Facebookはページ上の「信ぴょう性」を保証しているにもかかわらず、数百万人のユーザに偽ニュースや誤解を与えるニュースを配信してきたことがハフィントンポストUK版の調べで明らかになった。
ハフィントンポストUK版が6つのFacebook公式認証ページを分析したところ、同社が直面する問題の重大性が明らかになった。中には同社ネットワークが流した偽ニュースがドナルド・トランプ氏のアメリカ大統領当選につながったとして、非難を浴びているものもあるほどだ。
Facebookの創設者マーク・ザッカーバーグ氏は11月12日、「でっち上げ」を排除する強い意志があるとしながらも、多くのコンテンツは「基本的な考え方は正しいが、詳細が間違っていたり、割愛されることがよくある」と認め、「ユーザの目に触れる内容の99%以上は信ぴょう性のあるものだ」と話した。
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11月15日に「認証された」Facebookページがシェアしたデンゼル・ワシントンの偽ニュース
ハフィントンポストUK版が認証されたFacebookページを分析したところ、「いいね!」をつけたおよそ1450万ユーザーがこの問題の影響を受けている。誤った記事がニュースとして流され、こうした認証マーク付きのページでシェアされるとミスリードを起こすばかりか、完全に間違っているケースもある。
Facebookページ規約には、次のように書かれている。
Facebookページに虚偽や詐欺、誇大的なまたは誤解を招くような宣伝文句や内容が含まれていてはなりません。
しかし、調査した6つのページすべてが、「Facebookで認証され、利用者にはそれが本物である」ことを示すチェック印のブルーバッヂが入っているにもかかわらず、こうした虚偽の情報をシェアしている。
認証されたFacebookページがまったくの虚偽、あるいはミスリードしている「ニュース」を流している6つの例を紹介する。
1.「デンゼル・ワシントンが、全力でトランプ氏を支援」
これはワシントンポストがまったくの虚偽だと断定したが、認証マークのある「アメリカン・ニュース」ですでに数多くシェアされていた。
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「アメリカンニュース」の投稿は、ハフィントンポストUK版がその存在をFacebookに通報した数時間後に削除された。
この記事が削除されるまでについた「いいね!」やシェアは9万2625件。
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デンゼル氏が以前オバマ大統領に立ち向かったことは我々みな知っている。さて、彼は新たに素晴らしい行動を起こしている。デンゼル氏は今やトランプ陣営の一員だ!彼をサポートするか?
2. 「オバマ氏がトランプ氏に警告:私の妻を攻撃するな、その代償は地獄だ」
選挙キャンペーン中にトランプ氏がミシェル夫人について言及した件で、オバマ大統領はトランプ氏本人に直接抗議していない。代わりに大統領の広報官が記者に対して「大統領夫人を巻き込むなんて、最も卑劣な方法だ。トランプ氏がさらに敗北の危機に立たされるだけだ」とコメントしている。
オバマ氏は「私の妻を攻撃するな」とは言っていないし、トランプ氏を脅してもいない。
この投稿への「いいね!」やシェアは1万7400件。
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この否定的な反応は、トランプ氏でも手に負えないだろう。
3. 「そう!ロージー・オドネルがアメリカ国外に永久脱出を認めた」
ロージー・オドネル氏はアメリカのコメディアンでトークショー司会者。過去にトランプ氏から「なんてつまらない人間なんだ」とこき下ろされている。2016年初め、オドネル氏は怒りを込めて「役に立たないトランプ支持者ども、よく聞け。私は絶対にアメリカを去ったりしない」という長文をTwitterに投稿した。
オドネル氏はトランプ氏が勝ってもアメリカを去るとは言っていない。
この投稿への「いいね」やシェアは3万1000件。
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よし!今までで最高の一週間だ!トランプ氏が勝利し、次はこれだ。さっさと出て行け、ロージー!このうるさいリベラルが出て行ってもかまわない奴は「いいね」しろ!
