インドのモディ首相は11月8日午後8時(現地時間)にテレビで演説し、現在流通している高額紙幣を、4時間後の9日午前0時で廃止すると突如発表した。偽造紙幣や資金洗浄など、ブラックマネー撲滅のためだとしているが、現地では大勢の人が、旧札を新札に交換しようと銀行に押しかけている。ハフィントンポスト・インド版などが報じた。
廃止対象となるのは、現在流通している紙幣のうち、最高額の1000ルピー札(約1600円)と、2番目に高額の500ルピー札(約800円)の2種類。インド中央銀行は新たに2000ルピー札を10日以降に、新デザインの500ルピー札を数週間以内に発表する予定だが、それまでは銀行などに一旦貯金して預けたうえで、新札として引き出してほしいと呼びかけている。11日までは病院や鉄道、航空会社、ガソリンスタンドなどに限り、旧紙幣での支払いが認められる。
モディ首相はこの日、「ブラックマネーと腐敗が、貧困撲滅の最大の障害となっている」とテレビで演説。偽造紙幣や汚職、資金洗浄などの根絶が目的だとしたうえで、「パニックになる必要はありません。あなたのお金は残ります」などと、国民に語った。
混乱を避けるために、インド全国の銀行や郵便局が9日は閉鎖となる。このため、ATMに長い列が続く光景が、インドじゅうでみられた。
SUSHMIT ROYCHOWDHURY
脱税対策のねらいも
今回のモディ首相の宣言は、脱税対策との見方もある。
インドでは現金決済が主流で、銀行決済があまりつかわれない。使用される紙幣のほとんどは1000ルピー札と500ルピー札で、自宅に保管するいわゆる「タンス預金」が多いという。
このため、国民の資産の捕捉が難しく、低所得者だけでなく、富裕層のなかでも納税をしない人も多く見られる。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、2013年に所得税を払ったのはインド人口の1.6%しかいなかったという。旧札の交換のために銀行への入金を促すことで、国民の資産を把握し納税につなげるというねらいもある。
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