マイク・ペンス次期副大統領が11月18日、ニューヨークのミュージカル観劇後に出演者から「アメリカの価値観を守って」と呼びかけられたことに、ドナルド・トランプ次期大統領が激怒。Twitterで「出演者は謝罪せよ」と糾弾している。
「ハミルトン」はアメリカ建国の父の1人、アレクサンダー・ハミルトンの生涯を描いたミュージカルで、白人のキャストが少なく、ヒップホップの音楽とダンスで構成されている。2016年のトニー賞では作品賞など最多の11部門を受賞した人気ミュージカルだ。
ペンス氏がニューヨークのリチャード・ロジャース劇場で「ハミルトン」を観劇しようと来場したところ、観客からは大きなブーイングとまばらな拍手が起こった。カーテンコールで、第3代副大統領アーロン・バーを演じた黒人俳優ブランドン・ディクソンが、舞台上からペンス氏にメッセージを読み上げた。
「ペンス様、あなたにメッセージがあります。最後まで聞いていただくことを願います。
副大統領に選ばれたペンス様、あなたを歓迎します。そして『ハミルトン・アメリカン・ミュージカル』にご来場いただいたことを心より感謝申し上げます。
ペンス様、私たちは多様なアメリカにいます。私たちアメリカ人はあなた方の新政権が私たちを、私たちの地球を、私たちの子供を、私たちの親を守ってくれないのではないか、そして私たちを擁護せず、奪うことのできない権利を守ってくれないのではないかと危機感をつのらせ、不安を抱えております。
しかし私たちは、あなたがこのショーに感銘を受け、アメリカの価値観を守り、私たち全員のために尽くしていただくことを心から願います。私たち全員にです。
男性、女性、異なる人種、異なる信条、そして異なる出自のさまざまな人々によって語られてきたこの素晴らしいアメリカのストーリーを(歓声で聞き取れず)重ねて心より感謝申し上げます」
ペンス氏はすでに席を離れていたが、舞台の外の廊下でディクソンのメッセージを聞いており、笑顔で退場したという。
「ハミルトン」の声明を読み上げたブランドン・ビクター・ディクソンに聞いたところ、ペンス氏はオーケストラセクションの外側にある廊下に立っていて、声明を全部聞いていたという。
ディクソンはペンス氏に観劇のお礼を述べた上で、丁重に声明を読み上げ、観客からは大きな拍手が巻き起こった。
しかし、この一件に激怒したのがトランプ氏だった。トランプ氏は19日、「ペンスが嫌がらせを受けた。劇場は謝罪しろ」とツイートした。
私たちの素晴らしい次期大統領マイク・ペンスは昨夜劇場で、「ハミルトン」のキャストに嫌がらせを受けた。現場にカメラもあった。こんなことはあってはならない!
劇場は常に安全で、特別な場所でなければならない。ハミルトンのキャストは昨晩、とても善良な男マイク・ペンスにとても無礼なことをした。謝れ!
ケリーアン・コンウェイ選対本部長もTwitterでペンス氏はブーイングを浴びるべきでなかったと批判した。
これはその通り。マイク・ペンスには、尊敬を受け、甥や娘さんと一緒に平和な夜を過ごす権利があるはずだ。
メッセージを読み上げたディクソンは、トランプ氏にリプライした。
トランプ様、これは会話であって、嫌がらせではありません。立ち止まって聞いていただいたペンス様にも感謝致します。
それでもトランプ氏は怒りが収まらず、キャストは「とても無礼だ」と再びツイートした。このツイートはその後削除された。
偉大な次期副大統領のマイク・ペンスに対して、なんて無礼で侮辱的な扱いなんだ。セリフも覚えられなかったのだろう
笑える。彼は何でこれを削除したの。
大統領を含め、主要な政治家が公の場でブーイングを浴びるのは異例のことではある。しかしトランプ氏は、批判はやり過ごさないという個人的な哲学があるようだ。
「成功するためにすべきことは、誰かが攻撃してきたら、奴らが思っている以上に激しく、5倍やり返すんだ」と、トランプ氏は2012年に発言している。
「それで五分五分になる。五分五分だ。そうする理由がとても重要なんだ。そうしなければいけない理由は、誰かが攻撃してきた時、奴らが優位に立てなくなるようにはっきりと警告するんだ」
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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