スティーブ・バノン氏とはどんな人物か 白人至上主義者がトランプ氏の首席戦略官に

ブライトバートを白人民族主義のプロパガンダ機関にした立役者だった。

アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は11月13日、首席戦略官と上級顧問に保守系オンラインニュースサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」会長のスティーブ・バノン氏(62)を指名した。バノン氏は白人至上主義者として知られ、反ユダヤ主義者として非難されてもいる。

バノン氏はブライトバートでの活動を控える一方、アメリカ大統領選ではトランプ陣営の最高責任者を務めた。そして13日、次期政権で最高幹部のポストを与えられた。

またトランプ氏は同日、共和党全国委員会のラインス・プリーバス委員長を首席補佐官に任命すると発表した。

トランプ氏は人事を発表した声明の中で、「スティーブとラインスは非常に有能なリーダーで、選挙では協力して歴史的な勝利に導いてくれた」とした上で、「これから2人は私と共に再びアメリカを偉大な国にするためにホワイトハウスで働いてもらう」と述べた。

バラク・オバマ大統領の政権初期に上級顧問を務めていたデビッド・アクセルロッド氏は13日、Twitter上でバノン氏ではなくプリーバス氏を首席補佐官に選んだのは、トランプ氏が「従来型」アプローチを取った表れだと述べた。しかしその後、ホワイトハウスにバノン氏を入れること自体が「本当に厄介なことだ」とも述べた

名簿上、バノン氏の名前はプリーバス氏の上に記されていた。これは、トランプ政権がバノン氏を重視していることを示唆しており、その重要性は首席補佐官に匹敵するものだ。大統領の首席戦略官・上級顧問は通常、大統領への取り次ぎ窓口を担当するほか、執務日程の設定・実施を担う。

国内の扇動的なグループの動きを監視している「南部貧困法律センター(SPLC)」によると、バノン氏はブライトバートを強硬派のポピュリズム的なニュースサイトに育て、白人至上主義者とオルタナ右翼(アメリカのネット右翼の総称)に人気の情報源にすることに成功したという。

ブライトバートはトランプ陣営の主張を代弁する報道機関になったほか、トランプ氏に対して批判的だったポール・ライアン下院議長やジョン・マケイン上院議員など共和党主流派を攻撃する役割を果たした

バノン氏は、ブライトバートを白人民族主義のプロパガンダ機関にした立役者だった。Breitbart.comは「オルタナ右翼」のメディアになりつつあるのか?2007年に設立されてから、ブライトバート・ニュース・ネットワークは右派に最も人気のニュースメディアの1つになった。

ブライトバートは、「医療系NGO『プランド・ペアレントフッド』はナチスと関係がある」「クリントン氏はサウジ・アラビアのスパイであるフーマ・アベディン氏を支援している」などといった陰謀論を広めている。また、女性嫌悪や人種差別の情報でアクセス数を伸ばしている。セクシュアルハラスメントや性差別と闘う女性を「弱くて無能だ」と断言し、有色人種や移民を「生まれながらの犯罪者」だと伝えている。

民主党のハリー・リード氏上院院内総務の広報担当アダム・ジェントルソン氏は、トランプ氏のバノン氏起用は「白人至上主義者がトランプ氏のホワイトハウスを最も象徴する存在になる」と述べた。

「KKKがなぜトランプ氏を自分たちの擁護者だと見ているかがよく分かる」と、ジェントルソン氏は付け加えた。

SPLCと名誉毀損防止同盟(ADL)も同様に、この人事に懸念を表明した。ADLはバノン氏と「オルタナ右翼」がアメリカの価値観の中核に敵意を持っていると述べた。

バノン氏がホワイトハウスの人事を任されるまでの道のりは、トランプ次期大統領と同様に、型破りなものだった。

バノン氏はさまざまなメディアや投資銀行勤務で財を成す前は、アメリカ海軍士官だった(1993年に番組放映権販売の交渉で協力をした『となりのサインフェルド』で大儲けしたと伝えられている)。

ブライトバートの元編集者ベン・シャピロ氏は、バノン氏を「日和見主義的で性格が悪い」と非難している。

シャピロ氏は8月にデイリーワイヤー紙に、「(バノン氏は)執念深くで意地悪な人物で、助けてくれた友人のことを悪く言い、敵を脅迫するなど悪名高い」と書いている。

会社に抗議して3月にブライトバートを去ったシャピロ氏は、大統領選挙でトランプ勝利の暁には(バノン氏が)政権で要職に就くと予言していた。

「バノン氏の野望は自らが権力の座に着くことだから、たとえ事実と異なっていてもトランプ大統領に『自分は素晴らしい仕事をしている』と伝えるだろう」とシャピロ氏は言う。「それこそ、バノン氏が政治家や投資家を操る手法です。まずは個人が持つ天才的な資質に投資する。その後、内部からえぐり取るのだ」

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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