女性歌手のケイト・ブッシュが『嵐が丘』を作曲したのはまだ16歳のときだった。ふわふわと漂うような、ロマンチックで実験的なこのポップソングは全英チャート1位を獲得した。
今となっては象徴的となったミュージックビデオの中で、ケイトは流れるような赤いドレスを身にまとい髪には花飾りをつけていたが、その姿はパンク好きなラファエロ前派(19世紀の中頃、ヴィクトリア朝のイギリスで活動した美術家グループ)のミューズのようだ。彼女はまるで野性の魂にとりつかれた人のように森の中で語りかけるように踊る。
「嵐が丘」を発表してから4年後の1982年、アルバム『ドリーミング』を売り出していた頃、ケイトはイタリア人の音楽写真家グイド・ハラリと初めて出会った。彼は当時、人気のマイムアーティスト兼ダンサーで、ブッシュだけでなくデヴィッド・ボウイとも一緒に仕事をしていたリンゼイ・ケンプのツアー・ドキュメント作品を制作をしていた。ハラリはケイトの大ファンで、その美しい存在に魅了されていた。ケイトも、ケンプを撮影したハラリの写真に感銘を受け、もっと多くの作品を見たいと思うようになっていた。
1985年、ケイトはハラリをイギリス・ケントにある自身のスタジオに呼び寄せ、アルバム『Hounds of Love(愛のかたち)』用のプロモーション写真を撮影するよう依頼したところハラリはこれを快諾。ブッシュは「ぜひグイドと一緒に仕事をしたいです。彼は何も言わなくても特別な気分にさせてくれるから」と語っていた。
ハラリは1993年までケイトのオフィシャルカメラマンとなった。ハラリは、アルバム『ドリーミング』と『Hounds of Love』を通じて、ケイトが『センシュアル・ワールド』や『レッド・シューズ』を生み出した頃に彼女を撮影した。この2人が共鳴し合うようになったのは明らかで、ハラリはケイトが持つ別世界の存在感、忍者のようなどう猛さ、愛くるしくいたずら好きな面を完璧に捉えた。
ハラリの作品を集めた限定写真集「The Kate Inside, Kate Bush photographed by Guido Harari 1982-1993」がイギリスで発売された。ここにはケイト・ブッシュのキャリアを通して撮影された300枚が掲載されており、うち200枚ほどは未公表の写真である。この本にはそのほか、複数のアウトテイクシーン、コンタクトシート、ケイト本人からのコメントなどが付いている。出版関連の展覧会はロンドンのアート・バーモンジー・プロジェクトスペースにて9月13日から30日にかけて行われる。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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