能年玲奈から芸名を変更した女優「のん」さん(23)が、ハフポスト日本版のインタビューに応じた。のんさんは、11月12日公開のアニメ映画「この世界の片隅に」で主役の北條すずを演じている。7月の改名以降では初の本格的な芸能活動となる。
「この世界の片隅に」は、こうの史代さんの漫画が原作。戦時中の広島県呉市の北條家に18歳で嫁いだ「すず」が主人公だ。主婦の視点から、相次ぐ米軍の空襲や、統制経済といった戦時下の暮らしを独特のタッチで描いている。アニメ映画版は、片渕須直(かたぶち・すなお)監督がクラウドファンディングで、4000万円近い資金調達に成功したことでも注目を集めた。
のんさんは、すずを演じる中で「普通に生きていくってことは、すごく幸せなことなんだ」と悟ったという。また、今回の映画で芸能活動に本格的に復帰したことについて「やっぱり現場って楽しいなと思った」と感慨深げに語った。
インタビューに応じる「のん」さん(2016年10月17日撮影)
■「普通ってことが幸せ」
――アニメ映画には初主演となりますが、片渕須直監督からオファーを受けて、のんさんはどう感じましたか?
「オーディションに来てください」と言われて、そのときに原作を初めて読みましたが、本当にすごい作品だと思いました。絶対に「私がやりたい」って思ったんです。主人公の北條すずさんは、結婚したときに18歳で自分より5歳くらい年下ですが、すごく共感する部分がありました。
――ちなみにどんなところに共感しましたか?
ぼうっとしてるところ(苦笑)。でもパワフルだったりちょっと乱暴だったり、晴美さんと張り合ったり、ちょっと子供っぽい部分が、私と似ていると思いました。
――戦時中の日常を描いた映画ですが、どんな状況でも楽しく生きようとする姿が描かれていますよね。
それがすごく新鮮でした。私は、これまで「別世界のもの」として戦争を捉えていたところがありました。今、自分が住んでいる世界とは、全く違うところにあるように捉えていたんです。すごく怖くて、そういうものを見ないようにしていました。でも原作を読んだときに、戦争が別次元の物ではなく「日常と隣り合わせ」として描かれていました。何があっても日常があって、ご飯を作って食べていたという普段の生活が見えた気がしました。戦時下の大変な中でも節約や家計をやりくりすることを、すずさんが楽しそうにやっているのが新鮮でした。
――2016年は熊本地方で大地震があり、台風上陸で東北地方などが大きな被害を受けました。のんさんも岩手県久慈市を訪問しましたが、日常を一変させるような災害が相次いでいるとき、この映画が出るのは意義があることだと思いますか?
そうですね。「普通に生きていくってことは、すごく幸せなことなんだ」と感じました。どんなときでも生活して、毎日がめぐってくることは、すごく大事なことだと思います。普通に生活し、普通に生きていく。「普通ってことが幸せなことなんだ」と、見る人に感じていただけたらと思います。
――ちなみに、のんさんは普段はどんな暮らしをしているんですか?
結構、生活をおろそかにしていたんですよね。あんまり生活する才能がなくて(苦笑)。一日三食を食べるとか、朝起きてご飯作ってとか、洗濯してとか、ちゃんと毎日の営みとしてやるのが苦手で、おろそかにしていました。「生活の才能がないから、こういう仕事やっているんだ」と思っていたけど、この作品に参加してからは、洗濯したりご飯を作ったりするのが楽しくなりました。
――今回の出演で芸能活動を本格的に再開することになりましたが、どのように感じましたか?
「やっぱり現場って楽しいな」と思いました。
――現場で監督やスタッフの皆さんとやりとりするのが楽しかった?
はい。片渕監督と相談しながら「すずさんだったらどう行動するだろう?」と考えを深めていきました。また、北條サン役の新谷真弓さんが方言についてアドバイスしてくださったこともありました。役者さんとしての経験から「イントネーションを演技で崩すと、こういう話し方もできますよ」なとと、細かく教えていただきました。いろんな人のアイデアが合わさって、一つの物に向かっていく感じがありました。特にこの現場は、そういう気持ち良さを感じましたね。違う考えが混ざり合っていく様子が、すごく楽しかったです。
――今回はアニメ映画でしたが、今後は映画に限らず幅広くやって行きたいですか?
役者や女優という仕事は、ずっとやっていきたいです。面白いことなら、どんどんやっていきたいなと思っています。見る人に「楽しげだな」と思ってもらえれば。
「この世界の片隅に」で主演した「のん」さん。右のポスターが主人公の北條すず(2016年10月17日撮影)
【映画の予告編】