スタジオジブリの長編アニメーション作品『猫の恩返し』が11月18日、日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で放送されたが、エンディング曲「風になる」とスタッフロールがカットされたことに対し、Twitterなどでは「許すまじ」「訴訟も辞さない」といった声が相次いでいる。
『猫の恩返し』は2002年7月に公開された森田宏幸監督の作品。主人公の平凡な17歳の女子高生ハルは、学校の帰り道でトラックにひかれそうになった猫の王子を間一髪のところで救い出す。これをきっかけに、ハルが猫の国での冒険に巻き込まれる…という物語だ。
原作は『耳をすませば』(1995年)と同じく柊あおい氏。『耳をすませば』のヒロイン月島雫が成長して書いた物語をイメージとしており、同じキャラクターも登場する。
『猫の恩返し』と『耳をすませば』の宣伝ポスター
強引な猫たちからハルを助ける猫「バロン」の紳士的な姿にはファンも多い。つじあやのが歌う主題歌「風になる」も、映画の暖かい空気感や柔らかな雰囲気とぴったりシンクロしており人気を集めた。
つじあやの「風になる」
■エンディングのカット、放映前に予兆
「金曜ロードSHOW!」では「秋のジブリ」と題し、11月4日から3週連続で『となりのトトロ』『紅の豚』『猫の恩返し』のスタジオジブリ作品を放映した。
しかし、番組公式サイト内の宣伝画像では、『となりのトトロ』『紅の豚』は「ノーカット放送」と書かれていたが、『猫の恩返し』のみ「本編ノーカット放送」という文言になっていた。
公式サイトやTwitterに掲載された宣伝画像
そのためTwitter上では、「わざわざ【本編ノーカット】と書いてるあたり、猫の恩返しのエンディングはカットされると予想」、「あまり考えたくないけど主題歌の風になるだけカットの可能性が高い」といった不安の声が相次いでいた。
■不安は現実に…「エンドロールまでが映画なのに」
そして不安は現実のものとなった。当初予想されていた通り、この日の放映ではエンディング曲「風になる」とスタッフロールはカットされた。
これに対し、Twitterなどでは「エンドロールまでが映画なのに…」「画竜点睛を欠く」「許すまじ」「訴訟も辞さない」など、怒りや悲しみの声が相次いだ。
■森田監督、『となりの山田くん』がきっかけで白羽の矢
『猫の恩返し』は、スタジオジブリ作品としては宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』(2001年)の次に公開された作品。森田監督にとっては、初の長編作品の監督だった。『ホーホケキョ となりの山田くん』に原画担当として参加したことをきっかけに、『猫の恩返し』企画者の宮崎氏から本作の監督に抜擢された。
製作にあたって作品にどんな思いを込めたのだろうか。森田監督は朝日新聞のインタビューに対し、こう語っている。
(「千と千尋の神隠し」のように)あんなオバケみたいなヒットとは比べようがないし、新人監督ですから。男の子向けの作品ばかり手がけてきたので、幅広い観客に喜んでもらえるかどうかがプレッシャーでした。原作が少女マンガだから、スタッフの女性にいろいろ意見を聞いて回りました。
同じ柊あおいさん原作の「耳をすませば」は、マンガとアニメがかなり違うけど、僕は無駄を省いて素直に原作を生かそうと努めた。初めはいろいろ変えるアイデアを考えたけど、柊さんのテーストがいいという意見が多かったし、僕もやってるうちに原作が面白くなってきたから。
ただ、ハルが連れて行かれる「猫の国」は死んだ猫たちが住む国らしい、という原作の設定はやめました。コメディーで、ファンタジーであるこの映画には重すぎると思ったんです。
(朝日新聞 2002年7月26日・東京本社版夕刊)
“成長する物語”なんてちょっと空々しい。この話は、しょせんは猫の国、そこに行って帰ってくるだけだからそんなに成長するわけはないんですよね。
当たり前の暮らしの中の、天気がよくていい気分だなとか、たまたまいれたお茶がおいしくて幸せ――そんなささいな幸福感、小さな成長を、あのラストに込めたつもりです。
(朝日新聞 2002年7月26日・東京本社版夕刊)
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