-1」。ロケットの3段目に装着されている
■超小型衛星専用の打ち上げロケットとは?
現在の宇宙開発では、重さが数トンの人工衛星を打ち上げる大型ロケットが主流だ。技術の発達で重さ数キロの超小型衛星も開発されたが大型衛星に相乗りする形でしか打ち上げることができず、非効率さを指摘する声も出ていた。そこで、超小型衛星に合わせた超小型ロケットが世界的に望まれるようになっている。
国内でも堀江貴文さんがスポンサーとなっているインターステラテクノロジズ社が、小型液体燃料ロケットの打ち上げを目指すなど、超小型衛星打ち上げ専用ロケットをめぐって、民間企業の研究開発が盛んとなっている。大型ロケットに比べて、打ち上げ費用などを大幅にコストカットできるのが特徴だ。
今回の打ち上げは経済産業省が公募した宇宙開発事業の実証試験となり、同省が4億円を出資してる。打ち上げ費用は通常の観測ロケットと同じく2〜3億円と見られており、イプシロンロケットの30億円と比べてはるかに安上がりだ。
JAXAは22日、神奈川県相模原市内の施設で会見を開いた。JAXA宇宙科学研究所の羽生宏人(はぶ・ひろと)准教授は「SS-520を改造すればミニ衛星を搭載できることは以前から分かっていたので、民間企業から影響を受けたわけではありません。次回以降の打ち上げ予定はないが、研究者の立場としては、今回検証する技術やノウハウを民間と共有して広く使っていただけたらと思っています」と話していた。
1998年に打ち上げられた「SS-520」初号機の組立て作業
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