ドナルド・トランプ氏は、地球温暖化が「中国によって中国のためにでっち上げられた」デマだと主張し、大統領になったら、気候変動に関するパリ協定から脱退すると表明した。
宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士など375人の科学者は9月20日、連名で公開書簡に署名し、「アメリカが21世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「パリ協定」から離脱したら、気候変動に対する世界的な取り組みに深刻な影響を及ぼすことになるだろう」と警告した。
この公開書簡は、アメリカ大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏がパリ協定離脱を公言していることへの非難とみられる。トランプ氏は5月に「地球温暖化は「中国によって中国のためにでっち上げられた」デマだと主張し、自分が大統領に就任したら、21世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「パリ協定」から離脱すると宣言している。
30人のノーベル賞受賞者を含む375人のアメリカ科学アカデミーのメンバーは公開書簡で、「アメリカのパリグジット(パリ協定離脱)によって、地球の気候にとってもアメリカの信頼性にとっても、長期にわたる厳しい結果がもたらされるだろう」と書簡に記述している。
「トランプ氏のパリ協定離脱表明は、他の世界各国に明確なメッセージを送っている。つまり、アメリカは人間の引き起こした全地球的な気候変動問題には興味がない。勝手にどうぞ、ということだ」
【参考記事】
アメリカと中国は世界の温室効果ガスの2大放出国で、9月3日に両国はパリ協定への正式参加を表明し、2016年中に発効させる重要なステップを踏んだところだ。4月には170カ国以上がパリ協定に調印し、二酸化炭素の放出を減らして気候変動問題に取り組む決意を表明している。
また、公式書簡には「温室効果ガスの放出量を減らす課題に向け、アメリカは革新的な解決策を開発する重要な役割を果たすことができるし、また果たさなければならない」と述べられている。「炭素を除去したエネルギーシステムや、二酸化炭素を削減する革新的な方法を見つけた国は、21世紀の経済大国となるだろう。アメリカが政治的、経済的、倫理的に世界のリーダーとしての役割を果たすことが、パリ協定離脱によって遠のいて行くことになる。この瀬戸際で失敗するわけにはいかない」
署名者の中には前ハーバード大学生物学部E.O. ウィルソン教授も名を連ねている。ウィルソン教授は「生物多様性の父」として知られ、9月初めハフポストUS版にこう語っている。「現時点での主な懸念は共和党候補が選挙に勝つことです」
ハーバード大学E.O. ウィルソン教授、マサチューセッツ州ケンブリッジのオフィスで。
トランプ氏は、気候変動と環境保護について、「天気なんて上がったり下がったりするものだ」と言い、自分と違って民主党候補のヒラリー・クリントン氏は「炭鉱を閉鎖したがっているぞ」と警告した。トランプ氏の経済政策ブレーンを務めるスティーブン・ムーア氏によると、採鉱や水力破砕や掘削への規制をすべて撤廃するのは、トランプ氏のコスト高な政策を実現するための資金対策の一環だという。
この公式書簡はトランプ氏を名指ししていないが、11月の選挙でアメリカ国民をトランプ氏に投票させないようにする試みなのは明らかだ。
「人間が引き起こした気候変動は、信念でもデマでも陰謀でもない。自然科学上の現実である」と、科学者たちは警告する。「大統領予備選の間、地球は温暖化してはいないとか、温暖化は人間のコントロールできない純然たる自然現象によるものだ、という主張が聞かれた。そのような主張は現実に即していない」
「政治家たちが科学上の事象について、高く評価されている科学者たちの助言に耳を貸さないのは、この21世紀において、情報に溢れた民主主義の終焉が始まりつつあることを示唆している」と語った。
書簡の全文はこちらを参照。
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ハフポストUS版編注:ドナルド・トランプ氏は世界に16億人いるイスラム教徒をアメリカから締め出すと繰り返し発言してきた、嘘ばかりつき、極度に外国人を嫌い、人種差別主義者、ミソジニスト(女性蔑視の人たち)、バーサー(オバマ大統領の出生地はアメリカではないと主張する人たち)として知られる人物である。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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