【イエメン空爆】アメリカ政府、サウジ支援を縮小か「勝手な行動は許さない」

「アメリカのサウジアラビアとの安全保障協力は、勝手な行動を許すものではない」

葬儀会場を狙った空爆で破壊された建物のがれき。

内戦が続く中東・イエメンの首都サヌアで10月8日、イスラム教シーア派の武装勢力「フーシ」幹部の父親の葬儀会場が空爆を受け、少なくとも155人が死亡した。

フーシは隣接するサウジアラビアが主導する連合軍の空爆だと非難している。一方、連合軍の報道官は関与を否定している。2015年3月のサウジ介入以後、最も多くの民間人犠牲者を出した攻撃となった。

イエメンでは2011年、中東の民主化運動「アラブの春」を受け、33年にわたって独裁体制を敷き、90年の南北イエメン統合以降も大統領の座に座り続けたアリ・アブドラ・サレハ氏が退陣した。

選挙で選ばれたアブドラボ・マンスール・ハディ暫定大統領の下で新たな政治体制作りを進めていたが、フーシがサヌアを侵攻し、大統領宮殿など政府機関を制圧し、暫定大統領は南部の都市アデンに逃れた。

2015年1月22日、フーシによるクーデターが発生し、ハディ暫定大統領とハーリド・バハーハ首相が辞任を表明した。2月6日、フーシは政権掌握を宣言したが、ハディ暫定大統領が2月21日に辞意を撤回、対立する事態となった。3月26日、ハディ暫定大統領を支援するサウジアラビアなどスンニ派のアラブ諸国が空爆を開始、同じシーア派のイランが支援するフーシと内戦状態に陥っている。

政府とフーシの和平協議が8月に決裂して以降戦闘が激化しており、この1年半の内戦と連合軍の軍事介入により、民間人およそ4000人が死亡、7000人が負傷している。

アメリカ政府は、同盟国サウジアラビアのイエメン空爆に異例の非難声明を発表し、サウジへの同盟支援を将来的に縮小することも示唆した。

アメリカ国家安全保障会議(NSC)のネッド・プライス報道官は10月8日夜、葬儀会場への空爆に関して「アメリカのサウジアラビアとの安全保障協力は、勝手な行動を許すものではない」と語った。

「我々は、すでに大幅に削減しているサウジアラビア主導の連合軍への支援を直ちに再検討することに着手した。また、イエメンが早くこの悲惨な紛争から抜け出せることも含めたアメリカの指針、価値観、利益とうまく噛み合う支援になるように調整する準備がある」と、プライス報道官は述べた。

アメリカ政府は連合軍のイエメン空爆のために武器を供給し、軍事作戦や諜報活動の支援をしていることから、人権団体やアメリカ国内の議員から非難を浴びている。ホワイトハウス高官は、アメリカが攻撃目標の決定に関与していないと強調している。しかしアメリカの援助で、サウジアラビアが民間人を虐殺することが可能になったのは確かだ。

アメリカ政府は、サウジアラビアの攻撃を非難することに消極的だったが、この紛争に支援を続けることへの不満が募っていることは表明してきた。

ロイター通信によると、アメリカ政府は8月以降、軍事要員の削減や、サウジ政府と協力して空爆作戦用に配置した人員を減らしている。そして10月8日、プライス報道官は、アメリカ政府が葬儀会場への空爆を「極めて憂慮している」と述べ、「一連の攻撃は、イエメンの民間人を襲った痛ましいものだ」と言及した。

サウジアラビア主導の連合軍は、アメリカの協力を得てこの件を調査するという声明を出した

連合軍はこの空爆について遺憾の意を表明したが、この攻撃への責任について認めていない。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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