電通過労自殺、高橋まつりさんの母が訴える「命より大切な仕事はありません」

「社員の命を犠牲にして業績をあげる企業が、日本の発展をリードする優良企業と言えるでしょうか」(高橋まつりさんの母、幸美さん)
時事通信社

厚生労働省が主催する「過労死等防止対策推進シンポジウム」が11月9日、東京都内で開催された。電通の新入社員で、2015年に過労自殺した高橋まつりさん(当時24歳)の母、幸美さん(53)も登壇。「今、この瞬間にも同じことが起きているかも知れません」と、残業削減だけでなく企業風土の改革をしてほしいと訴えた。朝日新聞デジタルなどが報じた。

幸美さんがまつりさんの話を通じて訴えたことは、▽残業時間の削減▽パワハラを許さない企業風土や業務の改善▽ワークシェアや「36協定」の改革、従業員の休息時間を確保する「勤務間インターバル」の制度だった。

■母が明かした、まつりさんの働き方

まつりさんの働き方について、幸美さんは、残業に加えて自宅で徹夜の作業をしていたと明かした。まつりさんが、2015年10月に本採用となった後は、土日出勤、朝5時帰宅という日もあった。

「『こんなにつらいと思わなかった』『今週10時間しか寝ていない』『会社やめたい』『休職するか退職するか、自分で決めるので、お母さんは口出ししないでね』と言っていました」。

さらに、亡くなった12月には部署全員に対して、残業の上限を撤廃する36協定の特別条項が出され、深夜労働が続き、忘年会の準備のためにも土日や深夜に残業していたという。また、まつりさんについて、過労だけでなく「パワハラやセクハラで個人の尊厳を傷つけられていた」とも訴えた。

「社員の命を犠牲にして業績をあげる企業が、日本の発展をリードする優良企業と言えるでしょうか。命より大切な仕事はありません。娘の死はパフォーマンスではありません。フィクションではありません。現実に起こったことなのです」。

幸美さんは、まつりさんが自殺した朝に残していたメールの内容も明かした。そのメールには、「大好きで大切なおかあさん。さようなら。ありがとう。人生も仕事もすべてがつらいです。お母さん、自分を責めないでね。最高のお母さんだから」と書かれていた。

関連記事

注目記事