韓国・朴槿恵大統領「必要なら捜査を受ける」談話で再び謝罪 辞任は否定(全文)

再び謝罪に追い込まれた背景には、「崔順実ゲート」の捜査が本格化し、11月3日前後に急展開したことがあった。

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は11月4日午前10時30分、国民向け談話を発表した。

【談話のポイント】

  • 「崔順実ゲート」を再び謝罪
  • 必要なら検察の捜査を受けると表明=実現すれば現職大統領として初
  • 辞任は否定「国政の混乱と空白状態を防ぐ」

国政介入や財団私物化などの疑いが持たれている知人女性の崔順実(チェ・スンシル)容疑者が3日深夜、逮捕されたことを受け、朴大統領は青瓦台(大統領府)の記者会見場で「崔順実氏に関連する事件で計り知れない大きな失望と懸念を与えてしまったことを、もう一度心からおわび申し上げます」と謝罪した。

11月3日、崔順実容疑者

10日前にも謝罪の談話を発表した朴大統領が、再び謝罪に追い込まれた背景には、「崔順実ゲート」の捜査が本格化し、11月3日前後に急展開したことがあった。

2日深夜、朴大統領の側近だった安鍾範・前大統領府政策調整首席秘書官が緊急逮捕された。すでに緊急逮捕されていた崔順実容疑者にも3日深夜、職権乱用権利行使妨害と詐欺未遂の疑いで、正式な逮捕状が発布された。。両者は共謀し「ミル文化財団」と「Kスポーツ財団」に寄付するよう、企業に圧力を加えた疑いがある。

また、両財団に対し、崔容疑者が経営する会社「ザ・ブルーK」が、業務遂行能力もないのに業務委託を提案し、計7億ウォン(約6300万円)をだましとろうとした疑いも持たれている。裁判所の逮捕状審査手続きで、崔氏は容疑を否認したという。

現職大統領が検察の捜査を受けることになれば、韓国では史上初のことになる。ただ、憲法の規定で、内乱などの重大事案を除いて訴追されることはない。

2日深夜に緊急逮捕された朴大統領の元側近、安鍾範・前大統領府政策調整首席秘書官

朴大統領は4日、「すべての事態は、すべて私の間違いであり、私の不徳のいたすところです」と述べた。また「今後、検察は、いかなるものにも束縛されず、明白に真実を明らかにし、これをもとに厳正な司法処理がなされなければならない」として「必要であれば、私も検察の調査に誠実に臨む覚悟であり、特別検事による捜査も受け入れる」とした。

朴大統領は、崔順実氏との関係にも言及した。

「一人で生きていて、しなければならない個人的なことを助けてくれる人もなく、長く縁のあった崔順実氏から助けてもらうようになり、行き来するようになった」「私がいちばん苦しかった頃に、横にいて守ってくれたので、私自身が警戒の壁を下げたのが事実」だと説明した。

「振り返ると、個人的な関係を信じて、しっかりと検証できなかった他の周辺の人々に厳しくできない結果となってしまった」として「何をもっても国民の心を落ち着かせることが難しいと考えると、私はこういうことのために大統領になったのかという恥辱の念にとらわれるほど辛い」と吐露した。

朴大統領は「今、我が国の安全保障は非常に大きな危機に直面しており、経済も厳しい状況」だとして「社会各界のメディア関係者、宗教指導者の方々、与野党の代表者の方々とよく意思疎通しながら、国民の皆さんと国会の要求をより重く受け入れる」と表明した。

また、朴大統領は「すでに心情的にはすべての縁を切ったが、今後は私的な縁を完全に切って生きる」「誰であろうと、今回の取り調べによって間違いが明らかになれば、相応する責任を負うべきであり、私もすべての責任を負う覚悟ができている」と付け加えた。

一方で朴大統領は「国政の混乱と空白状態を防ぐために、真相究明と責任追及は検察に任せ、政府は、本来の機能を一日も早く回復しなければならない」として、辞任を否定した。11月3日に発表された世論調査では「辞任または弾劾」を求める声が55%に達し、自身の支持率も5%と史上最低を記録する中で、野党の一部や国民の辞任要求に抗しきれるのかが焦点となる。

この日の談話は約9分間読み上げられ、テレビで生中継されたが、記者からの質問は受け付けなかった。朴大統領は談話文を読みあげた後、記者たちに「本当に申し訳ない気持ちです。これで終わります」という言葉を残したという。

