三浦弘行九段、週刊文春に反論「スマホ提出拒否していない」 将棋連盟は一転、調査へ【将棋不正疑惑】

疑惑をめぐっては報道内容と三浦九段の主張が互いに食い違っており、事態は泥沼化している。
時事通信社

三浦弘行九段(42)は10月21日、過去の対局で将棋ソフトを不正使用したとされる疑惑に関して、2回目の反論文書を公表した。20日発売の週刊文春の報道を受けて、改めて潔白を訴えたかたちだ。毎日新聞などが報じた。

三浦九段は「一部マスコミにて事実と異なる内容が報道されているため、重要な点についてのみ誤りを指摘しておきたい」としている。

三浦九段をめぐっては、対局中の不自然な離席を5人前後の棋士が指摘。また渡辺明竜王(32)が、三浦九段の指し手が「将棋ソフトと一致率が高い」と主張。日本将棋連盟に対応を求めていた。三浦九段は「竜王戦」の挑戦者に決まっていたが、12日に日本将棋連盟から年内の公式戦出場を停止する処分を受けた。三浦九段は「不当な処分」だとして抗議している。

■反論1:聞き取り調査の場に「渡辺竜王も同席するように」と言っていない

三浦九段(左)と渡辺竜王

複数の棋士らの指摘を受けて、連盟側は10月11日、「対局中スマートフォンなどに搭載の将棋ソフトを使って不正をした疑いもある」として三浦九段に説明を求めた。この場には、ソフトとの一致率の高さを指摘した渡辺竜王も同席した

渡辺竜王が同席した経緯について、20日発売の週刊文春は三浦九段の要望によるものだと伝えた。

翌日の十一日に連盟理事の「常務会」を急遽開催し、その場においてヒアリングを行う事を通達した。突然の事態に戸惑いを隠せない三浦九段は早口で返答した。

「それなら渡辺さんも同席するように言って下さい」

十一日午後一時、連盟内の部屋で三浦九段と渡辺竜王、千田五段が対峙し、その周囲を連盟の理事たちが囲んだ。

将棋「スマホ不正」全真相(週刊文春記者・中村徹+本誌取材班):週刊文春デジタルより 2016/10/20 05:00)


これに対し、三浦九段は報道内容を否定。数日後に渡辺竜王との竜王戦を控えていたことから、「私が疑われ、身の潔白を証明する場に渡辺さんが同席していると、対局に差し障りがある」として、連盟側には渡辺竜王の同席を拒否したいと伝えたという。

私は、「渡辺さん(明・竜王)はこれから戦う相手なので呼ばないでください」と伝えました。数日後に竜王戦が控えていたため、私が疑われ、身の潔白を証明する場に渡辺さんが同席していると、対局に差し障りがあると考えたからです。しかし、私の要望に反して翌日の会議の場に渡辺さんは出席していました。

将棋:三浦九段の2回目の反論文書全文 - 毎日新聞より 2016年10月21日 23時18分)


■反論2:スマホに遠隔操作アプリ入れたことない

第2回電王戦第5局で対局する三浦弘行八段(左、段位は当時)撮影日:2013年04月20日

20日発売の週刊文春は、三浦九段がスマホに遠隔操作アプリを入れていたとする疑惑について、三浦九段が三枚堂達也四段(23)に「スマホでパソコンを遠隔操作する方法を教えて欲しい」と尋ねていたことから、「"スマホからより高性能なパソコンを遠隔操作する方法を“知りたがっていた"ことは間違いない」と伝えた。

――三枚堂さんが(遠隔操作の)やり方を教えたのか。

「はい。私が三浦さんにお話ししたのは、そういうアプリ自体の存在です。スマートフォンでパソコンをリモート操作することができるアプリです」

――つまりパソコンの将棋ソフトをスマホで遠隔で操れる?

