ドナルド・トランプ新大統領、これまで批判していた各国首脳の反応は?

ヨーロッパ諸国の反応は複雑だ。

アメリカ大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利し、各国首脳は9日、さまざまな反応を示した。トランプ氏に対して過去に批判的だった首脳を含め、寄せられた内容の多くは外交儀礼に従って勝利を祝福していた。

■ 「トランプ氏の行動には吐き気がする」と言っていたフランスのオランド大統領は……

ヨーロッパ諸国の反応は複雑だ。

イギリスのテリーザ・メイ首相は、外交儀礼通りの祝辞を送った。

「激しい選挙戦を終え、次期アメリカ大統領への当選が決まったドナルド・トランプ氏を祝福したい」と、メイ首相は声明で発表した。「イギリスとアメリカが築いてきた特別な関係は、自由や民主主義、利益といった価値観に基づくものだ。我々は現在も、そしてこれからも貿易や安全保障の分野で強力なパートナーであり続けるだろう」

テリーザ・メイ首相

メイ首相は過去にトランプを批判していたが、「一緒に仕事するのを楽しみにしている」と付け加えた。

フランスのフランソワ・オランド大統領は、「アメリカ国民は、自分たちの感情をあらわにした」と、官邸が発表した声明文で冷静に述べた。「アメリカ国民は、ドナルド・トランプ氏を選んだ。トランプ氏を祝福する。ヒラリー・クリントン氏のことも考えている」

フランソワ・オランド大統領

オランド大統領は8月に「アメリカ国民がトランプ氏を選ぶのなら、その影響が出るだろう。アメリカの選挙は、世界の選挙なのだから」と警告していた。また、「トランプ氏の行動には吐き気がする」と述べていた。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相も祝辞を送ったが、トランプ氏の名前は直接口にしなかった

アンゲラ・メルケル首相

「ドイツとアメリカを結びつけているのは、民主主義、自由、そして法律と人の尊厳を大事にする価値観だ」と、メルケル首相は語った。「次期アメリカ大統領とは、このような価値観に基づいて緊密に連携したい」

■ メラニア・トランプ夫人の生まれ故郷スロベニアの首相は……

スロベニアのミロ・ツェラル首相は、Twitter上で祝辞を述べたが、ハッシュタグで「love」の文字を強調した。

ミロ・ツェラル首相

スロベニアは、次期ファーストレディーとなるメラニア・トランプ夫人の生まれ故郷だ。トランプ氏は一度だけ訪れたことがあるが、滞在時間はわずか数時間だった。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、祝電を送った

ウラジーミル・プーチン大統領

「プーチン大統領はアメリカとの相互協力によって、危機的な状況にある露米関係の修復とともに、直面する国際問題に向き合い、世界的な安全保障の懸念に対する効果的な対応を探ることに期待を表明した」と、ロシア大統領府は声明を発表した

トランプ氏は、プーチン大統領に対する友好的な姿勢や、対露関係の修復について度々発言している。

モスクワに拠点を置くスティーブ・ローゼンバーグ記者によると、ロシアの報道機関では選挙戦でクリントンの勝利を予想する意見が多かったという。

一部の報道機関では陰謀論が広まっており、アメリカの選挙プロセスは腐敗していると伝えられていた。「アメリカのエリート層は、世界的に大きく広まりを見せる民主主義を支持しているが、ヒラリー・クリントン氏を勝利させようと、あらゆる策を講じている」。ローゼンバーグ氏が翻訳した8日掲載の新聞社説によると、「クリントンはロシアを核攻撃するだろう」、とも報道され、ロシア政治にアメリカの影響が及ぶと警告していた。

ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領も祝辞を送ったが、「アメリカがロシアのウクライナ侵攻に対抗し続けることを期待する」と、ロシアとトランプ氏の接近に警戒感を示した。

ペトロ・ポロシェンコ大統領

ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相は、移民の流入を阻止する国粋主義者として知られているが、トランプの勝利に大喜びしているようだった。

ヴィクトル・オルバン首相

Congratulations.

What a great news. Democracy is still alive.

Posted by Orbán Viktor on Tuesday, 8 November 2016

おめでとうございます。なんて素晴らしいニュースだろうか。民主主義はまだ生きている。

チェコのミロシュ・ゼマン大統領も、選挙結果を喜ぶツイートした。「トランプ氏の移民に対する考えと、イスラム過激派との闘いに賛同する」と発信した。

ミロシュ・ゼマン大統領

カナダのジャスティン・トルドー首相は、「カナダにとって、アメリカ以上に親しい友人、パートナー、同盟国はない」と祝辞を述べた。「貿易や投資、国際平和や安全保障などの問題で、次期大統領のトランプ氏、次期政権、アメリカ議会と密接に連携していくのを期待している」

ジャスティン・トルドー首相

中東でも、少数のリーダーが祝辞を表明した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、非常に明瞭なメッセージを発信した。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相