全文は以下の通り。

尊敬する国民の皆さん。

まず、崔順実氏に関連する事件で計り知れない大きな失望と懸念を与えてしまったことを、もう一度心からおわび申し上げます。

何よりも、私を信じて、国政を信じて任せてくださった国民の皆さんに、取り返しがたい心の傷を与えてしまい、とても胸が痛みます。

私と一緒に献身的に奔走してくれた政府の公職者と現場の多くの方々、そして善意の支援をいただいた企業の皆さんにも大きな失望をさせてしまい、申し訳なく思っています。

国家経済と国民の生活に役立つだろうと推進されたことでしたが、その過程で、特定の個人が利権をむさぼり、数々の違法行為まで犯したと聞き、あまりにも残念で痛ましい心境です。

このすべての事態は、すべて私の間違いであり、私の不徳の致すところです。私の大きな責任を深く痛感しています。

昨日、崔順実氏が重大な犯罪容疑で拘束され、安鍾範・前大統領府政策調整首席秘書官が逮捕され、取り調べを受けるなど、検察の特別捜査本部で徹底的かつ迅速に捜査を進めています。

今後、検察は、いかなるものにも束縛されず、明白に真実を明らかにし、これをもとに厳正な司法処理がなされなければなりません。

私は、今回の真相と責任を究明する上で可能な限り協力します。すでに青瓦台秘書室と警護室にも警察の捜査に積極的に協力するよう指示しました。必要に応じて私も検察の取り調べに誠実に臨む覚悟であり、特別検事による捜査も受け入れます。

国民の皆さん、私は青瓦台に入ってから、もしかすると好ましくないことが生じはないかと心配して、家族間の交流さえ断ち、寂しく過ごしてきました。

一人で生きていて、しなければならない個人的なことを助けてくれる人もなく、長く縁のあった崔順実氏から助けてもらうようになり、行き来するようになりました。

私がいちばん苦しかった頃に、横にいて守ってくれたので、私自身が警戒の壁を下げたのが事実です。振り返ると、個人的な関係を信じて、しっかりと検証できなかった他の周辺の人々に厳しくできない結果となってしまいました。私自身を許し難く、悲しい気持ちにとらわれ、夜もなかなか眠れません。

何をもっても国民の心を落ち着かせることが難しいと考えると、私はこういうことのために大統領になったのかという恥辱の念にとらわれるほど辛い気持ちです。

国民が心を痛めないようにするという覚悟で努力してきましたが、このような正反対の結果となり、胸が裂ける思いです。

さらに、私がインチキ宗教に入れ込んだとか、大統領府で祈禱をしたという話まで出ていますが、これは決して事実ではないと明確に申し上げます。

韓国の未来の成長力を作るために心を傾けてきた国政課題も、すべて不正と烙印を押されている現実も実に残念です。いくつかの間違いがあったとしても、大韓民国の成長力だけは消さないでいただけるよう呼びかけます。

もう一度私の過ちを率直に認めて、国民の皆様に許しを乞います。すでに心情的にはすべての縁を切りましたが、今後は私的な縁を完全に切って生きていきます。

これまでの経緯について説明を申し上げるべきですが、現在、検察の捜査が進行中の状況では、具体的な内容を一つ一つ申し上げにくいことを申し訳なく思っています。

私の説明が公正な捜査に障害とならないか憂慮して、今日すべてのことを申し上げられないだけであり、今後、機会があれば明らかにします。

また、誰であろうと、今回の取り調べによって間違いが明らかになれば、相応する責任を負うべきであり、私もすべての責任を負う覚悟ができています。

国民の皆さん、今、韓国の安全保障は非常に大きな危機に直面しており、私たちの経済も厳しい状況です。国内外の多くの懸案が山積しているだけに、国政は一刻たりとも中断してはなりません。

大統領の任期は有限ですが、大韓民国は永遠に続かなければなりません。

さらに大きな国政の混乱と空白状態を防ぐために、真相究明と責任追及は検察に任せ、政府は、本来の機能を一日も早く回復しなければなりません。

国民の皆様が任せて頂いた責任に空白が生じないように、社会各界のメディア関係者、宗教指導者の方々、与野党の代表者の方々とよく意思疎通しながら、国民の皆さんと国会の要求をより重く受け入れます。

もう一度国民の皆さんに深く頭を下げ、謝罪します。

ハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳、加筆しました。

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