「まあそういう感じです。比較的簡単にできると思います。『TeamViewer』というアプリです」

将棋「スマホ不正」全真相(週刊文春記者・中村徹+本誌取材班):週刊文春デジタルより 2016/10/20 05:00)


これに対し三浦九段は、三枚堂四段から詳しい説明は受けていないと反論。スマホに遠隔操作アプリをインストールしたことについても否定した。

私は、そんなことができるのかと驚き「どうやっているの」と聞きました。彼は、私がパソコンに疎いことを知っていたため、詳しい説明はしませんでした。もちろん、私のスマートフォンに遠隔操作アプリをインストールしたことはありません。

将棋:三浦九段の2回目の反論文書全文 - 毎日新聞より 2016年10月21日 23時18分)


■反論3:スマートフォンの提出を拒否した訳ではない

三浦九段

20日発売の週刊文春は、聞き取り調査があった11日の常務会終了後、三浦九段がスマホの提出を拒否したと伝えている。

その後連盟職員が三浦九段と高崎市の自宅に同行してパソコンを押収。だがスマホの提出は拒否した。

将棋「スマホ不正」全真相(週刊文春記者・中村徹+本誌取材班):週刊文春デジタルより 2016/10/20 05:00)

これに対し、三浦九段は「スマートフォンの提出を拒否した訳ではありません」と否定した上で、連盟側が提出を求めていなかったにも関わらず、自らパソコンを提出し、調査に協力したと主張している。スマホについては「日常使用しますし…」と、している。

ちなみに、私はスマートフォンの提出を拒否した訳ではありません。そもそも、連盟はスマートフォンのみならずパソコンの提出すら望んでいませんでした。スマートフォンは、私が日常使用しますし、私の保有するパソコンを調べてもらえば、遠隔操作ソフトなどが導入されていないことは分かってもらえると思っていました。

将棋:三浦九段の2回目の反論文書全文 - 毎日新聞より 2016年10月21日 23時18分)

三浦九段は1回目の反論文書において、所有するノートパソコン2台、デスクトップパソコン2台、スマートフォンの全アプリを撮影した画像を提出したことを公表している

■日本将棋連盟、姿勢を一転 疑惑調査チーム発足へ

疑惑をめぐって、報道内容と三浦九段の主張が互いに食い違っており、事態は泥沼化している。こうした棋界の混乱を受けて、連盟側は21日、所属棋士向けの説明会を開催。羽生善治三冠(46)、佐藤天彦名人(28)、郷田真隆王将(45)らトップ棋士らも出席した

説明会は非公開で、約2時間におよんだ。この場で連盟側は、当初「追加調査はしない」としていた方針を一転、弁護士らによる調査チームを発足させ、不正の有無を調べる方針を発表した。事態の収拾に向け、ようやく連盟側が動き出したかたちだ。

朝日新聞デジタルによると、調査チームは来週以降、三浦九段が自主的に提出したパソコンの利用記録を調べ、スマートフォンの提出も求めるという。

説明会終了後、日本将棋連盟の常務理事の島朗九段(53)は報道陣の取材に応じ、説明会の様子を説明。「徹底的にやるべきだ」「仲間内で泥仕合をしていてはいけない」と棋士たちの意見が分かれたと話した

島朗九段

産経新聞によると、この説明会の中で島九段は、三浦九段の指し手と将棋ソフトの一致率の高さを指摘した渡辺竜王が「疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪されても構わない」と、連盟幹部に強く対応を求めていたと明かした。

三浦九段も反論文書で、所有するスマホと4台のパソコンの解析を調査会社に依頼する方針を表明した。どの調査会社に依頼するかについては、連盟側と共に選考する意向を示している。解析結果については「私や連盟が入手する前に、調査会社等から直接世間に発表してもらおうと考えています」としている。

【UPDATE】日本将棋連盟が設置した第三者調査委員会(委員長:但木敬一弁護士)は2016年12月26日、「不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はないと判断した」と発表した。

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