次期大統領のトランプ氏はイスラエルにとって真の友人であり、中東での安全保障や安定、平和を発展させるにあたって、連携するのを楽しみにしている。

固い絆で結ばれたアメリカとイスラエルは、共通の価値観に基づき、共通の利益で強調され、共通の運命で動いている。

イラクのハイダル・アル=アバディ首相は、IS(イスラム国)からのモスル奪還作戦を主導しているアメリカに敬意を示し、ツイートを発信した。

ハイダル・アル=アバディ首相

次期大統領の@realDonaldTrump、おめでとうございます。これからもアメリカが、テロとの戦いでイラクへの支援を続けてくれると期待している

ロイター通信によると、エジプトのアブドゥル・ファッター・アル・シシ大統領は9日、トランプ氏と電話会談した。

アブドゥル・ファッター・アル・シシ大統領

「アメリカの次期大統領ドナルド・トランプ氏は、我が国の大統領に対して大きな感謝を示し、選挙戦の勝利を受けて国際電話で祝辞を受け取るのはこれが初めてだと言った」、と大統領府は声明で発表した。「トランプ大統領はすぐに我が国の大統領を訪問するのを楽しみにしていると述べた」

シシ大統領は、両国関係の強調を期待していると述べた。

ガーディアン紙によると、イランのハサン・ロウハニ大統領は「アメリカの選挙結果が、イランの政策に影響を及ぼすことはない」と語った。

ハサン・ロウハニ大統領

ロウハニ大統領は閣議で「アメリカは間違った政策のせいで、国際社会での立場を悪化させ、国際的な世論の批判を浴びている。さらにアメリカはヨーロッパとも軋轢が生じて、世界的にアメリカの立場は危うくなるだろう」と語った。

■ 「フィリピンのトランプ」と言われるドゥテルテ大統領は……

アジア諸国のリーダーも、トランプの勝利に次々と声明を発表した。

日本の安倍晋三首相は、「類まれなる能力によりビジネスで大きな成功を収め、米国経済に多大な貢献をされただけでなく、強いリーダーとしてアメリカを導こうとされている」と述べた。「21世紀においては、日米同盟は国際社会が直面している課題に互いに協力して貢献していく『希望の同盟』で、トランプ次期大統領と手を携えて、世界が直面する諸問題に共に取り組んでいきたい」

安倍晋三首相

インドのナレンドラ・モディ首相は、思いやりのある外交的なメッセージをツイートした。インドは、長期にわたるアメリカの同盟国だ。

ナレンドラ・モディ首相

トランプ氏が選挙中にインドとの友好関係を強調していただいたことに感謝する。

印米関係の強化に向け、これからますます連携を深めていくのを期待している。

中国の習近平国家主席も祝意を示した。

習近平国家主席

「世界最大の発展途上国と、世界最大の先進国として、中国とアメリカは特別な責任を担っている」と、習近平国家主席はトランプ氏との電話会談で語ったと、中国のテレビ局CCTVが報じた。中国は「アメリカと長期にわたって穏やかで安定した関係を築き、対立のない基本姿勢に基づいて、あらゆる問題を解決していきたい」と期待感を示した。

中国の習近平国家主席、アメリカ大統領選に勝利したトランプ氏を祝福する。

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は9日、「トランプ氏が勝ったからけんかしない。俺たちの共通点は口が悪いことだ」と語った。

ロドリゴ・ドゥテルテ大統領

また、フィリピン大統領報道官は「ドゥテルテ大統領は次期大統領のトランプ氏に対し、今後4年間、アメリカ軍の最高責任者兼最高司令官としての活躍を祈った。それから互いに共有する尊敬や利益、民主的な理想を果たす義務や法秩序に基づき、トランプ氏の次期政権と共に米比関係の強化に向けて連携していくのを楽しみにしている」という声明を発表した

ドゥテルテ大統領のバラク・オバマ現大統領に対する発言とは大きく異なる。オバマ氏に対してはドゥテルテ大統領はオバマ大統領を「このくそったれ」と呼んだこともあった。

アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領が発信したツイートには、「お互いの国民のために、連携できることを期待している」とあった。

マウリシオ・マクリ大統領

メキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領は、トランプ氏の「メキシコ国境に巨大な壁を作る」という公約のせいで緊張関係に陥っているが、反応はかなり落ち着いたものだった。

エンリケ・ペーニャ・ニエト大統領

「アメリカの選挙結果を祝福する。トランプ氏には、連携の準備が整っていると重ねて伝えたい」

ルワンダのポール・カガメ大統領も、祝辞を発信した。

ポール・カガメ大統領

トランプ氏、今回手にした勝利を祝福する。これからもアメリカと次期政権に良好な関係を期待する

またローマ教皇庁は、トランプ氏が「教えに導かれる」よう祈っていると発言した。

「新大統領の前途を祝福し、本当に充実した政権となるよう祈っている」とバチカンの国務長官、ピエトロ・パロリン枢機卿は述べた

一方でローマ教皇フランシスコは、次期大統領の名前には触れず、人々に理解と協力を求めた。

ローマ教皇フランシスコ

対話や認め合い、兄弟のつながりを通して、神が慈悲深い愛情を今以上に確かなものにしてくれますように。

トランプ氏は9日明け方、穏やかな口調で勝利演説を行った。接戦を共にした民主党候補のヒラリー・クリントンに対し感謝を示し、またアメリカ国民のため、根気強く働くと約束した。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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