4. 「速報:ゴーディ氏が選挙終了を受けてヒラリー・クリントン氏への捜査を完全再開したと発表、彼女はもう終わりだ」
11月11日に掲載されたこの記事によると、元検事で今は共和党下院議員のトレイ・ゴーディ氏が選挙終了を受けてヒラリー・クリントン氏への捜査が行われると「たった今発表した」。しかし、彼はそんなことはしていない。
実際は、11月7日に公表された声明でゴーディ氏が「故意の法律違反があったと陪審員が結論付けるのに十分な直接証拠や状況証拠がある」と話している。
「捜査を完全再開」とはとても言えない。
この投稿への「いいね」やシェアは1万5000件。
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ヒラリーさん残念。アメリカでは就きたい職に就けなかったからと言って、犯罪者が自由に歩くことはできない。選挙は終わったし、トレイ・ガウディ氏はこの直近の動きでヒラリーが自身の犯罪の代償を払うことになる、と個人的に確認している。「いいね」を5000集めて、アメリカがトトレイ・ゴーディ氏支持を表明しよう!
5. 「ヒラリーが自身最後の公開イベントをキャンセル、原因は群衆が『あいつを刑務所に入れろ!』と騒いだこと」
この記事は、信ぴょう性が確認できていない証人の発言にもとづくもので、ヒラリー・クリントン氏が10月30日にフロリダで行われた集会で車を降りるのを拒否した、というもの。写真を見れば、彼女が歩きながら群衆に向かって挨拶をしているのがわかる。
この投稿への「いいね」やシェアは3万6800件。
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ヒラリー・クリントン氏は集会に姿を現したが、車から出てくることすらしなかった。なぜなら、アメリカは彼女のウソや腐敗に辟易しており、彼女が刑務所の中に入ることを求めているからだ。これを見れば彼女が絶対にリーダー向きではないことが証明される。3000回シェアして、アメリカが薄汚れた政治家にうんざりしていることを表明しよう!
6. ラインス・プリーバス氏、1回のインタビュー中に3度もオサマ・ビンラティンをオバマと言う
次期ホワイトハウスの首席補佐官に指名されたプリーバス氏。いや、これは「今」起きたことではなく、プリーバス氏が6年前に出したコメントだ。
この投稿への「いいね」やシェアは1万7000件。
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まったく、嘆かわしい。
専門家は今後Facebookがいかにプラットフォーム上コンテンツの「信ぴょう性」を効果的に認証していくか、という点を課題だとしている。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスはハフィントンポストUK版に対し、Facebookは「すべての認証バッジを取り外す」必要があるかもしれない、と語った。
「Facebookがどのように偽ニュースを取り締まっていくか、についてはマネジメント上の大きな問題がある。Facebookはソーシャルネットワークであって、ニュースネットワークではない。多くの人材を投入して偽ニュースを捜索することは可能だが、作業量が膨大なので最終的にはアルゴリズムが必要になるだろう。私はFacebookが過剰反応していろいろなものを閉鎖してしまうのではないかと危惧していたが、彼らはそのようなことはしそうにない。金銭的に損をするからだ」
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Facebookの創設者でチーフエグゼクティブのマーク・ザッカーバーグ氏は「でっちあげ」コンテンツはネットワークから排除されるべきだと認めている。
ベケット氏は、「人々にとって正しいバランスとは何か、どうやって判断するのか、結局のところ、こういうものをクリックしているのはユーザーだ。彼らに『別のものにしなよ」と言うことはできない。解決策としては、すべての認証バッジを削除してしまうことだ」
ソーシャルネットワークの研究者で、ライターでもあるクレイ・シャーキー教授はガーディアンに対し「Facebookが、みんながシェアしたいものをシェアできないようにするのは無理だ。これがこのサイトの核となる考え方だ」と話した。
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Facebookは政治的偏向へのクレームを減らすため、編集者として人を置くのをやめた。
それでもユーザーが安心してページが提供するコンテンツを利用できるように、とFacebookは認証バッジ付与を試みた。分析会社のソーシャルベーカーズによると、メディアページのうち35%程度がFacebookの認証を受けているとみられる。
ハフィントンポストUK版が調査した6ページのうち、5ページが何らかの形でメディア・ニュース機関だと自称していた。
ページに認証バッジを付与することで、Facebookの「信ぴょう性あり」というお墨付きを得たというアイデンティティとなる。
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青い認証バッジは、Facebookが「本物」と判断したサインだ
Facebookは自身のサイトで、認証バッジシステムについて以下のように説明している。「Facebookページまたはプロフィールにブルーバッチ が表示される場合は、その著名人や媒体提供者、ブランドに対して、そのページまたはプロフィールがFacebookで認証済みであることを示します」
同社の説明によると、グレーのバッジは企業や団体が管理する信ぴょう性があるページだということを意味している。
一部のFacebookページやプロフィールは、Facebookで認証され、利用者にはそれが本物であることが知らされます。Facebookページまたはプロフィールにブルーバッチ が表示される場合は、その著名人や媒体提供者、ブランドに対して、そのページまたはプロフィールがFacebookで認証済みであることを示します。Facebookページにグレーバッチ が表示される場合は、その事業や団体に対してそのページがFacebookで認証済みであることを示します。
(Facebookページまたはプロフィールの認証についての説明)
「オーセンティック(信ぴょう性がある)」という言葉は「事実に基づく:性格、信頼できる」とオックスフォード英語辞典に定義されている。
ハフィントンポストUK版が調査したFacebookの偽ニュースは、重要なディテールを書いていたり信頼できるソースに基づくものではなかった。
さらにこうした偽ニュースは誤解を与えるような見出しをつけたり、それでなくても誤解を与えるような形でFacebookに存在していた。
IV. ページコンテンツ
A. 武器、アルコール、タバコ、成人向け商品を含め、規制製品およびサービスの個人的な販売を宣伝するページは、18歳未満のアクセスを制限する必要があります。
B. オンラインカジノ、スポーツ賭博、ビンゴ、ポーカーなど、オンライン賭博やゲーム、宝くじを宣伝または促進するFacebookページは、Facebookから事前に承認を受けたうえで、一部の国でのみ許可されます。
C. Facebookページで処方薬の販売を宣伝することは許可されません。オンライン薬局のFacebookページは、Facebookからの事前の承認により認められることがあります。
D. Facebookページに虚偽や詐欺、誇大的なまたは誤解を招くような宣伝文句や内容が含まれていてはなりません。
(11月16日現在のFacebookページ利用規約)
ハフポストUKは調査結果を15日午後Facebookに送った。同社は16日朝、問題の対象を調査中だと回答した。
Facebookは認証バッジの方針についてはコメントしなかった。
Facebookとグーグルの両社は14日、自身の広告ネットワークから偽ニュースを排除する計画を発表した。これはオンライン記事の広告にとって向かい風となるが、Facebook自身のスポンサー投稿と呼ばれるものへの影響はなさそうだ。しかし、Facebookが自身のネットワークを管理していく上での問題と初めて向き合った、というには程遠い。
2016年初めまで、Facebookのプラットフォーム上でニュースを「トレンド」に格上げする作業は人間の編集者が行っていた。しかし、政治的偏向を恐れたワシントンポストのスタッフが内容確認したところ、数日後にFacebookの注目トレンド記事は偽ニュースだったことがわかった。
16日、偽ニュース問題について、シリコンバレーのエグゼクティブとしてはかつてない強い言葉がグーグルのCEOサンダー・ピチャイ氏の口から飛び出した。彼はBBCに、「偽ニュースが配信されるようなことはあってはならない。それを改善するために我々はみなここにいる」と語った。
「ディベートするよりも、ニュースソースはより信頼できるものにし、事実確認をさらに強化し、アルゴリズムを改良していくことが必要だ」
ハフポストUK版より翻訳・加筆しました。
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